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リゾートしらかみ◆冬の日本海列車旅「絶望と希望の300分」
《連続2051日目!》
もう、ここまでか…
ふたたび、スマホで秋田駅周辺のホテルの空き状況を調べる。
東京までの高速バスはどうだろう。
少しでも安く、早く帰る方法を見つけないと。
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JR東日本が展開している平日乗り放題きっぷ「キュンパス」
1日1万円で新幹線や特急などにも乗れる夢のきっぷを手に向かったのは、冬の東北地方だった。
事前に立てた完璧な計画をもとに順調に進んでいくと思われたのだが、架線トラブルで新幹線がストップ。大幅な予定変更を行うことになった。
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五所川原駅から乗る予定だった「リゾートしらかみ」
リゾートしらかみは、青森から秋田へ向かう観光列車。
五能線の海沿いを走り、冬の日本海を間近に望むことができる。白銀の世界を駆け抜ける非日常の列車旅ができる。
指定席(全席指定)は、1か月前の発売と同時に売り切れ。運良く入手できた切符が手元にあるのだ。
しかも、万が一のことを考えて、五所川原駅~秋田駅ではなく、青森駅~秋田駅で指定席の予約を入れていた。
まだツイている!青森駅から乗車できる!
このリゾートしらかみに乗れることが、変更を余儀なくされた旅の中での、唯一の光でもあった。
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このリゾートしらかみ。
実は、乗車を迷うような大きな懸念点があった。
それは、遅延があるかもしれないということ。
リゾートしらかみの終点が秋田駅。そこから東京へ戻るには、新幹線こまちの東京行き最終列車に乗らなくてはならない。
この乗り継ぎ時間はわずか9分。
到着が少しでも遅れると間に合わない。
キュンパスというお得なきっぷを使って旅をしているのに、秋田での宿泊や翌日の新幹線など、費用がめちゃくちゃかかってしまう。
翌日の予定にも影響が出るし、絶対にそれは避けたい。
青森駅の駅員さんに、リゾートしらかみの運行状況を聞いてみた。
秋田駅から青森駅に向かってくる「リゾートしらかみ1号」は、15分ぐらいの遅れで運行しているとのこと。
この遅れであれば、その折り返しである「リゾートしらかみ4号」の発車時刻には問題がないらしい。
ただし、五能線沿線は強風のため、遅延などもありえるかもしれないとのこと。
うーん。悩む。
遅延する可能性があるけれどリゾートしらかみに乗るべきか。それとも安全に、青森から新幹線で東京へ戻るべきなのか。
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乗ってしまった。
このタイミングを逃したら、次いつ乗れるのかわからない。
もしかしたら一生乗れないかもしれない。
だったら、今、乗車してしまおう。
秋田駅までの約5時間。長い長い列車旅が始まった。
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しかし、旅はうなくいかないもの。
いきなりつまづくことになった。
発車時刻が遅れているのだ。
やはり、青森に向かってきたリゾートしらかみが遅延してきた影響があった。
遅れてきた列車の車内清掃が行われ、そこから乗客がどんどん乗り込む。
車内の埋まり具合は6割程度。
座席予約は完売だったので、4割ぐらいの人はこの日の乗車を諦めたのかもしれない。
結局、リゾートしらかみは5分遅れで発車をした。
終点の秋田駅での乗り換え時間は9分しかない。
5分遅れということは、4分しか乗り継ぎ時間がないということになる。
本当に大丈夫なのだろうか。
不安な気持ちのまま、リゾートしらかみの旅は始まった。
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列車はゆっくりと青森駅を発った。車窓には雪化粧をした町並みが広がる。
駅の売店で買った温かいコーヒーを片手に、車窓を楽しむ。
リゾートしらかみは、座席間が広くてとても快適だ。
なにより、窓が大きく開放的だった。
車輛の全面に景色が映り、前から後ろへ景色が流れていく。
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町を越えると雪原地帯に列車は入った。
名峰岩木山をぐるりと回るように列車は進んでいく。
強風の影響もそこまでないみたいだ。
順調に途中駅をどんどん通過していく。発車時にあった不安もこのころには、ほとんどなくなっていた。
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どら焼きいかがですか~
列車内に、そんな声がこだました。
これは、リゾートしらかみで行われている「ふれあい販売」
地元でしか買えない特産品を乗客とふれあいながら販売しているらしい。
時間がなくて、あまり食べ物を持たずに乗り込んでしまったため、これは嬉しい。さっそく、りんご味のどら焼き3個入りを購入。
楽しい旅になってきた。
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長い旅なので、列車内を探索することにした。
