一生忘れられない『俺のサラメシの話』
こんにちは、(元)会社員つつおです。
今回は『俺のサラメシの話』だ。
それは社会人4年目の秋。
営業先は電車で片道1.5時間はかかる田舎だ。
もちろん最寄り駅ではICカードも非対応。
駅員さんに切符を手渡し、改札を抜けようとした時だ。
「これ、違います」
駅員さんがそう言って、私を引き留める。
「えっ、何が?何が?」
動揺を隠し切れない私を見かねて、後輩社員が駆け寄る。
駅員の“切符”を差し出した手のひらを見た後輩が、腹がヨジれるとばかりに大爆笑している。
いや、10時のアポに向けて急いでいるんだよ。
こんなところで楽しんでいる場合ではない。
やや苛立ったまま、駅員に詰め寄る。
そこで駅員が差し出していた“切符”を見て、
私は膝から崩れ落ちた。
時を前日に戻そう。
「明日めっちゃ遠くでアポとっちゃいました」
「しかも、10時アポで・・・」
後輩が申し訳なさそうな感じで報告してきた。
「あ、全然構わんよ!アポおめでとう!」
と表向きは大人の対応を繕っていたが、
心の中ではぶっ飛ばそうと思った。
そこ、遠すぎる。。
俺、6時30分の電車に乗らなきゃいけないじゃん。。
そういうわけで、家に着いたらシャワーを浴びて寝るだけの状態にするべく終業後、某定食チェーンに立ち寄る。
安月給の私は700円の予算が限界だ。
今晩のサラメシ。
チョイスしたのは野菜炒め定食。
「野菜炒め、家でいくらでも作れるのに。。」
心の声が漏れ出るのを必死に抑える。
「野菜炒め定食ですね~」
定員さんは食券を確認し、ちぎった食券(領収書の部分)を私に渡す。
そして運ばれてきた定食を早速頂く。
あっさり期待を上回ってきた。
ふと周りを見渡すと同じようなサラリーマンが多い。
「君たちも各々の事情があって、ココにたどり着いたのか。」
勝手に仲間意識が芽生え、戦友と食べる夕食にいつも以上のおいしさを感じながら、完食。
そして明日に備えるべく、店を後にした。
“ちぎられた食券”をポケットに入れたまま。
今夜はよく眠れそうだ。
時を戻そう
膝から崩れ落ちた私。
今、駅員が差し出しているもの、
それは
あの“野菜炒め定食の食券”だった。
「あ~間違えちゃった。切符と似てるな~」と必死に冷静さを装ったが、顔から火が出そうなくらい恥ずかしかった。
爆笑している後輩を振り切り、営業先へ急いだ。
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