容姿は関係あるか(ショートショート)【音声と文章】
山田ゆり
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※note毎日連続投稿1515日をコミット中!
1472日目。
※聴くだけ・読むだけ・聴きながら読む、
どちらでも短時間で楽しめます。
おはようございます。
山田ゆりです。
今回は
容姿は関係あるか(ショートショート)
をお伝えいたします。
素敵な起業家さんがいた。
彼女の自由奔放な考え方が好きだった。
その方のコミュニティのメンバー募集があり、それにはズームで面談が必要だということだった。
恵美は早速申し込んでみた。
指定された時間帯は平日の午前9時だった。
恵美は午前中有給休暇をとりその日を指折り数えていた。
その日は朝から忙しかった。
いつも通り4時起きで朝食の準備をした。
中学と高校の息子たちと夫の分のお弁当も作った。
最近、めきめきと成長してきたわが息子たちのお弁当の量は半端がない。
大きなお弁当の他におにぎりを3個ずつ持たせる。
それは授業が終わってから部活に行く前に食べる分だ。
湯気が立ちこむ台所に立っていると、小学生の娘が目をこすりながらやってくる。
「おはよう。ねぇ、お母さん。
私の体育のTシャツ知らない?」
「あらあら、今日は体育があるのね。
どれどれ~。」
乾いた洗濯物を置いてある棚を見てみた。
棚は家族全員分ある。
娘の棚の中にはなかった。
他の棚を物色していたら、次男の棚に間違って入っていた。
学校のマーク以外は真っ白だから
普通のTシャツと間違えて入れてしまったらしい。
「あー、ここにあった。良かったねぇ~」
「ありがとう」
「おーっ!今日は早いなぁ」
夫が起きてきた。
「違うの、体育のTシャツがカズ兄ちゃんのところにあったのをお母さんがみつけてくれたの」
「そっかそっか~。」
夫は娘の頭を大きな手でポンポンした。
それぞれがテーブルにつき朝食を食べ、それぞれ家を出ていった。
ダイニングは嵐が去ったあとのようだった。
壁の時計を見るとズームまであと1時間しかない。
恵美は洗いあがった洗濯物を持って二階のサンルームに干した。
子供たちの成長と共に洗濯物の量が多くなってきて今朝は洗濯が2回になった。
朝食を取りたかったが、時間が押していた。
シンクの中の食器を洗い、先ほど吹きこぼれたレンジ周りをキッチンクロスで円を描くように素早く拭いた。
まだ顔も洗っていない。
ズームまであと15分しかない。
確かズームは30分だけだ。
顔出ししない声だけのズームだから
終わってからゆっくり朝食を食べようか。
自分の部屋に行く前に恵美は綺麗になった台所を振り返った。
やることはやった。
あとはズームだ。
恵美は自分の部屋に駆け上がった。
PCを開く。
顔が見えるところには一応紙を掛けている。
ビデオ撮影はしないと言われても
間違って映ったりしたら大変だから。
先週、別の方とズームをした時のことを思い出した。
彼の考えも素晴らしかった。
共感するところがたくさんあったが
しかし、同じ女性の方が自分にはあっているかもしれない。
そんなことを考えていたら9時になった。
PCの画面には綺麗に化粧をした女性がいた。
その目のぼかし方が好きだ。
いかにも質のよさそうな服からは豊満な胸が強調されていた。
最近3番目のお子様の授乳が大変とメールマガジンに書かれていたが、
その胸は授乳期間中であることを物語っていた。
「おはようございます。今日はよろしくお願いいたします」
恵美はいつもよりトーンを上げて挨拶をした。
その方は軽く挨拶をされ、そして恵美に言った。
「私のコミュニティは誰でも入れるものではなく、私と面談し、私が認めた人だけが入れるものです。
では、これから30分位、お話をさせていただきます。
ではまず、お顔を見せてください。」
えっ!
