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六人の嘘つきな大学生
2022年の本屋大賞にノミネートされたのがやっと読めた。
就活。毎年同じ季節になると版をおしたように同じスーツを着て面接に向かう。あれでなければならないというのは、大きく見ると、今そういう状態にいることを外にアピールしているのかもしれない。なぜあのスタイルなのか、書類を出し、面接を受けるその繰り返し。学生の頃から始まった競争社会の、一つのゴール。
この話ほどではないが、自分もかつてそのゴールとされるところを通過している。が、過ぎてしまうと、そのゴールは学生期のゴールであって、社会人のスタート地点だと気がつく。さらに人生の中ではずっと続く日々の1イベントに過ぎない。が、その時点の当事者からすると、これが全てであり、これを逃すと人生が終わりのような気持ちで臨んでいる。
採用は難しい。たかだか数時間合ったところでその人の何がわかるというのか。受ける側からすると、明日からの生活があり人生がある。そうなると良いところだけアピールし、都合の悪いところは話さなくなる。が、それは会社側も同じ。結局面接官に「合う」、「合わない」だけで合否が決まることがほとんどだと思う。
その人が悪くて不採用とするのではなく、今の状況に合わないから不採用にすることもある。が、それが伝わることってほぼない。どんな状況であれ、外部から拒絶されるのは心理的ダメージは大きい。数をこなしどんどん精神的に疲れて勝ち得た会社がどんなところなのかは入ってみないとわからない。そもそも、学生の頃に将来何がやりたいのかを見つけることすら難しいことなのに。
ミステリーとして、書かれたこの話が話題になるのもわかる。終盤のページに向かってはそれぞれの出来事を「月の裏側」を見るが如く明らかにしてゆく。それだけが全てではない、どんなことにも色々な側面があることを見せることで、辛い気持ちで読み終わらなくてすんだ。
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