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#2018年映画ベスト10

待たせたな。

 待ってないですかそうですか。昨年も同じ事言いましたが、映画ファンって「誰かに頼まれたわけでもないのに」この手のランキングに悩むのが、年末の風物詩なんですよね。一年を総括するきっかけになるし、他人のベストを読むのも楽しい。そんなわけで、お付き合いいただければ幸いです。

対象作品

 選考対象は、筆者が劇場で鑑賞した、2018年に公開された作品に限らせていただいております。動画配信サービスでも魅力的なオリジナル映画が配信されている今、何をもって「映画」とすべきか悩ましい時代ですが、とりあえずこのルールで進めて行きます。

 以下、2018年の劇場鑑賞作品の一覧になります。今回の選考対象外の作品は灰色セルになっております。

 それでは、ベスト10を順に発表します。

第10位 『ブラックパンサー』

 『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』で鮮烈なデビューを果たしたブラックパンサー初の単独映画。黒人俳優主演のヒーロー映画が全世界で特大ヒット!という世間的意義もさることながら、あの大傑作『クリード チャンプを継ぐ男』のライアン・クーグラー監督の確かな実力を感じさせる、これまた大傑作でした。

 主役であるティ・チャラをはじめとしたキャラクターたちが魅力的なのはもちろんですが、何と言っても本作が忘れがたい一作になったのは、ヴィランであるキルモンガーくんの物語があったからこそ。差別と迫害という現実問題を背負いつつ、そこからの解放を目的とした革命家としての一面。そして、彼の内に秘めた切ない動機が明らかになった瞬間の衝撃と慟哭。毎作高い水準を叩き付けてくれるマーベルスタジオが魅せる、万人が満足する高いエンタメ性と社会派メッセージを違和感なく両立させた、凄まじい一作。

第9位 『カメラを止めるな!』

 2018年邦画界最大の奇跡。連日満席と大評判を記録した、作り手のファンの熱量がとても高い一作でした。

 作品の構成上、観れば観るほど味の出るスルメのような一作でしたね。初見時は序盤37分ワンカットのゾンビ映画に感じた違和感が、それが出来るまでを描く後半部分で鮮やかに回収されていく流れに驚き、二週目は事情を知っているからこそ冒頭から笑いが止まらなくなる。映画のみならず、創作の苦悩と感動を色濃く反映させたフィルムのラストは、爽やかな余韻が流れる最高のエンドロールでした。

第8位 『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』

 中国で実際に起こったカンニング事件をモチーフに製作されたタイ映画。進学校に特待生入学した天才少女が、試験の解答を横流しするカンニングビジネスに手を染める、一風変わった作品。

 カンニングという後ろめたい題材を扱いながらも、その手法の奇想天外さに目が離せなくなり、華麗に試験官たちを欺いていく彼らを応援したくなってしまう。その背景には、生まれながらの経済格差を背負わされた若者の苦悩、あるいは賄賂横行する教育現場の現実が描かれ、一体どこに正義があるのかと思わずにはいられない。

 なんといっても白眉は、試験のシーン全てと言っていい。実際にカンニングが行われるシーンの緊張感、追い詰められる学生たちの鬼気迫る演技に、こちらもつい手に力が入ってしまう。おそらく作り手はかなりのドSなので、ハラハラさせられたい奇特な人はこれを観るといいです。

第7位 『ダンガル きっと、つよくなる』

 インドの大スター、アーミル・カーン主演最新作。元レスリング選手の男が、自身が果たせなかった金メダルへの夢を叶えるため、娘をレスリング選手に鍛え上げるという、そのままSNSに載せたら炎上待ったなしなあらすじ。しかし驚くことに、本作は実話を元にした作品なんです。

 望まずしてレスリングを強要され、オシャレや化粧もできず長い髪を切られてしまう。そんな娘二人の境遇に同情しつつも、やがてレスリングにのめり込んでいき、屈強な戦士に成長していく過程に思わず熱中。一度聴いたら耳から離れない楽曲たちに載せて描かれるトレーニングシーンの、不憫だが燃える不思議な感覚は、おそらく本作ならでは。そしていつしか、インドに生きる女の子たちの未来を背負ってリングに立つ自慢の娘の背中に、涙せずにはいられませんでした。

第6位 『ザ・プレデター』

 みんな大好き、人の星で勝手に狩りごっこ始めちゃうドッタンバッタン大騒ぎ、異星から来たフレンズなんだね!ことプレデター最新作。

 本作、予告編と実際の本編では受ける印象にかなり乖離があるように感じていて。予告編ではそれこそ「プレデターの侵略の脅威!」と銘打っているものの、実際の本編は「ガーディアンズ ~落ちこぼれ退役軍人の俺たちがヒーローになるまで~」みたいな邦題が連想される仕上がり。世間から爪はじきにされた者たちが、真のヒーローになるため立ち上がる。これって『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』に感じたアツさなんですよね。

 揃いも揃ってクズでござい、ってな集まりの彼らなんだけど、実は重い過去やトラウマを背負っていて、それを笑い飛ばしながら必死に生きている。そんな愛おしいヤツらが生み出すグルーヴの虜になってしまい、プレデターが蚊帳の外状態。まさかこんなに笑えて泣ける一作になるとは。今年のダークホース枠でした。

第5位 『ジュマンジ ウェルカム・トゥ・ジャングル』

 ロビン・ウィリアムズ主演のあの代表作の、まさかの正統続編。TVゲームへと姿を変えプレイヤーを誘うジュマンジさんの順応力もさることながら、「オタク少年のアバターがドウェイン・ジョンソン」というワードが強すぎるあらすじに、鑑賞を決意した方も多いはず。

