大切な人を大事にしたい【音声と文章】
山田ゆり
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「今日は残業で遅くなるから~!」
のり子はPCを打ちながらキッチンに立っている娘に軽く話しかけた。
「えっ!遅くなるの?」
不機嫌そうな声が返ってきた。
のり子は一瞬で思い出した。
そうだった。
今日、私は誕生日なんだ。
そして娘は休日で、久しぶりに家族全員が夕食の時間に揃うのだ。
そうか、特に言われていないけれど今夜は誕生日会をするつもりなのだ。
のり子の仕事は毎年、この月が一番多忙な時期である。
のり子は今の会社に入ってからゴールデンウイークに休日出勤しなかったことは一度しかない。
その時は北海道で行われた姪の結婚式に行っていた。
それだけ忙しい月なのである。
だから今日が特別な日だということを忘れていた。
不機嫌そうな娘に対し、慌ててのり子は言った。
「遅いと言っても、2時間だけ残業だから、19:40頃には帰って来るから。」
言ってみて、全然フォローになっていないと気が付いた。
普段、18:00に夕食をするから1時間半以上待たなければいけない。
本当は残業せずに帰宅したかったが、今日はどうしても決めなければいけない仕事がありそれは通常の就業時間内では終わらない仕事だった。
「いってらっしゃい。」
いつもより低音で抑揚が無い娘の言葉を背に受けながらのり子は玄関を出た。
それは既に肩に矢が突き刺さった状態で
これから戦場に向かう戦士のようだった。
のり子はその日、なるべく早く帰れるように工夫した。
今日は娘達のためにどうしても、1分でも早く上がりたい。
のり子は淡々と仕事をこなしていった。
今日は娘たちが自分の帰宅を待っている。
先に食べてていいからと言っても絶対、食べずに待ってくれるのである。
だから約束通り、19:40頃までには帰宅したい。
のり子はつい横道にそれそうになる自分を奮い立たせて、本日終わらせるべき仕事に集中した。
18:00頃、今日の仕事が決まりそうな目途が見えてきた。
これなら終われそう。
今日のすべきところまで終わることができ、しかも約束の時間までに帰宅できそうだ。
のり子はコーヒーをガブリと飲み、そしてまたPCに向かった。
19:04タイムカードを打刻してのり子は駐車場までの砂利道を急いだ。
ごろごろとしたその感覚は今ののり子の状態に似ている。
一歩一歩、しっかりと踏まないと転びそうになる。
うわべだけ繕っていてはいけない。
一番大切なことを大事にしよう。
小雨の中、肩をすぼめて小走りしたのり子は、車の運転席にドカッと座った。
すぐにエンジンを掛け、のり子はゆっくりハンドルを右に切った。
たくさんの雨粒が窓についていた。それはのり子のわだかまりに見えた。
ワイパーでそれを払う。
これまでの邪悪な粒々が払われ、けがれのないさらっとした心になった気がした。
さぁ、我が家へ帰ろう。
我が家の玄関に着いた。
玄関に鍵を挿すのを一瞬ためらう。
まだ娘は怒っているだろうか。予定より数分しか早く着かなかったが、自分の思いは伝わるだろうか。
重厚なドアはいつも以上に重く感じられた。
すると、朝、あれほど不機嫌そうだった娘は、そんなことあった?というくらい明るくのり子を迎え入れてくれた。
そして、やはり娘たちは食べずに待ってくれていた。
ありがとう。
たくさんのお寿司
https://yamayuri58.com/tyoubo/wp-content/uploads/2024/05/20240501_193653-scaled.jpg
https://yamayuri58.com/tyoubo/wp-content/uploads/2024/05/20240501_193658-scaled.jpg
美味しそうなケーキ
https://yamayuri58.com/tyoubo/wp-content/uploads/2024/05/20240501_201002-scaled.jpg
朝、不機嫌だった娘が作ってくれた澄まし汁は特に美味しかった。
https://yamayuri58.com/tyoubo/wp-content/uploads/2024/05/20240502_060408-scaled.jpg
そして、娘たちからのプレゼント。
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ありがとう。
これからも大切な人を大事にしていきたい。
※note毎日連続投稿1900日をコミット中!
