泣いてたらだめだ、考え続けられなくなるから
主人公の僕(コペル)は大切に思っていたユージンを裏切っていたことを
2年以上もの時をおいて知ることになる。
正確に言えば、
あのとき本当は分かっていたのに、自分をごまかし続けていたことを思い知らされることになる。
大義名分の威力に負けて、自ら進んで思考停止スイッチを押し、それが「正しいこと」だと自分に信じ込ませることができる自分。
真実に打ちのめされ、このまま立ち上がりたくないほどの絶望感の中で、それでも、何となくその場に合わせた行動がとれる自分。
そして、僕自身を「裏切り者」「小心者」「卑怯」だと評し、
ユージンの気持ちを考えて涙が止まらなくなる。
✭
ここまでは、私たちはよくやることなのではないかと思う。
よくやる、というのは、ここまでは“考えたふり”をしているということ。
自身がおこした取りかえしのつかないこと。
二度とやり直しができないこと。
悔やんでも悔やみきれないこと。
それを、
どう反省すればいい
どう償っていけばいい、
それを二度と繰り返さないために、
どういう態度を身につければいい、
どういう対処ができるようになったらいい、
と、考え続ける。
でも、これは本当には考えていない。
果ては、
自分には泣く資格すらないと、自身の至らなさを責め続け、
思考停止したりもする。
(私はどちらもよくやる)
✭✭
「泣いたら、だめだ。考え続けられなくなるから」というインジャの言葉。
本当に考えるということは
たぶん、
自分が本当に怖がっているものが“何”なのか
その”何か”に意識の光をあて続けることなんだろう。
✭✭✭
その身に起こったことを「私はあのとき、死んだの」というインジャ。
コペルもインジャもこの物語の登場人物たちは皆、それぞれに、ずっと考え続けている。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?