 いざ蓋を開けてみれば、『ブレックファスト・クラブ』式スクールカーストに悩む等身大のティーンが、現実の自分とは異なるロールを演じることで変化・成長していく、真っ当な青春映画。その過程がとにかくブッ飛んでいて、ロック様の顔芸が爆笑を掻っ攫うその傍らで、中身は美少女のジャック・ブラックという凄まじいキャラクターが登場する有様。しかし、このキャラクターこそがゲームの難所を解き明かすカギであり、彼女の持つ容姿に左右されない自信こそが、長年ゲームに囚われていた青年を救うという、秀逸な脚本がお気に入りです。

第4位 『レディ・プレーヤー・ワン』

 あの『ゲームウォーズ』(原作小説の邦題)が実写化、と聞いた時は当然のごとく権利関係で頓挫すると思っていたのに、スピルバーグ神がこちらの予想を遥かに超えるヴィジュアルで実現させてくれた、存在自体が奇跡のような映画。

 もちろん全てのキャラクターの参戦が叶ったわけではないけれど、これだけやってもらって文句言ったらバチが当たると言うか、「メカゴジラとガンダムがガチバトル」みたいなオタクが昼休みにする空想をマジで実現させてくれた時点で、もう拝むしかないわけで。それ以外にも、キングコングやT-レックスが登場する冒頭のレースから最終決戦に至るまで、ありとあらゆるコンテンツのキャラクターやアイテムが登場する様は、圧巻の一言。これまで懐疑的だった「VR」というものを、わずか一本の映画で夢の世界に変えてしまった。改めて、「巨匠」の肩書がゆるぎないことを再確認させていただきました。ありがとうございます。

第3位 『仮面ライダーアマゾンズ THE MOVIE 最後ノ審判』

 Amazonプライムビデオで2シーズン配信された特撮ドラマの完結編となる劇場版。人喰い細胞によって産まれた人工生物アマゾンが解き放たれた日本を舞台に、アマゾンを狩るアマゾンとアマゾンを守るアマゾン、二人の闘いの結末が描かれる。

 日曜朝では出来ない表現、物語を突き詰めた『アマゾンズ』は、全ての生命が生きるために背負いし業、すなわち「他の命を喰らう」ことを描き続けてきたのですが、今作で二人の主人公が辿る末路がとにかく衝撃的で。己の使命、あるいは本能に従って対立してきた二人が、それぞれ最も避けたかった行為に手を染めなくてはならないという、この上なく残酷な結末。同時に、この作品を締めるにはこれしかないよな、という納得もあって。ドラマ版を経ての完結編として、完璧な幕引きだと思っています。傑作です。

第2位 『デッドプール2』

 破天荒すぎるヒーロー、俺ちゃんことデッドプール第2作。血しぶきお下品何でもアリなR指定ヒーローが、X-MENやMCUに中指立てながら(甘噛み)帰ってきた。今回のテーマは「ファミリームービー」とのことで、子どもにけしからんことをする輩を皆殺し!スカッと爽快ヒーロー映画。

 さらに、MCUに入れない腹いせか、本作は新たなユニバースの発足を高らかに宣言した。その標的は、「最もセクシーな男」ことライアン・レイノルズ。彼とアメコミヒーロー映画との呪われた過去を清算し、全部無かったことにしてしまう。驚愕と感動のエンドロールは、2018年映画史を代表するサプライズでした。

第1位 『バーフバリ 王の凱旋 完全版』

 完全版は2018年公開だからセーフ!ということで、インドからやってきた娯楽映画の頂点こと『バーフバリ』より、前作から全てがパワーアップした後編を年間ベストに。今年起こった様々なムーブメントのうち、本国と同じバージョンでの上映が叶うというのも、喜ばしい快挙でした。

 この『バーフバリ』という作品、絶叫上映やマサラ上映といった鑑賞スタイルとの相性が話題となりましたが、それを抜きにしても映画としての完成度が抜群に高い、ということはもっと推していかねばなりません。間に25年を隔てた現在と過去を、「鎖」「火の儀式」といったモチーフやアイテムで繋ぎ合わせ、そこにキャラクターのエモーションを投影させることで、観客の感情移入を誘う巧みな構成。また、前編『伝説誕生』と呼応させた動作やシチュエーションのリフレインが秀逸で、同じ行為でも異なる意味合いが込められていたりとこちらの「気づき=映画的快感」を促す演出がいくつも施されており、映画の面白さのキモがふんだんに詰まっている。

 そこに、インド映画らしい豪華絢爛なミュージカル要素と、巨大セットで繰り広げられる豪快すぎるアクションが足され、しかし破綻せずむしろストーリーを手際よく進めるためのアクセントになっている。アクション、ストーリー、エモーションの見事な調和が生み出す極上の映画体験は、きっと誰が観ても面白いと感じるはずです。

 娯楽映画としてストレートに面白く、奇をてらわない王道を往く姿勢こそ、神話としての『バーフバリ』の風格とも言えるでしょう。そんな一作を、やはり年間ベストとして推していきたい。万人に胸張って薦められる大傑作です。

2019年へ

 まず何と言っても、生きる希望はコレですよね。

 「5/31は必ず有休を取る」が2019年の抱負になります。どうぞ暖かく見守っていただければ幸いです。

 今年は、『バーフバリ』をきっかけに知り合った方々との交流を経て、たくさんの映画やイベントと触れ合うことができました。また、noteやtwitterでも様々な出会いがあり、「スキ」を広めあうことの楽しさに気づけた一年でもありました。全ての出会いに、感謝しています。

 来年も、いい一年になりますように。具体的には『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』が無事に2020年に完成するといいなぁ!!と初詣でお願いして参ります。

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