かいぶつだーれだ
映画「怪物」を観ました。観てきた勢いそのままのフィーリングで感じたことを並べていきたいと思います。
あえて概要やあらすじは事前に調べませんでした。監督:是枝裕和、脚本:坂本裕二、音楽:坂本龍一を絶対的に信頼して、どんなものであれ観たものをそのまま感じてみようの気持ちでした。2時間後にはエンドロールの音楽に耳を澄ませながら、これは映画館で観るべき作品だったなと少し悦に入っていました。
観ている途中、自分が何に怒っているのかわからなくなり、たった数十分後には怒りの感情を持ってしまったことに自己嫌悪し、登場人物たちに謝っている自分がいました。
そしてこれは誰が悪いのか、誰も悪くないんじゃないか。でもそれならこの気持ちはどこへぶつければいいんだろう、と気持ちが行ったり来たりしていました。
もちろんフィクションだけど現在の日本のどこかで起こっていてもおかしくないストーリーであり、実際に起こっている出来事の一部なのだろうと思います。
少し前に映画「流浪の月」を鑑賞したこともあり、やはり現実世界では事実と真実は違うことが多々あるのではと思わされました。当事者同士が納得できていても周りの人間が外側から勝手にストーリーを作り上げ、レッテルを貼っていく。そのレッテルに本人たちが苦しめられていく。
「ぼくはかわいそうな子じゃないよ?」
そう言った男の子の顔が脳裏に張り付いて離れません。忘れられないということは僕は登場人物の子を可哀想な目で眺めていたのでしょう。
この作品には日本で社会問題として取り扱っている事柄が多く含まれているように思います。それは決して単体で独立して起こっているのではなく、いくつもの問題が複雑に絡み合っています。一つを解決しようとしたら、もう一つの問題が際立ってしまう。ゲームみたいに一旦リセットなんてできない。やり直しは聞かない。そんな構造もあるように思います。
それらの社会問題に原因はあるのか。
どこに諸悪の根元があるのか。
いったい本当の怪物は誰なのか?
答えはありません。答え合わせもありません。でも、もしかすると偏った目で映画を見はじめ、事情がわかった途端に手のひらを返してしまった僕自身なのかもしれません。
「かいぶつだーれだ」
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