雑誌『MEZZANINE』×紀伊國屋書店新宿本店|「本屋で都市を編む」対談レポ #02
2020年9月17日より紀伊國屋書店新宿本店4階でスタート、11月3日に大盛況のうちに終了した「本屋で都市を編む」ブックフェア。
「さまざま分野で活躍する総勢35名にも及ぶアーバンシンカーたちが選りすぐった70冊を展開する」という大規模な選書フェアは、どのようにして生まれたのか?
また、このフェアで伝えたかったこと、さらにはこれからの書店と都市の在り方について、フェアの企画者である『MEZZANINE(メザニン)』編集長の吹田良平さんと、紀伊國屋書店新宿本店 建築書ご担当の中西さんにお話を伺いしました。
お二人の対談を全4回のレポート形式でお送りします。
本屋は“都市的”な場所
―見どころの多い「本屋で都市を編む」フェアですが、なかでもお二人がこだわった部分はありますか?
中西さん:表紙カバーがよく見えるように、置き方を工夫しました。
また、普段はあまりしないのですが、大学内の書店営業部にも宣伝してもらったり、ウェブストアと連携して店に足を運べない方にもフェアの内容が伝わるようにしました。
吹田さん:4階の建築部門売場の一等地でフェアを開催していただいているのに恐縮ですが……。
実は選書のお声がけをした35名は、都市計画や都市開発、都市社会学の分野では屈指の専門家なのですが、いわゆる建築家の方々には今回、お声がけしてないんです。
というのも、建築部門売場に異色の風を吹き込みたかったんです。
ですから、建築家以外の方々に乱入してもらってユニークなケミストリーが起こるようにしました。
フェアの様子。一冊ずつ選書コメントが書かれたPOPが添えられている。
中西:私も選書していただいた方々のことは、どういう基準で選んでいるのか気になっていました。
これまで建築コーナーであまりつながりのなかった方々に選書していただいたこともあり、普段担当売り場で展開している書籍があまりありませんでした。
ただそれが潜在的な需要を表面化させてくれたような気がします。
吹田さん:ありがとうございます。さまざまな切り口、ジャンルの本が集積する書店こそ、実は都市的空間そのものですよね。
清濁併せ吞むようにすべてを包括する都市の都市たる所以を再現できていると思います。
中西さん:それはすごく感じています。
多様な思想が集まって出会う本屋はそれ自体が都市的なものだと思います。
吹田さん:はい、書店は都市のアナロジーです。
だから今回は二人で、書店を都市に再リリースしたようなイメージです。
―お二人で都市的空間をつくりあげたフェア、一方で大変だったこともたくさんあったのでは?
中西さん:私はデザインが素人なのでちょっとしたPOPなどのレイアウトを組むことに物凄く時間がかかってしまって。そこは大変だったかなと思います。
―注目すべきはこのフリーぺーパーですよね。
中西さん特製のフリーペーパー。裏面に選書コメントがまとめられている。
中西さん:本当にそんなすごいものじゃないんですけど。
書店で働く上でデザインが多少できるってすごく必要なスキルなんじゃないかなって。なので、できてよかったと思っています。
吹田さんはどうですか?
吹田さん:僕は今回大変だったことは一つもなくて、現場は中西さんに全てお任せでしたので(笑)。
しいて言うと35名の方々に都度のご報告を差し上げたりするメールくらいですかね。なかなかメーリングリストで一斉メールってわけにはいかない事情がありまして……。
でもそれ以外は本当に全部おまかせでした、はい、すみません。
中西さん:本の管理や手配は私がしましたけど、お声がけっていう部分はほとんど吹田さんに担当していただきました。
自分だけではこれだけ著名な方々を集められなかったと思うし、吹田さんの人脈あってできたフェアです。
吹田さん:今回お声がけさせていただいて感じたのは、僕を含めて皆さん、今までの人生の中のどこかのタイミングで、必ず紀伊國屋書店新宿本店との接点がおありなんです。だからこそこれほどの共感、ご協力をいただけたんだと痛感しています。
やっぱり紀伊國屋書店新宿本店というのは偉大です。その凄みを改めてまざまざと見せつけられたというか。
なかには今海外在住の著名な方で、学生時代にここでアルバイトをされていたという方もいらっしゃいました。
豪華選書陣から推薦コメントをもらいPOPに。
―出版業界にいる者として、これだけの企画を実現するのは相当大変なことだと思います。でもそれを実際にこのスピード感でつくりあげたお二人は、さすがだなと思いました。
中西さんが感じた手ごたえみたいなものはありましたか?
中西さん:かなりありました。
この場所は建築と都市関連のフェアを常に開催しているのですが、ここ数年のなかでも一番良い売上だと思います。
ほかのジャンルの版元さんからも「こんなのやっているんですね」とか「大規模ですごいですね」と声を掛けられたり。
あとは選書された本の著者の方が見つけてくれて「こんなのやってます」って宣伝をしてくださったことも。
そうなるといいなぁと想像していたような、「遠くの人まで届く」フェアになったと思っています。
>>第3回へつづく。
【プロフィール】
吹田 良平
1963 年生まれ。(株)アーキネティクス代表取締役。
『MEZZANINE』編集長。
大学卒業後、浜野総合研究所を経て、2003年、都市を対象にプレイスメイキングとプリントメイキングを行うアーキネティクスを設立。都市開発、商業開発等の構想策定を中心に関連する内容の出版物編集・制作を行う。主な実績に渋谷QFRONT、「北仲BRICK & WHITE experience」編集制作、『日本ショッピングセンター ハンドブック』共著、『グリーンネイバーフッド』自著等がある。
●WEBサイト:https://www.archinetics-inc.com/
●Twitter:@Mag_MEZZANINE
●Instagram:mezzanine.mag
●note:MEZZANINE(メザニン)
【INFORMATION】
紀伊國屋書店 新宿本店
〒160-0022 東京都新宿区新宿3-17-7
●WEBサイト:https://store.kinokuniya.co.jp/store/shinjuku-main-store/
●Twitter:@KinoShinjuku
●「本屋で都市を編む」特別ページ
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吹田良平さんが編集長を務める雑誌『MEZZANINE』はこちら。
また、電子書店での『MEZZANINE』配信がスタートしました!
紀伊國屋書店さんの電子書籍サービス「Kinoppy」をはじめ、kindle、honto、楽天kobo、など各電子書店をご確認ください。
グローバルな雑誌なので、海外在住の方にもご高覧いただければなによりでございます!
ただ……
紙の質感にこだわった『MEZZANINE』、
できれば、できれば、紙で読んでほしい……!
もしご興味のある方は紀伊國屋書店さんはもちろん、お近くの書店でお求めいただければうれしいです。
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