【読書メモ】『しゃばけ』(著:畠中恵)
ドラマ化されたのを見た覚えはありますが、アニメ化もされるのですね。確か20年以上続いているシリーズで、年1冊くらいのペースでしょうか。ゆったりとした物語なのですが、一応ミステリーにも分類されるのかな。
確か初めて手に取ったのは2011年頃、店頭に平積みされていてふと目にとまった、その挿絵の可愛さに惹かれて手にとってしまったのを覚えています。ただここ最近はすっかりと遠のいてしまっていたような、、久々に探してみようかなぁ、なんてシリーズ第1作目となる『しゃばけ』を思い出しながら。
タイトルにもなっている「しゃばけ」との言葉は初耳でしたが、漢字では「娑婆気」と書くそうで、「俗世間における、名誉、利得などのさまざまな欲望にとらわれる心(出典『広辞苑』)」とのこと。
物語の舞台は江戸、主人公はその江戸でも有数の廻船問屋&薬種問屋、長崎屋の跡取り息子・一太郎。裕福な大店の一粒種ということもあり、一見すると恵まれた環境でぬくぬくと育っているようにも見えます。
ですが、、実はひどい虚弱体質で外出もままならず、一度寝込むと数週間は布団から起き上がれなかったりする時も。そんな若だんなですから、両親は元より兄や(にいや)達である二人の手代からも優しくひたすらに甘やかされています。
それでも人としてひん曲がることなく、「きっと強くなる」なんて思いながらも、優しく成長している若だんななのですが、、とまぁ、ここまで書くと普通のお話のようですが一つ、"普通"とは異なっている点があります。
それは、一太郎の周囲には兄やである手代も含めてたくさんの妖怪、、"あやかし"達が侍っていること。
さて、本書は若だんなが「とある隠し事」に絡んで、連続殺人事件に巻き込まれてしまった事に端を発します。ちょっとした物取りかと思われたその事件、実は「あやかし」が絡んだ複雑怪奇な事件だったのですが、、
普通であれば、そんな「殺人」という非日常に、普段から伏せっている事の多いような若だんなでは、積極的に絡んではいけないでしょうし、周囲もそれを責めることはしないでしょう。
でも、若だんな・一太郎は逃げることなく、何とかしようと奔走します、息切れを繰り返しながらも。
息切れた時は、普段からよくしてくれている二人の手代とあやかしたちの協力を仰ぎながら、諦めずに進みます。まぁ、人とは常の異なるあやかし達のこと、若だんなの頭痛の種が増えてしまったりもするのですが。。
そんなてんやわんやとした、でもどこかほっとするような、暖かい空気の中で物語は綴られていきます。終盤ではあっと驚く一太郎の出生の秘密にまで言及しながら、、心地よいほんわかした読後感をえられると思います。
時代物と捕物帖、そして和風ファンタジーの融合が不思議なようで違和感がなく、少し疲れたときに読んでみるのもいいのかな、なんて思いながら。