恵美はこれまで数人の方とズームをしたことがあるが、一度も顔を出してくださいとは言われたことはなかった。
今日のこのズームの要綱には顔を見せるとは一言も書いていなかったことは確認済みだった。
容姿に自信がない恵美は、顔出し必須だったらもともと申し込んではいない。
「あのぉ~。顔を見せないといけないのでしょうか?」
恵美は恐る恐るお聞きした。
恵美は顔が醜くても、気持ちが通じていればそれでいいと思っていたから。
しかし、
「入会の許可は私がいたします。
その方とのフィーリングもありますので
実際に顔を見ながらお話をさせていただきます」と彼女は譲らなかった。
どうしよう。
今朝はまだ会社に行くモードではない。
顔もまだ洗っていない。つまり化粧もしていないということ。
こんな顔を見られたくなかった。
「どうしても顔出ししないといけないでしょうか?」
と恵美は食い下がったが、やはり無理だった。
恵美は諦めてビデオ録画用のレンズを隠していた紙をずらした。
途端に画面には、みっともない女性が映った。
化粧はしていない。
髪が少し寝ぐせ気味。
今朝は少し寒かったからいつもの服の上にジャンバーを着ていた。
そのジャンバーはお世辞にも素敵ではなかった。見た目よりも暖かさ優先のものだった。
極めつけは首に巻いたタオルだった。
寒がりな恵美は首にタオルを巻いていた。
しかも、農協の名前が入ったタオルだ。
後で考えたら、そのタオルを取り、ジャンバーを下に脱ぎ捨ててから紙をずらせばよかったのだ。
しかし、お人好しで頭の回転が良くない恵美は、そのままの状態を相手に見せてしまった。
画面に映る恵美は、最悪だった。
ただのどこにでもいる田舎のオバハンだった。穴があったら入りたい気分だった。
今朝も朝4時から起きて家族の為にお料理を作って頑張っていたのに。
画面に映っている自分は
お世辞にも綺麗でもなく、何か良いものを持っているように感じさせる風貌でもなかった。
相手は一瞬、あ~ぁ、という表情になったのを恵美は見逃さなかった。
会社に行くときはこんな感じではなく、もう少しましな格好をしているのに
と、心の中で叫んでいたが相手にそれが届くはずもない。
恵美はつい今しがたまで、その方のコミュニティに入りたいと思っていたが
この姿を見られたからにはもう駄目だと思った。
そして自分から「なかったこと」にしていただいた。
先方は
姿かたちにとらわれずに相手の中身を見る、ことはなく、一方的に断っている恵美の話をすぐに承諾した。
だから、30分の予定だったズーム面談は5分くらいであっけなく終わった。
あれほど楽しみにしていたのに。
顔出しが必須なら事前に言ってほしかった。
言い訳かも知れない。
どんなことがあるか想定して物事に対処しなさいという教えかも知れない。
それとも、自分がどんな容姿であってもそれを気にせずに堂々として自分を表現できる人でありなさいという教えかも知れない。
結局、恵美は縁がなかったと諦めるしかなかった。
自分は相手の容姿にこだわらない人間になろう
と恵美は心に誓った。
今回は
容姿は関係あるか(ショートショート)
をお伝えいたしました。
本日も、最後までお聴きくださり
ありがとうございました。
ちょっとした勇気が世界を変えます。
今日も素敵な一日をお過ごし下さい。
山田ゆりでした。
◆◆ アファメーション ◆◆
.。*゚+.*.。.。*゚+.*.。.。*゚+.*.。
私は愛されています
大きな愛で包まれています
失敗しても
ご迷惑をおかけしても
どんな時でも
愛されています
.。*゚+.*.。.。*゚+.*.。゚+..。*゚+
1472日目。
※聴くだけ・読むだけ・聴きながら読む、
どちらでも短時間で楽しめます。
おはようございます。
山田ゆりです。
今回は
容姿は関係あるか(ショートショート)
をお伝えいたします。
素敵な起業家さんがいた。
彼女の自由奔放な考え方が好きだった。
その方のコミュニティのメンバー募集があり、それにはズームで面談が必要だということだった。
恵美は早速申し込んでみた。
指定された時間帯は平日の午前9時だった。
恵美は午前中有給休暇をとりその日を指折り数えていた。
その日は朝から忙しかった。
いつも通り4時起きで朝食の準備をした。
中学と高校の息子たちと夫の分のお弁当も作った。
最近、めきめきと成長してきたわが息子たちのお弁当の量は半端がない。
大きなお弁当の他におにぎりを3個ずつ持たせる。
それは授業が終わってから部活に行く前に食べる分だ。
湯気が立ちこむ台所に立っていると、小学生の娘が目をこすりながらやってくる。
「おはよう。ねぇ、お母さん。
私の体育のTシャツ知らない?」
「あらあら、今日は体育があるのね。
どれどれ~。」
乾いた洗濯物を置いてある棚を見てみた。
棚は家族全員分ある。
娘の棚の中にはなかった。
他の棚を物色していたら、次男の棚に間違って入っていた。
学校のマーク以外は真っ白だから
普通のTシャツと間違えて入れてしまったらしい。
「あー、ここにあった。良かったねぇ~」
「ありがとう」
「おーっ!今日は早いなぁ」
夫が起きてきた。
「違うの、体育のTシャツがカズ兄ちゃんのところにあったのをお母さんがみつけてくれたの」
「そっかそっか~。」
夫は娘の頭を大きな手でポンポンした。
それぞれがテーブルにつき朝食を食べ、それぞれ家を出ていった。
ダイニングは嵐が去ったあとのようだった。
壁の時計を見るとズームまであと1時間しかない。
恵美は洗いあがった洗濯物を持って二階のサンルームに干した。
子供たちの成長と共に洗濯物の量が多くなってきて今朝は洗濯が2回になった。
朝食を取りたかったが、時間が押していた。
シンクの中の食器を洗い、先ほど吹きこぼれたレンジ周りをキッチンクロスで円を描くように素早く拭いた。
まだ顔も洗っていない。
ズームまであと15分しかない。
確かズームは30分だけだ。
顔出ししない声だけのズームだから
終わってからゆっくり朝食を食べようか。
自分の部屋に行く前に恵美は綺麗になった台所を振り返った。
やることはやった。
あとはズームだ。
恵美は自分の部屋に駆け上がった。
PCを開く。
顔が見えるところには一応紙を掛けている。
ビデオ撮影はしないと言われても
間違って映ったりしたら大変だから。
先週、別の方とズームをした時のことを思い出した。
彼の考えも素晴らしかった。
共感するところがたくさんあったが
しかし、同じ女性の方が自分にはあっているかもしれない。
そんなことを考えていたら9時になった。
PCの画面には綺麗に化粧をした女性がいた。
その目のぼかし方が好きだ。
いかにも質のよさそうな服からは豊満な胸が強調されていた。
最近3番目のお子様の授乳が大変とメールマガジンに書かれていたが、
その胸は授乳期間中であることを物語っていた。
「おはようございます。今日はよろしくお願いいたします」
恵美はいつもよりトーンを上げて挨拶をした。
その方は軽く挨拶をされ、そして恵美に言った。
「私のコミュニティは誰でも入れるものではなく、私と面談し、私が認めた人だけが入れるものです。
では、これから30分位、お話をさせていただきます。
ではまず、お顔を見せてください。」
えっ!
