食べたものが体を作るんだよ!!【アレの話】
食事は大事である。
なぜなら食べたもので自分の体は出来ているから。
去年の冬から鍋とグラタンばっかで栄養バランスが崩壊してそうな自分が何をほざいているのかという話ではあるが、最近そう思うきっかけがあったのだ。
それは漫画「アタマの中のアレを食べたい」を読んでいたときのこと。
この漫画を一言で表すと、『夫婦でゲテモノ食いをする漫画』なのだが、絵の柔らかなタッチも相まって抵抗感が良い感じに和らいでいるので、自分のような虫嫌いでもまだ読める。
そこに出てきたのだ。
ミルワームを食べる話が。
どんな内容かというと……
夫婦で蛇やらクモやらビントロングやらを飼いまくりな作者宅だが、ある日夫の飼うペットの餌である、ジャイアントミルワームが余っているのを発見。
妻(作者)は、これを油炒めにして食べてみることにする。
「虫なんて揚げたらだいたい美味いだろう」と。
しかし結果は、超生臭かった。
このジャイアントミルワームは床材と餌を兼用したおがくずを食べて育っていたようだが、それだとこんなことになるらしい。
作者は夫の助言を受けつつ、りんごやバナナを餌にしたジャイアントミルワームを1ヶ月かけて育て上げる。
そして再度食べると……
フルーティで爽やか!!
そう、食べ物が食べたものは、味に影響を与えるのだ。
~おわり~
なるほどなぁ……
言われてみればそりゃそうだと思いつつ、今まで考えたことがなかった。
そういえば美味いと有名な松阪牛もビール飲んでた気がする。
まあ松阪牛協議会のサイトを見たところ、ビールは牛の食欲増進のために飲ませることもあるという程度で、実際には牛をストレスなく育てたり、バランスのいい餌をあげることが大事であって、今回の話に対応させるにはちょい微妙だが。
というか、虫ときたらみなさんも薄々感づいているだろう。
その……昨今話題の、コオロギの話だ。
なかなか抵抗感がある人が多いのも頷けるコオロギ食。
自分はコオロギパウダーに謎の別名をつけてあらゆる商品に混ぜ始めたりしない限りは、食べたい人が勝手に食べていただいて結構だと思っている派ではある。
炎上しがちなコオロギ界隈ではあるが、ここで議題にしたいのは味だ。
つまりジャイアントミルワームの一件のように、コオロギにも「何を食べたか問題」は関わるのではないかというお話。
実際、Pascoが作っているコオロギパンの場合は以下のように書いてある。
このパンに使われるコオロギは、大豆やトウモロコシを餌として与えているため、味もナッツ系になるのだろう。
生産元の記事を見ると、最後にフルーツをあげたりもするらしく、やはり美味しくするには餌が大事ということがわかる。
だがコオロギの利点としてよく語られているのは、「コオロギは残飯も食べてくれるから良い」というものだ。
残飯をどうコオロギに提供するのかは不明だが、流石にナッツ系だけの残飯なんて存在しないだろうし、味が変化するであろうことは容易に想像がつく。
というかそもそもの話、
タンパク質が欲しいからコオロギを育てようと言っているわけだけど、
そのためには美味しいコオロギである必要があって、
美味しくするには大豆やトウモロコシを与える必要があり、
そもそも大豆やトウモロコシにも当然タンパク質は含まれているわけで…
じゃあもうコオロギを介さずとも、
人間が大豆とトウモロコシ食べとけば良いのでは……?
