映画 真夜中乙女戦争感想
心を丁寧に取り出されたような映画だった。上映中感じた気持ちは多分、私は悔しかったのだと思う。この学生生活でバカなこと1つすらできなかったことが。「私」や「先輩」がとても羨ましかった。「私」は自分の人生を諦めきれていなかったけど、どこか受動的でそれが私にはとても怠惰のように見えた。手を伸ばせば掴めたかもしれない人生の本質というものに手を伸ばすことすらやめてしまった。対照的に「先輩」は人生を諦めてないからこそもがき続けたのだろうなとも感じた。正しい生き方なんてない社会で凛と振る舞う「先輩」は美しくて、でも手帳の中に「先輩」の弱さが詰まってて。「先輩」も1人の人間なんだって思い知らされた。
「黒服」はやっていることがぶっとんでいるけれど、言っていることはいつでも正しいなと思った。人生を変える人間は会うべき時に会うという言葉が1番好きだった。人生において偶然なんて1つもなくて、すべて起こるべくして起きるのだろうと思った。「黒服」のアジトでの集まりは1種の狂気を孕んでいて心を逆撫でされている気分だった。
それぞれが違った「正しさ」を持っていて、でもどれかを「正しい」とした時、他は「間違い」となってしまうところがやるせない気持ちになった。正しさの共存はできない。だから人は「戦争」をするのだと。
私たちの見てみぬふりをしているところに優しく触るような、柔らかくて脆い部分を取り出されたような、そんな気分だった。いつまでも目を背け続けることはできない。描写の1つ1つが刺さってよくわからないタイミングで泣いてしまった。
特にホテルで「私」と「先輩」が話すシーンが刺さってボロボロに泣いてしまった。私たちは別に好きな人がいなくても生きていける。悲しいことだけどその通りで、でも好きな人にしか埋められない心の隙間はあって。「私」はきっと誰かに愛されたかった。でも「私」が好きな「先輩」は他の誰かの恋人で。でもそれが「私」らしいと思った。「私」は要領が悪いけれど、正しく生活しようとしてて、すごく真面目に感じられた。だからこそ何もかも壊したくなってしまったのかもしれない。でも「先輩」と関わっていくうちに東京は愛おしい場所へと変化していたのではないだろうかと思う。いつの間にか東京を手離しがたくなっている「私」を抱きしめたくなった。
「真夜中乙女戦争」が決行される日、「黒服」はあんな映像を残していたくらいだから「私」に殺されることくらいわかっていたのだろうけど、それを受け入れた「黒服」に「私」に対する愛情を感じた。「黒服」はとても「私」のことが好きだったのだろうなと思った。だからこそ「私」が「先輩」を逃がそうとしたとき寂しかったんじゃないかって思った。「先輩」と「黒服」、どちらか1つしか選べない夜に両方欲しがった「私」はとても強欲で愛おしかった。私はこの作品は「最高のバッドエンド」だと思った。
また小説を読み直そうと思う。当時の私が何を感じたのか思い出すために。