1825日目。
※聴くだけ・読むだけ・聴きながら読む。
どちらでも数分で楽しめます。#ad
大切な人を大事にしたい
のり子はPCを打ちながらキッチンに立っている娘に軽く話しかけた。
「えっ!遅くなるの?」
不機嫌そうな声が返ってきた。
のり子は一瞬で思い出した。
そうだった。
今日、私は誕生日なんだ。
そして娘は休日で、久しぶりに家族全員が夕食の時間に揃うのだ。
そうか、特に言われていないけれど今夜は誕生日会をするつもりなのだ。
のり子の仕事は毎年、この月が一番多忙な時期である。
のり子は今の会社に入ってからゴールデンウイークに休日出勤しなかったことは一度しかない。
その時は北海道で行われた姪の結婚式に行っていた。
それだけ忙しい月なのである。
だから今日が特別な日だということを忘れていた。
不機嫌そうな娘に対し、慌ててのり子は言った。
「遅いと言っても、2時間だけ残業だから、19:40頃には帰って来るから。」
言ってみて、全然フォローになっていないと気が付いた。
普段、18:00に夕食をするから1時間半以上待たなければいけない。
本当は残業せずに帰宅したかったが、今日はどうしても決めなければいけない仕事がありそれは通常の就業時間内では終わらない仕事だった。
「いってらっしゃい。」
いつもより低音で抑揚が無い娘の言葉を背に受けながらのり子は玄関を出た。
それは既に肩に矢が突き刺さった状態で
これから戦場に向かう戦士のようだった。
のり子はその日、なるべく早く帰れるように工夫した。
今日は娘達のためにどうしても、1分でも早く上がりたい。
のり子は淡々と仕事をこなしていった。
今日は娘たちが自分の帰宅を待っている。
先に食べてていいからと言っても絶対、食べずに待ってくれるのである。
だから約束通り、19:40頃までには帰宅したい。
のり子はつい横道にそれそうになる自分を奮い立たせて、本日終わらせるべき仕事に集中した。
18:00頃、今日の仕事が決まりそうな目途が見えてきた。
これなら終われそう。
今日のすべきところまで終わることができ、しかも約束の時間までに帰宅できそうだ。
のり子はコーヒーをガブリと飲み、そしてまたPCに向かった。
19:04タイムカードを打刻してのり子は駐車場までの砂利道を急いだ。
ごろごろとしたその感覚は今ののり子の状態に似ている。
一歩一歩、しっかりと踏まないと転びそうになる。
うわべだけ繕っていてはいけない。
一番大切なことを大事にしよう。
小雨の中、肩をすぼめて小走りしたのり子は、車の運転席にドカッと座った。
すぐにエンジンを掛け、のり子はゆっくりハンドルを右に切った。
たくさんの雨粒が窓についていた。それはのり子のわだかまりに見えた。
ワイパーでそれを払う。
これまでの邪悪な粒々が払われ、けがれのないさらっとした心になった気がした。
さぁ、我が家へ帰ろう。
我が家の玄関に着いた。
玄関に鍵を挿すのを一瞬ためらう。
まだ娘は怒っているだろうか。予定より数分しか早く着かなかったが、自分の思いは伝わるだろうか。
重厚なドアはいつも以上に重く感じられた。
すると、朝、あれほど不機嫌そうだった娘は、そんなことあった?というくらい明るくのり子を迎え入れてくれた。
そして、やはり娘たちは食べずに待ってくれていた。
ありがとう。
たくさんのお寿司
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美味しそうなケーキ
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朝、不機嫌だった娘が作ってくれた澄まし汁は特に美味しかった。
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そして、娘たちからのプレゼント。
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ありがとう。
これからも大切な人を大事にしていきたい。
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