砂の女
最近読んだ本は何?という質問で返ってきた答えがこの本。一体どんな内容なのか。答えてくれた人になぜ知っていたのかと聞くと、「教科書に載っていた」とのこと。なので、ある世代では目にしたことがある作品ということになる。
予備知識もなしに読み始めたので、時代背景や、社会状態は想像しながら読み進める。江戸時代よりも前の話?読み進めるとどうやら、戦後のようだ。日本の話?それは必ずしも当てはまらないかもしれないが、そう考えても良さそう。すり鉢状になった底に家が立つ集落の話?落ちると登ることもできないような高さの砂?日々砂をかき出す作業を行わなければいけない環境。雪国の雪と違い、建物の中にまでこぼれ落ちてくる状態の中での生活。それは常に何かが侵食してくるという意味では、いつの時代の誰であっても思い浮かぶところだと思った。その状態から抜け出すために色々な行動を起こし、失敗し打ちのめされる。しかし、そんな状態でも発見があり、自分が主導を握ることができると、その状況は不快なものではなくなってゆく。対して元からそこにいる人たちは、その状況が普通であり、劣悪であっても耐えられないほどではないと思っている。これは色々な状況にある社会と同じに見える。
よく砂の描写が行われ、その度に乾いた砂が体に張り付いたときの感触が蘇ってくる。翻訳され20カ国以上の国で読まれているとのことだが、この砂の感覚を得られる国と、得られない国では大きく評価は異なるのではないだろうか。
炎天下が続くこのシーズンに読むのはむしろ良いタイミングだったのかも。
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街歩きがさらに楽しくなるものがあるといいな