第1378回 アートとデザインを意識して
1、客層がいつもと違う
本日は石巻市の博物館で開催中の企画展と記念講演会に行ってきたので、そちらをご紹介します。
民具とは
一言で言うと「ちょっと昔の道具」、と言った感じでしょうか。
今回は武蔵野美術大学とのコラボ、ということでだいぶ目から鱗の体験でした。
先に結論を言うと、民具という一つの歴史資料のジャンルが、現代社会へ切り込める、ということに驚きました。
出土遺物を研究する考古学や古文書から読み取る歴史学は、わからないことがわかる、というだけで満足してしまいがちですが
社会へどう還元できるのか、という視点は常に持ち続けなくてはいけないのだな、と改めて意を強くしました。
2、アートと民具の接点
さてまずは、今回の企画に至った経緯が、記念講演でも語られました。
武蔵野美術大学は9万点におよぶ民具資料を所蔵しているとのことでしたが、
実は某民間企業が民俗学の大家、宮本常一の監修のもと、民俗学資料館を建設する計画があり、
彼の弟子たちが日本各地で収集したものがコレクションの元になっている、と言うことでした。
それを「美術大学」の特性を活かして、デザインを学ぶ学生たちが発想を学ぶ資料にしている、という事例が数多く報告されました。
虎屋の和菓子に合う器を作る、という制作の課題で民具をモチーフにした形ものがあったり、
液体を注ぐ器の取手のモチーフを民具から得たり。
民具から着想を得たデザインが、現代人の心を動かす。
これぞ歴史資料の直接的な活用でしょう。
考古学だと岡本太郎と火焔土器の話くらいでしょうか。
展示自体ですが、そのスタンスも一風変わったもの。
キャプションで説明しすぎない、ポイントは5文字で!ここぞというところに矢印が加えられていて
さらには観覧者自身が感じたままをスケッチして残していく、
そんなサイクルを生み出す展示会、他の歴史分野ではあまりみないスタイルですね。
そもそもこの展示は武蔵野美術大学を皮切りに、各地の博物館を巡回し、
その地域固有の資料と並べて展示する、という方向を目指しているようですので
みなさんのお住まいの地域にもいずれいくかもしれませんね。
3、社会への接点
これまで資料をみる際に、どうしても歴史性、どの地域でどの時代に使われたか、ばかり気にしがちでしたが、
どうしてそのデザインになったか、
実用性なのか装飾性なのか
もっと深く考えてみることが必要だな、と改めて感じました。
そして先にも触れた「社会との接点」の意識。
ある登壇者は嬰児籠から着想を得て(普段から赤ちゃんにアートを、という活動をしているとのことでしたが)
自治体が新生児に送るベビーグッズに民具的な要素を入れてみてはどうか、
という具体的な提言までされていました。
確かに新生児のおもちゃ、としての可能性は
郷土玩具の例を挙げるでもなく想定されます。
地域色豊かなベビーグッズが各地で溢れることを想像するだけで楽しくなります。
本日も最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?