図書館流通センターTRCに潜入、中編です!
ちなみに、前編の終わりに内容目次班と分類件名班について書きましたが、もう少し詳しく知ってもらいたいので、ここで、担当さんとの会話を掲載したいと思います。
○内容目次班
さて、次の内容目次班は、タイトルや著者名以外にも、目次や内容のキーワードを登録する班だ。なるほど、部分的な記憶でも探し当てられるようになっているんだな。でも、私が書いた本にもたくさん目次があるというのに…こちらの担当さんは、中でも本好きらしかった。そうですよね、でないとこの作業はなかなかやれないかもしれない。一冊のために、目次スキャンの記述を駆使して、目次やキーワードでも検索できるようにする。また、漢字の「夕」とカタカナの「タ」や、平仮名の「へ」とカタカナの「ヘ」などの間違いがないかチェックも行う。確かに、ここまできて誤字で検索できないとなると、残念なので、念には念をなんですね。
○分類件名班
分類件名班は、その図書が何について書かれているかという内容をNDC(日本十進分類法)に則った「分類記号」を付与するところだ。図書館に行くと、よく背表紙の下に数字シールが貼られていますね。あれが分類記号です。また「件名」の付与も行っている。
カブトムシについて全方位で知りたいあなた!
著者が忘れていた作品も見つかる典拠ファイル
さてさて、典拠班にお邪魔した私達。著者データの検索で私「高橋久美子」が9名いたんですよね。いやあ、高橋久美子って、全国に同姓同名がたくさんいらっしゃるんです。そんなときTRCではどんな工夫がされているんでしょうか?
なんということでしょう!自分が忘れていた対談集なんかも出てきました。人名の典拠ファイルは今100万人分あるそう。「高橋徹さん」という名前が一番多く、なんと38名!これを同名異人と言う。同じ名前だけど別の人ということだ。逆に、異名同人もいる。別の人に見えるけど、実は同じ人というパターンだ。
西基斯比亜とシェイクスピア
やまざきとよこ? やまさきとよこ?
図書館は国際的にデータ作成のルールがある?
担当さんに、詳しく伺ったところ、日本人が生真面目だから細かく分類分けしているわけじゃなくて、目録規則という国際的な基準があり、その日本版の規則に則って作っているそうだ。著者データも、国際規則の作り方があり、その日本版に準拠して作っている。日本の目録規則を見せてもらうと、図鑑のように細分化されたルールが小さな字でびっしりと書かれている。図書にも長い歴史があり、一般の人たちがどこにいても平等に書籍にふれる機会を得られるように、図書に関わる人達が積み重ねてきた努力の集積なのだろうと思った。他国も目録規則に準じて作成している。ここまで私達の知りたいという欲求を全力で受け止める準備をしてくれている人がいると思ったら、図書館をもっと活用しなければという気持ちになる。小学生の頃は、お目当ての本が見つからなかったら、逆に別の本との出会いがあったりして、それはそれで良かったけど、今は、断片的な記憶だけで図書館を訪れても、本にたどり着けるようになっているんだな。ありがたい限りだ。
何を読んでいいかわからないまま図書館へ行け!
○内容紹介班
未知を探求するサポートを全力でしてくれている人たちがいることを、とても心強いと思った。図書館には、いつも目的のものを探しに行っていたけれど、全く知らないジャンルを検索しに行ってみようかな。
最後は紙に印刷していろんな人の目で確かめる
一周してまた新刊登録班にもどってきた。なんて濃厚な一日。新刊登録班の最後の仕上げは、本の内容ではない部分の記入なんだそう。基本的なところだと、本のサイズ、ページ数、そして同じ出版社のものはまとめて検索できるようにしたりもする。
これまでは人力で打ち込んできたわけですが、最後に今まで入れてきたデータを紙に出力して、色んな人の目で最終確認をしてもらうのだとか。また、壊れてしまうような細かい仕掛け絵本などは、仕掛け付きだよというのが見てすぐわかるようにするそう。
『週刊新刊全点案内』では、先程写真のブースで撮った書影に、データ部で影をつけより本らしく掲載される工夫もしていたり、本を作っている側としては、大変に嬉しくありがたい橋渡しをしてくれていた。年々増えていく書籍の刊行数。図書館司書が全て把握して選書するのは不可能に近い。より客観的な視点で、新刊の概要を伝えてくれる専門誌作りも、典拠データ作成と並んでTRCの重要な任務なんだなと思った。静かなオフィスは、図書への情熱がメラメラと燃える現場だった。
ということで、次回、TRCの後編は雑誌班です。確かに、図書館って最近は雑誌とか新聞も充実してますよね。お楽しみに!
潜入の前編をまだお読みでない方はこちらからご覧ください!
図書館流通センター(TRC)に潜入! 前編
https://note.com/twovirgins/n/ncbf49d47b1f2
高橋久美子
1982年、愛媛県生まれ。
作家・作詞家。 エッセイ、詩、小説の執筆から翻訳、アーティストへの歌詞提供など幅広く活躍。 主な著書に小説集『ぐるり』(筑摩書房)、エッセイ集『暮らしっく』(扶桑社)、『その農地、私が買います』(ミシマ社)、『旅を栖とす』(KADOKAWA)、『一生のお願い』(筑摩書房)など。
弊社から出版された絵本『パパといっしょ』、『にんぎょのルーシー』では翻訳を担当している。
公式HP「んふふのふ」:http://takahashikumiko.com/top
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