第1464号 「なんとなく」から「そうだったのか」に
1、読書記録345
本日ご紹介するのはこちら。
島村恭則2024『現代民俗学入門』創元ビジュアル教養+α
身近なところから、しかもかなり現代的な疑問をとっかかりに、
若手から中堅の研究者が解説してくれる、かなり手に取りやすい内容になっています。
なんと私の大学の時の同級生も一項目執筆していました。
2、身近な話題を掘り下げる
構成としては
1章 日常のなぜ
2章 四季のなぜ
3章 人生のなぜ
4章 都市伝説のなぜ
というテーマごとに分類されており、「民俗学」とは何かがわかるようなコラムも掲載されています。
印象的だったものをいくつか紹介すると、
森田玲「一本締めと三本締め」
ちょうど宴会の締めに一本締めをやっているのを見かけた娘に、
「あれはなにか」と聞かれていたところだったのでタイムリーでした。
私の住んでいるミヤギには「伊達の一本締め」と呼ばれる特殊なリズムのものもあったりします。
いずれにしてもその場を共有する者たちの一体感を高める効果がある、そんな役割を担っている風習です。
外国で例えるとどんなものがあるでしょうか。
同じく森田玲さんの「成人式はなぜ荒れるのか」も興味深い解説でした。
祭りでの荒ぶる若者は祭りを盛り上げる方向に進むのに、
なぜ都市部の成人式では「荒れる」のか。
祭りには年齢階梯制、長老・中年・若者・子供というそれぞれの集団があり、縦の秩序が機能しているからだ、というのです。
一方で成人式では来賓の大人たちは他人。同じ組織の年配者であれば配慮も働き、やんちゃも限度があるというもの。
そうか私の住んでいる小さな町では来賓の大人たちも顔見知り。
地域が近ければ、誰々さんのおじいちゃん、誰々の娘か、など顔が見える関係だからやんちゃできないために
いつもびっくりするほどおとなしい成人式が行われています。
島村恭則「大晦日に「おせち」を食べてもいいのか」では
北海道や東北、北陸地方では大晦日におせちを食べることが多いが、実はそちらの方が本来的なあり方。
なぜかというと、昔は日没で1日は終わるから。
大晦日の夜はもう日没後だから新年と考えていいとのこと。
同じく「クリスマスイブは「前夜祭」なのか」も同じ理屈で
イブというのは「夕刻」を意味するので「前日」ではない、というのも、つい誰かに話したくなりますね。
12月23日を「クリスマスイブイブ」とか言ってたことが恥ずかしくなります。
3、学問の裾野を開く
いかがだったでしょうか。
本書では「都市伝説」や「ネットミーム」まで射程に入れており
若い人にもとっつきやすい内容となっています。
現に中学生の娘も読んでみたいと言っていました。
民俗学と考古学は隣接学といってもいいほど近い位置にありますが
考古学もこのような入門書をどんどん出版していくといいのかもしれませんね。
本日も最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。