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台湾漫遊鉄道のふたり
久々にエッセイ以外の本。どこかで見かけて気になっていた本。この暑さでは外にも出られないので、開いてみた。
失敗だった。
もっと早くに開いていればよかったと、後悔する本だった。
12章建ての370ページ。エッセイづいていた自分にとっては厚めの印象だった。各章どれも、食べ物で構成されこれを見るだけでもお腹が鳴る。
最初は、昭和13年7月の新聞の掲載された「台湾漫遊録」の記事から。
そう、このお話は昭和13年の台湾を、ある女流作家が鉄道に沿って進む旅行記とも言えるし、台湾の食べ物を紹介するエッセイとも言えるし、この時代の台湾および、台湾人と日本人の考え方なども含めた情勢を書き残したルポルタージュとも言えるし、女性二人の心情を追う小説とも言える。
どの切り口で読んでも、面白いし読み応えがある。
話に出てくる場所は、今に残るところは少ないが、食べ物は季節によるものはあったとしても、今でも食べられるものばかりと後書にある。台湾が好きな人なら、出てくる料理名を見るだけで、その味わいが脳裏をめぐることになりそう。
鉄道好きなら 台湾縦貫鉄道の各駅に沿って様々な土地をしかも、単なる観光地なぞ鼻にもかけず、日常の台湾を見たいと希望する主人公と共に単なる観光とは違うその時代の情景が楽しめる。
主人公と、随行する通訳、のはずが秘書までこなし、さらに・・・と話が展開して行くところは、あとがきにある表現を使うと「美食x鉄道旅x百合」小説と盛りだくさんすぎるが、どれも疎かにならない展開で、途中で読み止めることは困難としか言いようがない。
「この世界で、独りよがりな善意ほど、はた迷惑なものはございません」
どんな事柄も、どの視点で見るかによって解釈は違う。また、過去の出来事であれば、その時のさまざな要因まで知らなければ、解釈もまた変わる。国としては親日と言われるが、これらを踏まえた上で、そうしてくれるのか、心の奥底では、このように思っているのか。口に出して聞くには恐ろしく、もし聞いたとしても本当のところは誰にもうまく表現できない事柄のように思う。
最後まで読んでいると、どこからどこまでなのかがわからなくなってしまい、読み終わってから、内容の思い返をしてやっと「あぁ!」という見事な立て付け。何をどう書いてもこれから読む人のバイアスになってしまっては勿体無いのでもう何も書けない・・・
長椅子の上に、飲み終わったラムネの瓶を並べた。瓶の首のところにビー玉が一つずつ引っかかっている。
旅行好き、食いしん坊、xxx系(書き表せない!)の方にはぜひ、手元にサイダーなんぞを用意して「あとがき」まで漏らさず、読んでほしいです。
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