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天龍院亜希子の日記

人材派遣会社に勤める主人公。ブラックな職場での日々が続く中、あるブログを見つける。それは小学生の頃名前をいじった記憶がある子。大人になり、日々に疲れながらも過ごしてゆく様が描かれる。

少しの思い入れで担当した人が派遣先に行かなくなったりと、ブラックアウトとまでは行かないけれど、気持ちが下がってしまう事があったり、なんとなくフェードアウトしてしまいそうな彼女との展開、と派手な展開はないけれど、楚々として話が進む。

そして、子供の頃活躍した「マサオカ」薬物違反で逮捕される報道を見ながら、かつて活躍した頃、憧れていた頃を思い出す。そうした彼を見て、彼女の父親に聞くと、こんな答えが返ってくる。

自分が本当に辛くて、どうしようもない時に、なんの証拠がなくても、もしかしたらこの世の誰かがどこかで密かに自分を応援してくれてるかもしれないって呆れた希望を持つ事ができる
そういうことを信じられたら、我々は生きるのが少し楽になるかもしれないね。

P.201

かつての同級生が残したブログには

でも誰にも見られたくなかったのに、いざ誰かにちゃんと読まれていると思ったらちょっとうれしかった。

P.

ネットにものを書くということは、もしかしたら人の目につくということ。見られる事が本当に困るのであれば、ローカルなり紙のノートに書けば良い。でも、どんな内容であっても、誰かに読まれるとするならば、気持ちはちょっと違うものになると思う。一瞬の気持ちを刹那に投げる場所と、時間と共に記録されてゆく場所。

どんなことでも良い、自分の気分を切り替えることを持つことは大切で、それは人と同じでなくても良い、どんな些細なことでも、たいそうなことでなくても良い。はて、今の自分には何があるかな。


#読書 #安壇美緒 #天龍院亜希子の日記

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らんさぶ
街歩きがさらに楽しくなるものがあるといいな