「テレビのDX」のために、恐れずチャレンジできる会社へ。攻めと守りの両軸で事業を支えるTVerのコーポレート機能に迫る~ / 常務取締役 コーポレート統括役員 武居インタビュー
ここ数年で、“テレビ離れ”という言葉がよく聞かれるようになりました。人々の生活様式が変わる中、TVerは、そうした時代の変化に適応しながら業界全体をアップデートしていこうと全員がチャレンジしています。
2020年から取締役としてTVerに参画する武居は、もともとテレビ朝日で数々の人気バラエティー番組を生み出してきたキャリアを持つ人物です。
今、コーポレート部門を管掌する立場として、会社や業界の今後をどう考えているのでしょうか。TVerというサービスの事業戦略に留まらない、テレビの未来について聞きました。
■プロフィール
常務取締役 コーポレート統括役員:武居 康仁
1989年、株式会社テレビ朝日入社。「ミュージックステーション」「ウッチャンナンチャンの炎のチャレンジャー」「8時だJ」などのバラエティを中心に番組の制作・企画に携わった後、動画配信事業の統括を経て子会社の常務取締役に就任。2020年よりTVerへ出向し、2023年4月よりコーポレート統括として現在に至る。
地上波番組の制作からデジタルコンテンツ事業へ「テレビのDX」に挑戦中
——TVer参画までの経歴を教えてください。
新卒でテレビ朝日へ入社し、10年ほどバラエティ番組の制作を担当しました。その後は編成部に移り、新番組の企画立ち上げに携わるように。現場一筋のキャリアから転機を迎えたのが、2007年のことです。
動画配信を手がけるデジタルコンテンツセンターのセンター長に就任し、その後DVDや書籍など他媒体も含め、テレビ番組のコンテンツに関わるすべてのビジネスを統括する立場になりました。デジタルコンテンツの制作を手がけるグループ会社の常務取締役も経験したことは、今のTVerのビジネスにもつながっています。
その後、2020年7月よりTVerへ出向し、取締役に就任しました。当時は、TVerを通じてテレビの視聴体験をさらに進化させるための転換期で、在京民放5社から1人ずつが役員として加わり、株式会社TVerに社名変更を行うタイミングでした。私は以前のキャリアから、コンテンツ戦略の統括を担当するようになったんです。
これまでは視聴率を競うライバルであった他局のメンバーたちが、一丸となってともにビジネスを進めることになったのは、まるでひとつの新しい街を作っていくような感覚でしたね。私としては「テレビのDX」を実現するつもりで、TVerにやって来ました。
——「テレビのDX」とは、どのようなことなのでしょうか?
TVerの主力サービスと言えば、テレビ番組の「見逃し配信」や、地上波と連動した「リアルタイム配信」を思い浮かべる方が多いかもしれません。
ですが、テレビ番組をただ単にインターネットに乗せるだけでは、中長期的な成長にはつながらないと考えていました。もっと、デジタルを活用してテレビの視聴体験そのものを変えるようなサービスを届けたかったのです。
現在TVerは、常時700もの番組(2023年9月現在)を視聴できるサービスに成長しました。多くの番組がある中で、思わずもう1本見たくなるような「コンテンツの届け方」を考えることも、テレビのDXのために必要な取り組みです。
その中のひとつが、今では定番となった「俳優特集」などの放送局をまたぐ企画特集です。各局から集めたテレビ番組をごちゃまぜにして編成するのは、TVerだからこそ実現できること。TVerならではのおもしろさをたっぷりと感じた仕事でしたね。
加えて、コーポレート統括として新たなミッションに取り組んでいます。
——コーポレート統括としての役割についても聞かせてください。
簡単に言うと、TVerのサービス運営とエンジニアリング以外の会社機能を担う立場です。人事・経理・総務・法務など、TVerで働く人を支えるポジションを統括しています。
ここ3年で、社員数が約3倍に増員しました。民放キー局各社や広告会社からの出向者だけでなく、多様な業界出身の中途社員も増え、異なる文化が混ざり合っているのが今のTVerです。
その中で、全員が仲間として、一体感を持ち事業に向き合える環境づくりを推進しています。この思いは、TVerが掲げるバリューのひとつ「我々は“仲間”である」にも込められているんです。
前例や実績のない施策にも、臆することなくどんどんチャレンジできるカルチャーを作る
——今、武居さんがコーポレート統括として注力している取り組みを教えてください。
事業が急激な成長を続ける中で、社員にもスピード感を持ってどんどん新たな施策にチャレンジしてもらいたいと考えています。コーポレート統括として、一人ひとりを後押しできるように3つのことを意識しています。
1つ目は「失敗を恐れずにやってみよう」というメッセージを、社員へきちんと発信すること。「こんな企画をやってみたい」とアイデアが浮かんだ時に、細かい制約や調整ごとを気にしすぎず、実現に向けてまず行動に移せる人を歓迎したいと考えています。
もちろん、実現のためのサポートは惜しみません。2つ目に意識しているのが、予算や仕組みの面で社員の自由な取り組みを阻害しないよう、権限を適切に委譲すること。そして3つ目が、コンプライアンス管理やガバナンス強化など、会社の「守り」の部分をしっかりと固めることです。
——新たな施策を進めるなど「攻め」の取り組みと同時に、「守り」も意識されているのですね。
挑戦をする上で、ミスや失敗はどうしてもつきものです。一方で、私自身、過去に多くの反省があったからこそ今の成長があるとも言えます。そこは表裏一体だと思うので、社員に失敗をさせないようにするのではなく、もし失敗しても会社としてリスクを最小限にできることが重要ではないかと思うんです。
TVerに参画してしばらくは、テレビ局時代と同様に若い社員たちと一緒になって様々な企画を考えてきました。それが4月から、コーポレート統括として、現場にいる社員の背中を押す立場に役割が変わりました。
仕事の進め方や周りとの関わり方など、これまでの価値観を刷新し、自分自身にもイノベーションを起こしている最中です。たくさん失敗してきた現場上がりの人間がコーポレート機能を担うからこそ、できることも多いはず。
現場と管理部門はよく衝突しがちだと言われますが、自分自身の経験を伝えたり、現場にいる社員の状況や気持ちを汲んだりしながら、誰もがチャレンジしやすい会社の文化を根付かせていけたらと考えています。
——こうした取り組みはすぐに結果にあらわれるものばかりではありませんが、社内の変化を感じる場面はありますか?
