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流行ってるモノってやっぱり面白いんですね。『鬼滅の刃』なんですけど。

 いつの間にか日本、外でマスクしてない人と鬼滅を知らない人は非国民扱いされる国になってしまってた。仕事で使う書類をコピーしたくて家から徒歩20秒のコンビニに立ち寄ったところ、マスクを忘れた私に対し店員と客からの冷たい視線が360度全方位から突き刺さる。映画『インセプション』にて、ここが夢の世界だと意識した瞬間にあらゆる他者が一斉にコチラを向くシーンを思い出した。まさか我が身にアレが降りかかるとは。焦ってコピー機に原本を忘れて家に帰ってしまい、マスクを着用して取りに行くハメになった。おのれコロナ。

 あとアレですよ。鬼滅の刃。職場の若い子はみんなアニメ観てるし、ジャンプを毎週買う30~40代もいるから大なり小なり鬼滅を認知してる。親戚の子はアニメ放送終了後に原作漫画を買い集めたって聞いたし、先日ついに「アニメ好きそうなのに観てないの??」と真顔で言われてしまった。一概にオタクといっても沼が違えば法学部と医学部くらい専攻が異なるわけで、二次元のアイドル特撮インド映画に明け暮れていた私は世のトレンドからは完全に乗り遅れ、「まぁジャンプ毎週買うような世代じゃないし」くらいの天邪鬼を気取るハメになってしまった。本当にこういうこと続けると視野が狭まるから止めたほうがいいです。キティさんも「推しは増やしていい」って言ってたし。

 小学生~中学生の頃はワンピースやナルト、BLEACHが全盛期で、クラスメートの家に遊びに行けばコミックスが揃っていた時代。でもまぁ私はなんやかんやあってその波には乗れず、「シャーマンキングとスラムダンク読んでない奴らはセンスがねぇ!!」と壁に向かって素振りをするような捻くれっ子だったんですよ。この辺りを思い出すと無性に首を吊りたくなるので止めますけど、一旦は流行りモノにはなびかない素振りを見せ、でも気になってハマる頃にはもう流行は変わってて…みたいな自意識の失敗を卒業できないまま成人になっちゃって、鬼滅の刃ですよ。完全に乗り遅れて、観ないと周りとの話についていけなくなって、その段階で観るって、作り手に失礼だしオタクとしてのアンテナが錆びてる証拠なんですよ。「自分だけ観てないの恥ずかしいから」って言い訳がないと再生ボタンが押せないなんて。あぁみっともない。誰か殺してくれ。

 で実際に観たら、メチャクチャに面白いんですよ鬼滅の刃。今のところ5話、最終選別を終えるところまで観て、もう次が気になって仕方がない。早く「鬼滅みたよ!!」って職場で話したい。いっそ会社から突然の自宅待機を命じられて、そのまま全話観てしまいたいくらいすき。鬼滅、イイです。

舞台は大正時代の日本。主人公の竈門炭治郎(かまど たんじろう)は弟や妹、優しい母に囲まれ、炭を売って生活していた。だが、人を喰らう鬼が跋扈しており、炭治郎もまた家族を殺されてしまう。さらに、唯一生き残った妹の禰󠄀豆子(ねずこ)も鬼と化してしまう。絶望の中なんとか自分を奮い立たせる炭治郎は、禰󠄀豆子を人間に戻すこと、家族を奪った鬼を打ち倒すことを決め、厳しい修行に身を費やす。

 表現する語彙を持たないので抽象的なんですが、とにかく映像が美しい。背景の細かい部分まで手抜きがないし、激しく動いても破綻しない。炭治郎くんはその名に似合わず「水」の剣術の使い手で、必殺技を使う際は刀に浮世絵の「波」のエフェクトが乗っかって、その表現が新鮮でカッコイイ。アクションゲームが発売されたらグリグリ動かしたくなるような快感、心地よさがにじみ出ている。