運転席の後ろはラウンジスペースになっていて、窓側に向かって席が並んでいて、誰でも座れるようになっていた。
そして、4人掛けの個室座席もあった。
個室座席は大きなテーブルやイスもあって、くつろげそうな感じであった。
特別な旅感を感じられそう。
そうそう。
以前、ベトナムの南北鉄道で寝台列車の個室に乗ったけれど、こんな感じだった(窓はもっと小さい)
あの時は、乗車したら自分のベッドに知らないおばさんが先に寝ていて、大騒ぎになったなあ。
(その時の様子はこちらに)
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五能線を日本海に向かって、どんどん進んでいく。
土偶型の駅舎で有名な木造駅に停車。
このあたりから、雲がどんどん増えてきた。
線路わきの木々が大きく揺れているので、風もかなり強くなってきたみたいだ。
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雪がかなり積もっている鯵ヶ沢駅。
この先は、日本海に出て海岸線を南下するコースになる。
冬の日本海。
どんな風景なのだろう。胸が高鳴る。
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そして、列車は日本海へ出た。
海岸線沿いは雪が少なく、木や枯草などの原野が広がっていた。
横を走る道路に波がかかるのではと思うくらいの荒波だ。
ここでいきなり列車が減速する。
そして、車内にアナウンスが流れた。
「この先は強風のため徐行運転をします」
列車は自転車くらいのゆっくりとしたスピードで走る。
強風が行く手を阻み、旅路は想定外の展開になってしまった。
5分遅れで発車した列車が、どんどん遅れていく。
次の駅への到着時刻がどんどん遅くなっていく。
10分遅れ。
終点の秋田駅での新幹線への乗り継ぎ時間は、9分間。
完全に危険ゾーンに突入していた。
果てして間に合うのだろうか。少しぐらいの遅れなら、新幹線が待ってくれるかもしれない。
しかし、リゾートしらかみのスピードはいっこうに上がらない。
15分遅れ。
20分遅れ。
25分遅れ。
もう、ここまでか…
絶対に乗り継ぎは無理だろう。
覚悟を決めて、スマホで秋田駅周辺のホテルの空き状況を調べる。
東京までの高速バスはあるのだろうか。
車掌さんが周ってきたので聞いてみることにした。
最終の新幹線に間に合いますか。
「本来は、途中の駅で停車して観光する時間を取ってるので、それをなくせばまだ間に合うかもしれない」
その言葉の通り、途中の千畳敷駅では停車時間が短くすぐに発車をする。
このあたりからは、速度も回復。
スピードを上げて、リゾートしらかみが進むようになった。
(こちらに動画を上げています。美しい景色をぜひ見て欲しい)
https://twitter.com/tukamatter/status/1890400332997337269?s=46&t=pquGhhzVvnA3-GmyR2OmRA
雲の切れ間から後光のようにこぼれる夕日。
オレンジ色に染まる夕日を見ながらの列車旅となった。
まさに、列車旅の醍醐味というところだろう。
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深浦駅に到着。向かいには青森駅に向かうリゾートしらかみ5号。
停車時間を延ばして、運転手同士が情報交換をするとのこと。
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回復運転が始まった。
一気にスピードを上げるリゾートしらかみ。
途中駅の停車時間もかなり短い。
20分
15分
10分
面白いくらいに、遅れていた時間をどんどん取り戻していく。
がんばれ!
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夜の帳が降りる頃、秋田駅のホームに降り立った。
一時は、30分近くの遅れになり、乗り継ぎができないことを覚悟した。
しかし、スピードを回復しまさかまさかの定刻で到着。
列車の運行時刻がきっちり管理されている時代に、こんな奇跡があるのだろうか。
リゾートしらかみの運転手さんや車掌さん、運行に携わっているみなさんに感謝しかない。
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秋田駅での乗り換え時間は9分。急げ!
駅の売店で鶏めし弁当を買い込み、そのまま新幹線こまち号の最終列車に滑り乗り込む。
セーフ!
こまち号の体を座席に沈め、ようやく深く息をつく。絶望と希望が混ざり合うような300分を経てたどり着いた安堵の瞬間でもあった。
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1日1万円で新幹線や特急などにも乗れる夢のきっぷキュンパス。
その旅の中で乗ることができた、「冬のリゾートしらかみ」
美しい日本海の夕焼けと、ハラハラドキドキの300分間を一生忘れることはないだろう。
キュンパス使って青森おにぎり探し旅編
今回のリゾートしらかみ回で完結です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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