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地理探究の授業で観光立国論について考えてみた

 少し前、佐宗邦威さんのポストで、「成功サイクルで見た日本の現在地」を目にした。縦軸に一人当たりGDPの成長率、横軸のWellbeingの幸福度を取ると、日本は、GDPの成長率は無論、ここ数年はWellbeingでも非常に低い象限に移動してきていることがわかる。

 「日本は今どこにいるのか?これから何を頑張っていけばいいのか?
 観光を軸に、地理探究の授業を通して、生徒たちと向き合ってみることにした。


 『新・観光立国論』の著者 デービッド・アトキンソンによれば、観光客を惹きつける条件は、「気候・自然・文化・食事の4つとされ、日本はこれらすべてが揃っている」という。

 1990年代中旬までアウトバウンド中心だった日本だったが、1996年から「ウェルカムプラン21」を発表し、2005年までに外国人訪問客数700万人突破を目標とする施策展開がなされるようになった。その後、2000年にはその発展形の「新ウェルカムプラン21」(2007年までに800万人)が発表された。これらの時期と重なり、2003年から始まった「ビジット・ジャパン・キャンペーン」により、外国人訪問観光客1,000万人が目標として掲げられ、2013年ついに外国人訪問客数は1,000万人に達し、新たに「観光立国実現に向けたアクション・プログラム」が発表され、東京オリンピックまでに2,000万人突破実現に向けた施策が行われた。
 このように、日本は観光立国としての歩みを確実なものとしてきたのだ、と観光庁の資料などに目を通すと見えてくる。

 ところで、アフターコロナとなった今年に入って、気になる記事をいくつか手した。


 「はて、観光立国とやらは、如何なものなのだろう?


1-2時間目

 アフターコロナとなった今、「日本は観光立国を目指し続けるべきか、否か」を巡って繰り広げられている、賛成派・中立派・反対派それぞれの主張を吟味・整理して、あなたの主張をつくる準備に入りましょう。
 チャートの色はあなたの考え:賛成 青色・反対 赤色・中立 黄色

 こちらで用意したキーワードなどをもとに、自分の関心事あるいは、逆の立場を中心にウェブ記事などの検索。「観光立国」を目指した場合あるいは、目指さなかった場合のどちらにおいても日本社会の今後の展望や、日本社会に及ぼされる影響を(グローバル・リージョナル・ナショナル・ローカルのマルチな視点で)明らかにしていくことを目指した。

主張をつくるためのチャート(青色は、現時点での賛成)

3時間目

 アフターコロナとなった今、「日本は観光立国を目指し続けるべきか、否か」そして、「観光立国を目指した場合あるいは、目指さなかった場合のどちらにおいても、日本社会の今後の展望や、日本社会に及ぼされる影響」を巡るあなたの主張に対して、どのような反論が想定され、それに対してどのように応対し、最適解・納得解をつくるか、準備を進めましょう。
 チャートの色はあなたの考え:賛成 青色・反対 赤色・中立 黄色

 先の問いを5つの観点(経済的側面・社会的側面・文化的側面・環境的側面・地域振興の観点)かつ、4つのスケール(グローバル・リージョナル・ナショナル・ローカル)に分け、各自で問い重ねを行った後、ペアでマイクロディベート。

問い重ね用のチャート(黄色は、現時点での中立)

4時間目

 アフターコロナとなった今、「日本は観光立国を目指し続けるべきか、否か」そして、「観光立国を目指した場合あるいは、目指さなかった場合のどちらにおいても、日本社会の今後の展望や、日本社会に及ぼされる影響」を巡って、当事者はどのような主張を持つだろうか想定し、ロールプレイ・ディスカッションをしてみましょう。
 チャートの色はあなたの考え:賛成 青色・反対 赤色・中立 黄色

 5人のロール(❶ 地方自治体の観光政策担当者 → 環境保護活動家 ❷ 東アジア観光連携の研究者・国際観光マーケティングの専門家 → 地元住民 ❸ 地元住民 → 外国人観光客 ❹ 環境保護活動家 → 東アジア観光連携の研究者・国際観光マーケティングの専門家 ❺ 外国人観光客 → 地方自治体の観光政策担当者)になりきり、場合によっては自分と違う人の立場に立って、その人の気持ちや状況を想像し、表現した。

ロールプレイディスカッションの記録シート(赤色は、現時点での反対)

5時間目

 私たち高校生が大学を卒業する頃、日本が観光立国として成功しているとしたら、どんな日本社会になっている?なっていてほしい?一方で、観光立国以外の選択をとった時、日本社会はどのように変わっていくべき?変わっていてほしい?と思いますか

 4時間目までのイシュー・ドリブンな問いとは一線を画して、ビジョンドリブンな問いを選択して、討論でもなく、対話をしてみることに。7-8人1組15分の対話を2回転、とってもバイブス感じる時間となった。以下にグループでの対話の記録を要約したものがこんな感じだ。

前者の問いに対する答え
1.地方活性化が進んでいる
 - 地方の伝統文化や観光資源が有効に活用され、地方にも人が集まる社会。
 - リゾート地の誘致により外国人観光客が長期滞在するようになる。
 - 都市集中型社会から地方分散型社会への転換。
2.インフラの整備
 - 地方空港や公共交通機関が整備され、観光客が地方にも訪れやすくなっている。
3.経済的安定
 - 消費税の増収などで観光業が国を支える経済基盤となる。
 - 他産業との連携による収益拡大。
4.文化保護と魅力発信
 - 伝統工芸品の保護やPRが進み、日本文化への理解が深まる。
5.国際的な存在感の向上
 - 日本の魅力を活かし、世界で競争力のある観光国として認識されている。

後者の問いに対する答え
1.他産業の強化
 - 第一次・第二次産業の技術革新(例: 機械化)により高齢化に対応。
 - 新たな分野や産業の発展を目指す。
2.多産業型社会
 - 観光に過度に依存せず、産業間で支え合う社会。
 - 日本を「オールラウンダー」として多角的な産業国にする。
3.リスク分散
 - 国際的な情勢や災害に左右されにくい産業基盤を構築。
 - 観光業に代わる安定的な基幹産業の発掘。
4.地方創生の別アプローチ
 - 地方活性化を観光以外の手段で進める(例: 地域特産品の輸出促進)

あるクラスの対話の記録(1グループ7人構成の3グループを集約)


つづきはフィールドで。

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