 開始こそ陰惨な血なまぐさいお話なのに、キャラクターたちが鬱屈としておらず、ギャグも多くコミカルパートがきっちり用意されているのも驚きでした。世界には鬼がどのくらいいて、人間の数が少なくなってて滅亡の危機…というような説明が5話時点ではなされず、どの程度事態が困窮しているのかの描写がないため、同じく異形の存在(実は人間)との闘いを描いた出版社違いの大ヒットコミック『進撃の巨人』とはまた違う手触り。シリアスな展開があっても、重苦しくならないよう何かしら面白い台詞や表情が挟まれるのが、読みやすさ(観やすさ)に繋がっているのかな。

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画像はアニメ公式サイトより

 あと、主人公の好感度がめちゃくちゃに高い。竈門炭治郎くん、下のきょうだいをとにかく大事にしていることが序盤に描かれ、唯一生き残った禰󠄀豆子を守るためなら土下座も辞さない真っ直ぐさがが健気。目上の人に礼儀正しい態度もとれるし、挨拶と感謝ができる、とても人間の出来た好青年なんですよ。少年漫画の主人公って良くも悪くもこの辺がおざなりだったりするけれど、炭治郎くんは年上に好かれるタイプの子で、見ていて気持ちがいい。それでいて辛い訓練には「苦しい!」と、鬼との闘いでは「怖い」と弱音を吐きながら、「俺はできる!頑張れ!」と無理やり口に出して自分を奮い立たせる青臭さが、愛らしくもあり羨ましくもある。空元気も元気というか、臆病でも有言実行、逃げない姿勢が胸を打つ。

 熱情を秘めた主人公が、異形になってしまった少女を元に戻す話というと、真っ先に思い出すのが『甲鉄城のカバネリ』。こちらはカバネというゾンビが敵であり、カバネと人の狭間の存在カバネリと化した少年少女の物語。主人公の生駒は、先輩カバネリであるヒロインの無名が、母親が名付けた穂積という名前に込めた願いを受け、彼女を人間に戻しお米をお腹いっぱい食べられることを目指して、カバネとの熾烈な戦いに挑む。

 鬼を人間に戻す方法は見つからず、鬼との闘いにも終わりはあるのか、まだまだ未知数。それでも、女の子を救うために弱い心を打ち砕いて前に出る主人公像って、いつの時代もヒロイックで熱くなる。自分の弱さを自覚して、それでも前に進む。そうした等身大の男の子の在り方に、世代を問わず多くの人が感情移入し、応援したくなる。炭治郎と生駒、二人の旅路には幸せが訪れるようにと、願わずにはいられません。

 5話ともなればまだまだ序盤。鬼殺隊への入隊が許された炭治郎は、己の日輪刀を携えて、次なる任務に向かう。観るまでの天邪鬼はどこへやら、早く続きが観たい。もっと胸が熱くなるバトルシーンが観たい。金髪の子がなんだかネガティブ可愛い。全然喋らない顔のいい女の子も気になる。頼む、頼むから『鬼滅の刃』を観る時間をくれ。アニメを観終えたらちょうどいいタイミングで単行本を貸してくれる人はいないか。多分ハマる気がするんだ。あと映画あるんだって??いいじゃん観に行っちゃう。鬼滅はいいぞ。

 あとカバネリの続編も早くほしいぞ。このご時世、アニメ製作現場もそれどころじゃないのは承知の上だけれど、最後まで見届けないと死ねないコンテンツが多すぎるんだ。エヴァってあと一作で本当に終わるのか…?ゴジラとコングは闘ったらどっちが勝つ…?なんでハンは生きてるんだ…?なあ、誰か教えてくれよ!おい!なんでおれだけフル出勤で営業縮小のための年休が使えないんだ!!マスクがもう残りわずかなんだ!これで外に出たら首を刎ねられちまうよ!!…結局、人間の敵は人間なんだよなぁ。疑心暗鬼に満ちた人の心は排除と差別しか生まない。生まれたことがそう、guilty....

血文字で書かれたメモはここで途切れている。


(おつかれさまでした)

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