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ストリートアートとは都市と人をつなぐ小さなアクションなのかもしれない「SIDE CORE 展|コンクリート・プラネット」

東京・神宮前にあるワタリウム美術館で、ストリートを中心にアートプロジェクトを展開するアーティストチーム、SIDE CORE(サイドコア)の展覧会が開催中だ。会期は12月8日(日)まで。

ストリートアートとは、都市と人をつなぐ小さなアクションなのかもしれない、そう思わせる展覧会だ。
ストリートとは距離がある人でも、都市と自分をつなぐ何かが必ず見つかるだろう。



「SIDE CORE 展|コンクリート・プラネット」概要

東京・神宮前にあるワタリウム美術館で、アーティストチーム、SIDE COREの展覧会が開催中だ。会期は12月8日(日)まで。
現代アートに興味がある方なら、知っている方も多いであろうアーティストチームのSIDE CORE。
ストリートや都市をテーマにする企画では、必ずといっていいほど名前が上がるアーティストで、美術手帖のストリートアート特集「日本のストリートとアート」(2023年7月号)では、監修も務めている。

本展覧会は、都市や路上をテリトリーに活動してきたSIDE COREの初の大掛かりな個展となるそうだ。

展示の構成は会場の3つのフロアにあわせて、3つのパートに分かれたいる。各パートの作品をいくつか紹介しながら見ていきたい。

視点

最初のパートは「視点」をテーマにしている。
都市で目にするものをアーティストの視点で捉え直し、その役割や意味を抽出する。
ステートメントでは、「主に路上のマテリアルを用いて都市のサイクルをモデル化する立体作品の新作シリーズ」となっている。
いくつか作品を紹介していきたい。

最初の作品は、「モノトーン・サンセット」。
オレンジ色の光の中にはいると、すべてがモノクロに見える。ナトリウムランプという昔のトンネルで使われていた照明だそうだ。
懐かしい感覚を思い出す。少し怖いような、暗闇への入口を感じさせる。

「モノトーン・サンセット」(2024)

片方だけのヘッドライトとスピーカーで構成された「夜の息」
不定期にライトが明滅し、時折強い光が目に入る。
夜の道路で車のヘッドライトに照らされて、しばらく白やオレンジの残像が目に残るあの感覚。
その光によってフラッシュバックする記憶がある人も多いのではないだろうか。

「夜の息」(2024)

「コンピューターとブルドーザーの為の時間」
建物の2階分の高さにもなる鉄パイプの造形。
鉄パイプのなかを陶器の玉が転がり、金属と触れ合う音を立てる。
金属音は、都市の見えない部分を急に感じさせる。
音の彫刻作品だ。

「コンピューターとブルドーザーの為の時間」(2024)

都市に存在する、普段は取り立てて意識もしないものをアーティストの視点で見る。
アーティストの視点を借りながら、実は自分でも過去に感じたことがあるはずの感覚が引き出される。
もうはっきりとは思い出せないくらい前に感じたことのある「あの感じ」だ。

行動

次のパートでは映像作品が多くなる。視点を元に都市に介入する「行動」のパートである。
ステートメントでは、「都市の状況やサイクルの中に介入した行動/表現の映像・写真のドキュメントを。」となっている。

「unnamed road photographs」
携帯電話で撮影した写真が光の点滅とともに浮かび上がる作品。アーティストが撮影した都市の写真のイメージが浮かんでは消えていく。
スマートフォン上で、絶え間なく浮かび上がり、移動するイメージが想起される。

「unnamed road photographs」(2024)

羽田空港近辺のトンネルで撮影された「untitled」は、すすで汚れた壁に肩を擦り付けながら歩く様子を撮影したもの。
「肩の線」は今も残っているという。
都市に残る1人の人間の痕跡と、人が身体で都市を感じるという両面での介入が見える作品。

「untitled」(2021)

「巡礼ロードサイド」
Youtubeで配信される路上に設置されたライブカメラの映像。東京から福島へとカメラを辿りながら北上していく旅の記録。
カメラにカラーフィルターをあてることで、都市の機能と映像を見る人の間に介入する。

ストーリーテリング

4階では視点、行動、その先にあるストーリーをみる。
個人の小さな都市への介入が、都市の風景のノイズとなり、少しだけ何かを変えていく。

「under city」プロジェクトは、東京の地下空間をスケーターが滑走しながら3Dスキャンし、異なる空間をつなぎ合わせて巨大な都市空間を作り上げていく。
5チャンネルの映像で表現された空間は圧巻だ。

「under city(2024年版)」(2024)


また作品の展示は屋外にも広がっており、ストリートを体感できるだろう。
ハンドアウトの内容も充実しているので、ぜひ会場で手にとっていただきたい。

ハンドアウト

アートを通してストリートと接続する

街の中で耳を澄ますと、普段は気づかなかった音に気づくことがある。
小さな気づきやノイズをキャッチして、小さなアクションを都市に返す。
そのアクションに、また別の誰かや、時代を超えた誰かが気づいて回答を返す。
そうした有機的な循環が、都市を少しずつ変えていく。

自然には進化などない、循環があるだけだ、とどこかで聞いたことがある。
SIDE CORE展を見ていてそんなことを考えた。
都市のどこかで感じたまま忘れていた何かを、ふと思い出すことができるだろう。



最後までお付き合いいただきありがとうございました!

「SIDE CORE 展|コンクリート・プラネット」
会場:ワタリウム美術館(東京・神宮前)
   〒150-0001 東京都渋谷区神宮前3-7-6
会期:2024年8月12日[月]-2024年12月8日[日]
開館時間:11:00 〜 19:00
※詳細は公式サイトでご確認ください。


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