映画「あの子は貴族」。ふたりの女性の自立への目覚め
映画「あの子は貴族」をみた。
私の好きな映画のひとつに入るなと感じた。
門脇麦ちゃんと水原希子ちゃんのふたりを中心に見えない階級を描いている。
以下あらすじなので知りたくない方は読まないで下さい。
麦ちゃん扮する華子は正月に家族でホテル内の料亭の個室で懐石料理を食べる家。
そこに向かうのにタクシーを使うのが当たり前。
彼女は正月のその場に結婚を考える相手を伴う予定だった。だがドタキャンされる。
理由は彼女の家柄と相手が違うらしいと言う感じ。
麦ちゃんは家事手伝いをしている。
学校は幼稚舎から私立に通いストレートで上まで上がる。
同級生達はほとんどが20代で結婚し、子育て中か妊娠している。
そういう環境の中に置かれそれが当たり前として生きている。
早く結婚させるのが親の望みで周囲の状態からみて自分もそうしないとならないと焦る。
色々と顔合わせをさせられるがしっくりくる相手はなかなかいない。
そんな中、幼稚舎から大学まで一貫教育のあと、東大大学院を出て弁護士をしている(高良健吾の扮する)青木幸一郎を紹介される。
余りに完璧な人に一目惚れしてしまうのだが、青木家に挨拶に行くと自分の身辺を興信所に調べられていたことに驚く。
幸一郎はゆくゆくは親の跡をついで政治家になることが決まっている。
そうやって育てられそれを当たり前として受け入れている。
水原希子演じる美紀は地方出身者。頑張って勉強して大学に入学。そこで階級差のある幸一郎たちの姿を見つける。
やっと入学したのにも関わらず親の都合で大学を中退する羽目になる。
はじめは自分でなんとかするとキャバクラでバイトを始めるが両立は続かない。
その後はキャバクラをランクアップさせそこで知り合った人から会社を紹介され働いていた。
幸一郎とは大学生の頃一度授業のノートを貸したことがあることをホステス時代勤めていた先に客に来ていたところ思い出す。
そこから恋人と言う訳ではない、都合のいいときに呼ばれる関係が続く。
華子は美紀の存在に気がつく。美紀と華子は対峙するのだが、はじめから美紀は幸一郎と一緒になれることはないし、幸一郎も考えていないので会わないことになるのだが華子は美紀に対して敵意は抱かないし幸一郎も何があっても華子に優しい。
一定以上の生活をしている人たちは表面的には優しく穏やかに出来ているのかもしれない。
引かれたレールの上を行く彼女達は交わることがないのだが、タクシーから東京の街を眺める華子の目に自転車で走る美紀が映る。
結婚した華子はなんの目的もなく人形の様になっている。
そんな時颯爽と自転車を漕ぐ美紀を見つける思わず声をかける。
美紀はひとり暮らしの家に華子を招くがそこでの会話がいい。
華子は全て自分で決めて自分で手にして行く美紀を羨ましく思ったのだろう。
華子を取り巻く世界はいつも高いビルからの眺めや喧騒のしない場ばかり。
下からビルの合間に見える東京タワーと言う景色を東京の中心から出た事がない華子は見たことが無かった。
彼女の中の何かが変わったのはこの時なのだろう。
彼女は幸一郎と別れる。
1年後幸一郎と偶然再会するが友人のバイオリニストのマネージャーをしていると語る笑顔の華子がいた。
人は無意識に引かれたレールに乗り無意識に境界線を引き生きているのだなと思った。
自分で決めた中でしか生きることは出来ない。それに息苦しさを覚えたとき自力で断ち切る力がないとそのレールから降りることも出来ないのだなと思った。
そして誰もが自力で自転していくことが出来、それをするかしないかの選択をどこかでしている。
ふたりのタイプの違う女性たちの生き様がそれを教えてくれる映画だった。