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アニメ『機動警察パトレイバー』鑑賞録(2)【TV版 前編】

 突如思い立ってアニメ『機動警察パトレイバー』を見始めた件、前回の鑑賞記をアップしたところ、閲覧数も好調でパトレイバーの根強い人気を感じ取れました。なおさら迂闊なことは書けない…そんな心境で第二弾を書き下ろしております。

 今回は98年10月より日本テレビ系列で放送されたTVシリーズ(ON TELEVISION)の中から、全47話中の前半24話までを振り返り、感想を述べていきます。長くても2クール24話が当たり前になった現在からすると、1年放送50話近くもあるのは、日曜朝の特撮枠や大河ドラマを連想します。バブルゆえに製作費に余裕があったのでしょうか、羨ましい限りです。ちなみに筆者は平成4年生まれです。

【ON TELEVISION 1~24話】

レイバー。それは、産業用に開発されたロボットの総称である。建設、土木の分野に広く普及したが、レイバーによる犯罪も急増。警視庁は、特殊車両二課パトトールレイバー中隊を新設、これに対抗した。通称、パトレイバーの誕生である。

 前回取り上げた劇場版が89年7月公開だったため、TV展開も織り込み済みでの製作だったのでしょう。当時のパトレイバーの人気の高さがうかがえます。おなじみのキャラクターや98式イングラム(主役機)、並びに主要キャストも続投しての満を持してのTVシリーズ。

 しかし驚くべきことに、物語は一旦仕切り直しされ、1話では野明の第二中隊配属が描かれます。レイバーへの強い愛着などOVAで描かれた基本設定はそのままに、強奪されたレイバーを追うためにバイクで疾走し、トレーラーにしがみついてでも愛機アルフォンスを奪われまいと大立ち回りを披露します。

 続く2話では香貫花が着任し、以降は1話完結で様々な事件に特車二課が立ち向かう、バラエティ豊かなシリーズになっています。レイバーが普段の生活に深く浸透した時代では、くだらない痴話喧嘩や飲酒運転、果ては失恋した男の自暴自棄な破壊行動にまでレイバーが使用され、その鎮圧に特車二課が駆りだされる毎日が描かれます。その合間に、実験生物や軍用レイバー等の不穏なキーワードや、バビロンプロジェクトに反対する過激派組織「地球防衛軍」の存在が明らかになり、レイバーが土木・建設等の幅広い分野で貢献している傍らで、テロや破壊行為の道具に成りかねない危険性が、旧OVAよりも強調して描かれます。

また、マスコミ受けばかりを気にする警察上層部の体制や、タマちゃんを彷彿とさせる東京湾に迷い込んだ鯨のエピソードでは、一過性のブームに踊らされる庶民層の姿をシニカルに描写する一面もあり、基本的にはコメディタッチながらもSFではなく地に足の着いた人間ドラマのコンセプトは一貫しています。OVA~劇場版の脚本を手掛けていた(平成ガメラ三部作でおなじみ)伊藤和典氏は全体のシリーズ構成に回り、複数の脚本家が参加したことにより、エピソードにも幅が広がりました。

 しかししてこのTV版最大の驚きは、「ちゃんとロボットアニメしている」ことにありました。大人しか購入できない高価なVHS/LDで展開されたOVA、これまた入場料金が発生する劇場版とは異なり、誰でも無料で観られるTV版だからこそ、広い年齢層に支持されるアニメでなければスポンサーは付きません。そのため、序盤から自衛隊の試作多脚型やドイツ製機体ブロッケン、消火用レイバーなど、毎話なにかしら新たなロボが登場する大盤振る舞い。果てにはビーム兵器が内蔵された機体が登場し、軍用兵器としてのレイバー運用が現実化しつつある現状も示唆されます。

 二足歩行の巨大ロボットの非現実性を声高に発してきた旧OVA。本シリーズには、この要素だけは受け継がれませんでした。本作では、レイバーはパイロットの操縦データを蓄積し学習する機体であることも解説され、作中では一本背負いも披露します。邪推をするのなら、子どもたちに愛される“カッコイイ”“強い”ロボットとしてのレイバーが要請されたのではないか、そんな思惑を感じます。その是非はパトレイバーファン各々が自分なりの論旨を持つのではないかと察するのですが、個人的にはOVAから物語が仕切りなおされたこともあり、ロボットアクションの面でも差別化されているため「これはこれでアリ」派とします。みなさんはいかがでしょうか?

 愛すべき第二小隊のコミカルなやり取りも面白く、特に野明と遊馬の関係性は香貫花と視聴者をじれったい気持ちにさせてくれます。野明はレイバーへの愛着が強い故に恋愛とは意識しないものの、困った時に叫ぶのは決まって遊馬の名前。遊馬もまた、フォワードとバックアップは一心同体の建前を上手く使いながら、野明に探りを入れるなど気に掛けているよう。お互い大人の恋愛とは言い難い稚拙かつ類型的なものですが、今後どのように発展していくかも気になるところ。

 また、当初は香貫花に苦手意識を持っていた野明も酒の場をきっかけに打ち解け、友情が芽生えていくものの、24話にて香貫花の研修期間が終了。一度は「帰りたい」と弱音を吐いた香貫花も第二小隊には愛着を抱き、24話ラストでは「I’ll be back」と書いた絵葉書を野明宛に送りました。これにて、前半の一区切りとなります。

 依然、ストーリーには連続性が薄く全体を繋ぐ縦筋はまだ見えないものの、イングラムとの戦闘データを得るために自衛隊との合同演習を画策した謎の男「黒崎」の暗躍や、民営の警備会社のレイバー導入が今後のキーワードになるのか。また、香貫花が抜けた穴をどのようにして埋めるのか、後藤隊長の人選に期待が高まります。

 次回は25~47話鑑賞後に掲載予定となります。DVD4枚分、しめて592分(148分×4枚)の長い旅路が再び始まるのです…。


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