第34話　交渉

私にはこの日大きなミッションがありました。
これまでに勝手に作り出したたくさんの疑惑を解消するためのミッションです。

既婚者説
結婚詐欺師説
二股説

この疑惑が不透明なまま流れで身体の関係を持つわけにはいきません。
全てを一気に解決させるには彼の正式な身分証明証を見るしかないんです！

この旅に出発する数日前、会社の男性社員達に「付き合い始めた彼女に突然免許証見せてって言われたらどう思う？」と聞いたところ、「怖いよ」と全員から不評でした。

いつもの女子メンに聞いても、ママ的存在の女性社員さん以外からはあまり良い反応はありませんでした。

アプリで出会った私たちはお互いの確かな情報が少なく、繋がりはLINEのみ。

私はこのLINEが切れて関係があっけなく消えることを最も恐れていました。せめてもう一つ繋がりが欲しいと思っていました。

そのため、今回は電話番号を交換するか免許証を見せ合うかのどちらかを遂行することがミッションでした。

2022年10月21日
21:00過ぎ

彼が部屋の電気を暗くしました。

『マズい！このまま流れに乗ってしまったら何も解決せずに関係が進んでしまう！』

『電話番号、電話番号！とにかく電話番号を聞き出さねば！』

そうです。
事前に聞いた同僚達の意見を参考にこの日は電話番号を聞き出すことにしたんです。

でも、、、、、

『やっぱりこのチャンスを逃すわけにはいかない！』

ベッドへ向かう彼に向かって、私はこう言いました。

「ねぇ、免許証見せ合おう」

電話番号なんか聞き出したところで、彼が出なければ知ってても何の意味もない情報でしかないのです。

それにしてもなんていうタイミングなんでしょうね！笑
私もそれは十分自覚してますが、最大のニンジンを目の前にぶら下げた状態が1番最適だと思ったのと、このタイミングはやっぱり絶対に逃してはならないと判断した結果、重い方の免許証交渉をこのタイミングですることにしました。

そもそもレンタカーで観光する気だった彼が免許証を忘れたとかごちゃごちゃ言うようであれば、全ての疑惑は疑惑ではなく真実であったことになります。

彼の反応はどうでしょう？

彼は少し驚いていましたが、普通に見せてくれました。

「言ったとおりの住所でしょ」

見せあった時間は20〜30秒くらいでしたが、彼のフルネームも生年月日も大体の住所も、何一つ偽りはありませんでした。

あまりにも普通に見せてくれるし、何一つ偽りがなかったことに安堵の気持ちと驚きがありました。

彼の疑惑が晴れれば、私達の関係をステップアップさせる障害はもうありません。

私達はこの夜、一つになりました。