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Turtle’s letter/時に本は扉や船、そして避難所にもなる

Turtle’s letter では、様々な人の視点、思考の奥にある個人の物語や語りに耳を傾け、共有していくプロジェクトです。社会をより遠近感を持って捉えるきっかけとなるようなエピソードをキュレートしてお届けしています。

Today’s Quote

時に本から紡がれる物語は自分の知らない世界へといざなってくれる。自分の呼吸に合わせながら、1ページずつめくるたびに景色は変わっていき、そこには予期しなかった展開や出会いがある。先日、文学や芸術批評を載せているBrain Pickingというサイトで、本という媒体が持っている魅力についてのエッセイを読んだので、以下に紹介するとともに、私自身の考えも書いていこうと思う。

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ガリレオは、超人的な能力を持つための唯一の手段として、本を読むことを考えた。印刷機が発明されて以降、本は人間の真実に対するどうしようもない渇望を満たしてきており、偉人たちの多くが、人間性の柱として本を読むことを薦めている。現代において最も叙情的で洞察力に富んだ作家の一人であるレベッカ・ソルニットもその一人だ。

レベッカ・ソルニットが本がどのように自身の人生を救ってきたかについて書いた美しいエッセイで彼女は、「本と呼ばれる物は、物体ではなくその可能性であり、それはまるで音符や植物の種のようなものなのだ」と述べている。幼少期には、人生そのものが可能性に溢れており、本はその可能性をさらに大きくする物である。『A Velocity of Being』への寄稿の中で、ソルニットは本の持つ可能性について絶妙な表現で語っている。以下に一部抜粋した。

子供の頃、本は投げるためではなく、積み上げるためのレンガだった。私は身を守るために本を周囲に積み上げ、その城壁の中に引きこもり、不幸な状況から逃れるための塔を築いた。そこに私は大好きな本と共に避難し、人間である意味について学んだ。本は私に避難所を与えた。もしくは、私自身が本の中から避難所を築いた。それはレンガでもあり、自分自身にかけた魔法の呪文でもあった。本は本を愛する人たちのために扉にもなるし、船にもなるし、要塞にもなる。そして、私は本を書くために成長した、私が望んでいたように。私は本は作家が見知らぬ人のために作った贈り物であることを知っている、私が6歳の時から何度も何度も受け取ってきたのだから。by レベッカ・ソルニット                       

参考、引用:https://www.brainpickings.org/2019/01/03/a-velocity-of-being-rebecca-solnit/

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Turtle’s view🐢

レベッカさんの素敵な表現で語られた言葉がゆっくりと響いてくる。ぜひ上のリンクから全文を読んでみてほしい。

忙しい生活の中で、ふと手に取った一冊の本と、そこから編み出されるストーリーに乗って旅をする時ほど濃密な時間はない。私は小さい頃、本を読み終え、その世界から現実に戻るときに寂しさを感じていた。登場人物と同じ世界に自分をおいていたからこその感覚なのかもしれない。一旦自分から離れ、主人公とともに様々な出来事を経験していく、その過程で生まれる感情は現実世界でもまだ味わったことのないものだったりする。そこには未体験の感情や考え、気づきが紙と言葉とストーリーから溢れ出していて、それは自分自身が抱えている不安や課題に対する処方箋にもなりえるものだ。

本の面白いところは、本には著者の何らかの経験やバックグラウンドから生まれた視点が含まれていることだ。自分の人生は一回しかないが、本には様々な人の人生から生まれる物語があり、そこから様々な気づきや出会いがある。

本を自分自身の一つの避難所にすることは、一見、内側に引きこっているように見えるかもしれないが、実はそのシェルターの中で羽を養い、新しい自分自身の扉を開け、芽を育ててる途中と考えても良いのではないだろうか。忙しい日常の中で本を一つの移動可能なホームとしてみるのも良いかもしれない。

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今回はここまで。

高いビルから全体を俯瞰することも大切ですが、時に一軒一軒のドアを叩き、様々な物語と出会ってこそ気がつくことや見える光景があるのではないでしょうか。

次回以降も奥行きのある小さな物語や語りをキュレートし、考察を添えNoteで共有していきます。

また、これからフィールドワークを通し様々な土地に根付く個人の記憶を拾い集め、この場でアーカイブ、共有していけたらと計画を進めております。
お楽しみに。

ではまた🐢

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