恵美はこれまで数人の方とズームをしたことがあるが、一度も顔を出してくださいとは言われたことはなかった。
今日のこのズームの要綱には顔を見せるとは一言も書いていなかったことは確認済みだった。
容姿に自信がない恵美は、顔出し必須だったらもともと申し込んではいない。
「あのぉ~。顔を見せないといけないのでしょうか?」
恵美は恐る恐るお聞きした。
恵美は顔が醜くても、気持ちが通じていればそれでいいと思っていたから。
しかし、
「入会の許可は私がいたします。
その方とのフィーリングもありますので
実際に顔を見ながらお話をさせていただきます」と彼女は譲らなかった。
どうしよう。
今朝はまだ会社に行くモードではない。
顔もまだ洗っていない。つまり化粧もしていないということ。
こんな顔を見られたくなかった。
「どうしても顔出ししないといけないでしょうか?」
と恵美は食い下がったが、やはり無理だった。
恵美は諦めてビデオ録画用のレンズを隠していた紙をずらした。
途端に画面には、みっともない女性が映った。
化粧はしていない。
髪が少し寝ぐせ気味。
今朝は少し寒かったからいつもの服の上にジャンバーを着ていた。
そのジャンバーはお世辞にも素敵ではなかった。見た目よりも暖かさ優先のものだった。
極めつけは首に巻いたタオルだった。
寒がりな恵美は首にタオルを巻いていた。
しかも、農協の名前が入ったタオルだ。
後で考えたら、そのタオルを取り、ジャンバーを下に脱ぎ捨ててから紙をずらせばよかったのだ。
しかし、お人好しで頭の回転が良くない恵美は、そのままの状態を相手に見せてしまった。
画面に映る恵美は、最悪だった。
ただのどこにでもいる田舎のオバハンだった。穴があったら入りたい気分だった。
今朝も朝4時から起きて家族の為にお料理を作って頑張っていたのに。
画面に映っている自分は
お世辞にも綺麗でもなく、何か良いものを持っているように感じさせる風貌でもなかった。
相手は一瞬、あ~ぁ、という表情になったのを恵美は見逃さなかった。
会社に行くときはこんな感じではなく、もう少しましな格好をしているのに
と、心の中で叫んでいたが相手にそれが届くはずもない。
恵美はつい今しがたまで、その方のコミュニティに入りたいと思っていたが
この姿を見られたからにはもう駄目だと思った。
そして自分から「なかったこと」にしていただいた。
先方は
姿かたちにとらわれずに相手の中身を見る、ことはなく、一方的に断っている恵美の話をすぐに承諾した。
だから、30分の予定だったズーム面談は5分くらいであっけなく終わった。
あれほど楽しみにしていたのに。
顔出しが必須なら事前に言ってほしかった。
言い訳かも知れない。
どんなことがあるか想定して物事に対処しなさいという教えかも知れない。
それとも、自分がどんな容姿であってもそれを気にせずに堂々として自分を表現できる人でありなさいという教えかも知れない。
結局、恵美は縁がなかったと諦めるしかなかった。
自分は相手の容姿にこだわらない人間になろう
と恵美は心に誓った。
今回は
容姿は関係あるか(ショートショート)
をお伝えいたしました。
本日も、最後までお聴きくださり
ありがとうございました。
ちょっとした勇気が世界を変えます。
今日も素敵な一日をお過ごし下さい。
山田ゆりでした。
◆◆ アファメーション ◆◆
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ご迷惑をおかけしても
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