♨️zineを読む「放浪心経」

なんか久しぶりにお湯に浸かった。
基本、私が湯船に浸かる時というのは「同居人が浸かった後のお湯がまだ暖かいのに勿体ないから」という至極消極的な動機で入る。
自主的にお湯を溜めて浸かることはあまりない。
つまりこのzineを読む♨️とかいうのも、同居人が湯船に浸かるかどうかにすべて委ねられているのです。自主的なようでいてかなり他動的な内容です。笑
でもそれくらいの動機のほうが案外長続きしたりもするよなあ、とも思う。


♨️「放浪心経」
著者 : 切火念イエレ

天神橋筋商店街にある熱帯夜というレコードショップで入手しました。

著者の切火念(キルピネン)イエレ氏はフィンランド出身で、数年前ギャラリー白での個展で知り、その世界観が好きになった。
版画や水墨画、立体、音楽、パフォーマンス、俳句などジャンルを問わず表現していて"表現者"という言葉が一番しっくりくる人。

このzineでは主に散文や自由律俳句(なのかな?)と、写真や直筆の文章が添えられている。

これから
君が風になる 。
その野生な魂を人間の形はもう止められず 。
その人間の形をまだ恋しいのに
  いつも君が波に撫でてあげるときは
僕もここに君に逢いに行くよ 。

切火念イエレ「放浪心経」より抜粋

彼の日本語は必ずしも文法的に正しいものではないかもしれない。
だがこの表現が必要であるという気迫と切実さがあり、日本人の知らない日本語の言葉の響き合いを感じる。

また彼の表現にはブルースが漂っている。静かな冬の日本海みたいな。冷たい海の国に生まれた魂がそう表現させるんだろうか。
静かで荒涼とした中に揺るぎないものがある。そんな表現だなあと思う。

あとがきによると、彼は2019年に大阪に来て、自分はここで生まれるはずだったのだ、と感じたらしい。
放浪心経の名の通り、国を超えて放浪し、表現の海で放浪する魂の叫びみたいなものが聴こえてくる気がする。

彼のパフォーマンスや版画もとてもすばらしいので、機会があればまた見たい。

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