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『アクアマン』を観てジャンルの満漢全席を喰らえ~~~~~~~!!!!!!

 海には、なるべく近づきたくない。全く引き締まってないたるんだ身体を見られるのがイヤだし、泳ぐのもそんなに得意じゃない。きっと、これくらい筋肉隆々で泳ぎも上手かったら、海を毛嫌いすることはなかっただろうなぁと、メタルバンドから脱走してきたとしか思えないこの男の主演映画を観て、そう感じました。

 ご存じDCヒーロー大集合映画『ジャスティス・リーグ』から一年、おさかなさんと話せる大男アクアマン初の単独作がついに公開された。監督はホラーからアクションまで何でもござれのジェームズ・ワンということで期待しかなかったが、そのハードルを遥かに超える満塁ホームランを海底から打ち上げてくれた。

 一応、本作もDCエクステンデッド・ユニバースの一作品ということでこれまでのDCヒーロー映画と世界観を共有しているものの、ユニバース映画史上かつてないほどに予備知識も予習も必要ないため、気軽に劇場に足を運んでも大丈夫な親切設計。過去作とのつながりも分かる人には分かる程度のもので、その呆気なさもユニバース慣れした近頃の観客の笑いを誘う。

 軽く解説してしまうと、本作は『ジャスティス・リーグ』後の物語で、地球に破滅をもたらすために現れたステッペンウルフを倒した後も、アーサーは海の守り神アクアマンとして人命救助に励んでいた。かつては一匹狼らしくバットマン=ブルース・ウェインにキツく当たっていたが、実はめっちゃ寂しがり屋であることを告白し、結果としてバットマンやワンダーウーマンという「ともだち」ができてニッコリ、というのが『ジャスティス・リーグ』におけるアクアマン。本作では父親とも関係良好である様子が描かれ、最も情緒が安定しているDCヒーローの座に登りつめた。正義がどうとか悩んだりもせず、DC映画ではお約束だった「重厚さ」とは無縁の、サイコーに抜けの良い男が主役の映画なのだ。

 そんなアーサーの性格よろしく、本作もスピーディに展開が移り変わり、休み暇も与えぬエンタメ直球大作に仕上がっている。何せ、状況説明やおとなしいBGMが流れたと思えば5秒後に画面のどこかが爆発して無理矢理ストーリーを進行させるという荒業を多用しており、その強引さ粗雑さも意図的なものであるからこそ観客は笑うしかない。よもや無音⇒爆発のコンボを3回も同じ映画で見せられようとは。

 爆発の度に移り変わる展開もバリエーション豊富で、ジェームズ・ワンの多彩なアイデアが光る楽しい場面ばかりだ。冒頭からニコール・キッドマンの超絶アクションでお出迎えし、海底王国アトランティスは色彩豊かで美しく、水とは無縁の砂漠シチュエーションまで用意されている。様々なジャンルの要素を併せ持っているのも特徴で、『インディ・ジョーンズ』のような遺跡探索モノからホラーチックな場面が楽しめるほか、ラストは怪獣映画に様変わりするなど、とにかくサービス精神が旺盛すぎる。しかもこれだけのジャンルの醍醐味を敷き詰めて、破綻せず一本の映画にまとめ上げた手腕、ジェームズ・ワンの抜擢はDCユニバースにとっても吉と出た。

 エンタメ映画の美味しいところ全部盛り、みたいな本作『アクアマン』だが、白眉はやっぱりクライマックス。アトランティス連合軍VS甲殻族(!?)の合戦シーンでは、スカルアイランドから流れ着いたと思わしきバカデカい蟹とクラゲ型の戦闘機が闘い、その隙間を戦闘ザメと背びれのついたタツノオオトシゴみたいなやつが騎兵戦を繰り広げるという、作り手が何かしらの薬物をキメたとしか思えないCGスペクタクルが始まる。それだけでも面白いというのに、終いにはカテゴリー5級のKAIJUが参戦するというのだから、今年の『スカイライン 奪還』枠は本作で確定である。

 アクアマンと宿敵オーシャンマスターとのラストバトルは…これだけは言うまいと思いつつもあえて言わせてください、バーフバリみがすごい。偽りの王VS真の王という図式もさることながら、キメ画のショットや決着のつけ方があまりにバーフバリすぎて、「観る神話」というDCとバーフバリの個人的共通項を見出してしまい、最高潮の昂りを得られた。

 王座を巡る物語で主人公の名前が「アーサー」なので展開は容易に想像がついてしまうが、繰り広げられる映像はどれも観たことがないほどにクレイジーで美しい。これぞ『アクアマン』の面白さの本質にして、DCの改心の一撃だ。ザック・スナイダーが打ち立てた「深淵っぽい」作風の払拭に寂しさを覚えつつ、アメコミの奇想天外さを敷き詰めた特大エンタメ映画の誕生に、心から拍手してしまった。繰り返すが、これ一作でも大丈夫。劇場で水族館気分が味わえる本作からDCユニバースに入門するのがオススメだ。

次のヒーローはコイツだ!

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