引き継いだ聖地
昨年亡くなった、父上の聖地だった家庭菜園。
自然が好きだった父上は、郊外に引っ越してきてから亡くなるまで、45年ほど家庭菜園をやっていた。
引っ越しした当時の父上は30代だったはずだが、その年齢から家庭菜園とは、今考えたら随分と渋い趣味である。
昨年の冬、父上は体調を崩し、入院してから10日であっという間に亡くなってしまった。
コロナ禍で面会もままならず、最後は都内に住む長男である弟が、一人病室で父上と面会。
病室から戻った弟に、母上が
「お母さんをよろしくって言ってなかった?」
と聞くと
「畑、やらないなら、果物の樹を切って片付けて。お姉(私)が続けるなら、そのままやれ、だって。」
なんだそれ!
その言葉のおかげか、父上の死はさほど大袈裟な出来事に感じず、あの人は天国に引っ越しだんだな、くらいの出来事に思えたのは、なんだかありがたかった。
しかし小学生以来畑の手伝いなんてしたこともないし、そもそもうちから車で15分くらいかかるし、私にできるのだろうか?
家庭菜園とはいえ、200平米以上ある広い畑である。地主さんのご好意で無料で使わせていただいているのだが、本来樹木を植えてはならないところ、撤収時には切って元に戻すという約束で、柚子・イチヂク・ブルーベリーの樹を植えさせていただいたらしい。
父上が大切に育てていたこの樹たちを切ってしまう、という選択肢は・・・
ない。
というわけで、何もわからず家庭菜園をやることになってしまい、2度目の夏を迎えようとしている。
私が引き継ぎ、「野生農法」とでもいうべくワイルドな菜園へと姿を変えた父上の聖地。
そんな畑の様子も、ぼちぼちと紹介していくかも、しれません。