動物性と植物性でタンパク質の違いがあるのだろうと思いきや、なんだか吸収の速さの違いがあるくらいなものらしいし、ヴィーガンでもない限りは肉や魚をたまに食べる機会くらいは未来でもあるだろうから、動物系の栄養素はなんやかんや補えそうなものだ。(現代ほどとはいかずとも)
そういえば、この流れでふいに過去に読んだ高野秀行氏の「アヘン王国潜入記」を思い出した。
この本は1995年10月から翌年5月までの7ヶ月間、高野秀行氏がビルマの反政府ゲリラの支配区に住み込み、村人とケシを育てたりアヘン中毒になったりする本である。
なかなかぶっ飛んでいて最高に面白いのだが、このケシ栽培の村での生活がこれまた興味深いのだ。
この村は世間と隔絶されたような場所にあり、”日本人”という存在がそもそも村人に知られていない。当然食文化も多様性はなく、モイックという雑炊のようなものを一日3回食べる。
モイックにはたまにニワトリやネズミの肉が入るが、それも数切れ程度のもの。
しかし、村の人々はそれで十分生きている。
そういえばインカ帝国も、トウモロコシとじゃがいもが主体で、あとはどうにか高地でも生きていける動物の肉(テンジクネズミとか)で動物性のタンパク質を得ていた。
そう考えると、必死にコオロギを食べて動物性タンパクを摂る必要性があるのだろうかと疑問に思えてこなくもない。
いや繰り返すが、自分は食べたい人がコオロギ食べれば良い派なので別に一部の人がコオロギを食べることを否定はしない。
しかし本格的に食料事情がヤバくなったら、穀物をコオロギに与えるよりも、流石に人が大豆やトウモロコシを直接食べそうな気がする。
コオロギを介したら、穀物を余計に消費するし、水だって他の家畜より消費が少ないとはいえ使うことになるのだから。
だからこそ、残飯利用というお題目が重要になってくる。
ということで残飯問題に戻るのだが、ジョジョの奇妙な冒険第三部を読んだ人ならきっと知っているだろう。インドでの豚の話を。
詳しくはnoteで解説してくれている方が居たので以下の記事を見ていただくとして、豚は糞便を与えながらでも育つ優秀な家畜である。
「糞便とか汚ない!!」なんて思った人もいるだろうが、極夜で明かりの無いグリーンランドを探検した記録である「極夜行」でも、犬ぞりの犬たちが著者である角幡氏の出したものに夢中な様子が書いてある。
人間の糞便はわりと栄養が残りがちなので、豚だけでなく犬にも人気なのだ。
いやそんな人気情報はともかく、なんでも食べちゃう豚なので、当然だが残飯だって食べられる。
「コオロギ食う前にフードロス減らせや」という意見があるのはみなさんもご存知だろう。至極真っ当な話だ。
そして完璧とは言わないまでも、既に食品ゴミの再利用はされている。
神奈川県相模原市にある「小田急フードリサイクルセンター」の様子を見てきたJICAの記事を見てみよう。
記事によると、
集められた食品ゴミはそのまま豚に与えられるわけではなく、包装紙や串などのゴミを取り除いたあとに機械で粉砕し、90~100℃で殺菌。
その後に乳酸発酵させて液体にするらしい。
タンクでの発酵処理も5時間ほどで済むし、そうして出来たものにカルシウムとビタミンを加えたら、おかゆのような液体飼料の完成。
この飼料は豚のお腹に優しく、病気の発生や糞尿の悪臭まで抑えられるとのこと。
処理費用に関しても、ゴミとして焼却するよりも半分以下のコストでこの液体飼料の生産ができるという。
なんだか完璧すぎて逆に怪しいくらいだが、やはり動いている人はもう既にこういうことをやっているのだなあ……!
そんな感動を抱きつつ読んでいくと、最後の段落に何だか気になる記述が。
……マジか。
残飯無理だった。
なにやらこの施設でも法律的な縛りはきついようだ。
でも確かに野菜くずとかと違って、調理した食べ物の残飯にはどんなものが入ってるかなんてわからないしな……。
でもそう考えると、この残飯リサイクル問題はコオロギのときだけ撤廃されるとも思えない。
コオロギに残飯処理をさせよう派の人の意見も聞きたいところだ。
本当に残飯利用でコオロギの生産ができるのだろうか?
やはり世の中は単純ではない。
そしてもう自分は頭が痛くなってきたので、あとは他の人に任せよう……。
思えば自分の出身地は、かつてイナゴの佃煮が給食に出てきたという。
もちろん給食なので、基本的に全員が食べることになる。
正直、その頃に生まれてなくて本当に良かった。
そんな文化のある地域でも、虫が嫌いな自分みたいな人間は普通にいるし、食べることに抵抗があるのだ。
最近コオロギパウダーを子供に食べさせた学校が炎上していたが、あれは希望者のみ食べただけのようだし、まだ自分の学校よりマシだったんじゃないかなとすら思う。
しかし可愛い絵柄のゲテモノ食い漫画を見たのをきっかけに、思いがけず色々調べることになってしまった。
自分がコオロギを食べることはないと思うが、今後どうなっていくかは見守っていこう。
そして、未来の牛は球になるのかも期待したい。
(虫よりは培養肉がいいなぁ……)