2023年9月5日に配信開始した5局コラボドラマ「潜入捜査官 松下洸平」は、まさに社員たちのチャレンジが実を結んだ企画です。
構想3年のTVer初オリジナルドラマである今作は、当時たった3名の社員によって企画が立ち上がりました。
放送局各社からコンテンツを調達して配信するのではなく、制作から共同する形で企画を進めていくのは膨大な調整を必要とし、社内からも「実現が難しいのでは」と声があがったほど。ですが、諦めずにやり切った結果、こうしてユーザーの皆さまにお届けできました。
テレビは公共性の高い社会インフラゆえに、業界全体がやや保守的な風潮もあります。とくに、前例や実績のないことにはなかなかチャレンジしづらいんですね。
けれど今、時代に合わせてテレビのあり方を変えなければいけない時期を迎えています。本当の意味で変革を実現するには、TVerがファーストペンギンとなって、どんどんテレビの新しい楽しみ方やおもしろいコンテンツを届けていく必要があると考えています。
TVerで働く醍醐味は「テレビのニューノーマルをつくる」という壮大な夢に挑めること
——武居さんの視点から見た、今後のTVerの展望について聞かせてください。
誤解を恐れずに言うと「TVerをどうしたいか」という、サービス単体の成長についてはあまり考えていません。なぜならば、TVerを活用してテレビ業界全体をいかに進化させていくかが、何よりも重要な私たちの使命だからです。
従来のテレビでは、決まった時間に固定された受像機からでしか番組を視聴できませんでした。しかし、これだけ生活様式が多様化してテクノロジーが発達した時代に、同じやり方のままでいてはユーザーの方々に選ばれるサービスではなくなってしまうでしょう。
だからこそ、TVerを通じて、自由にテレビのコンテンツを楽しんでいただけることを目指しています。
——TVerの事業だけでなく、テレビ業界の変革を見据えているんですね。
かつて、デジタルコンテンツの領域を任された時に、当時の上司から「テレビの地上波放送以外の“副業”を任せる」と言われました。当時のテレビ局では、地上波放送のテレビコンテンツが“本業”の扱いであり、デジタルの領域はあくまでも副次的なビジネスだと捉えられていたんですよね。
TVerに携わる今、デジタル動画配信の事業がテレビ業界における副業である感覚は一切ありません。私たちは、テレビ番組を二次利用するだけのプラットフォームになるのではなく、テレビの視聴体験そのものをアップデートさせていきたいのです。
TVerのアプリを起動することが「テレビを見る」というアクションになり、いつでもどこでも好きなコンテンツを視聴できる。それが当たり前になっている世界が、TVerの目指す姿です。
先ほどご紹介した5局コラボドラマのように、放送局各社やさまざまな権利団体の方々と協力しながら、新しい体験をお届けできるように日々尽力しています。
自分のいる間にすべては実現できなくても、テレビ業界人生の集大成として、後輩たちに良いかたちで託せるようにバトンをつないでいけたら嬉しいですね。
——会社としてチャレンジを続ける中、どのような人にTVerに来ていただきたいと考えていますか?
テレビのあり方を変える、そのような壮大なミッションを楽しめる人に加わっていただきたいです。「良いインターネットサービスをつくる」以上のやりがいや楽しさを感じられるのが、TVerの仕事の醍醐味だと思います。
私たちが子どもの頃、固定電話を引かなくなるなんて思っていませんでした。今の時代ではそれが当たり前となり、テレビも家庭の真ん中にあるものではなくなりつつあります。
ですが、テレビだからできることが、まだまだたくさんあるはず。見る人の心を動かしたり、防災情報を通じて身の安全を守れたりと、誰かの人生に大きく影響を及ぼすものだと思うんです。
そういった力を持つコンテンツを、現代によりフィットするかたちで皆さんにお届けしていきたい。もはや、ひとつの新しい文化をつくる仕事と言えるのではないでしょうか。
令和の時代に、そんな大きな夢を一緒に見ようよと、お伝えしたいですね。
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