旅立ちの春
今朝、いつものように朝食の用意をした。
目玉焼きを焼く。
フライパンに卵を2つ落とし
ジッと見つめていたら
泣けて来た。
これを食べたら
息子は旅立つ。
学校に行けなくなって約5年
朝も昼も夜も
ずっと家にいた。
ずっと…
ずっと私のそばにいてくれた。
そう思ったら
涙が溢れて来た。
止まらなくなった。
昨日息子はこう言った
「早く家から出たい。ってみんな言うけど、俺はちがうなぁ。居心地良かったなぁ」
って…
ありがたかった。
居心地を悪くしてしまって
学校に行く力を奪ってしまったのは私だから、とてもありがたかった。
私が泣いたら
息子は心配する。
だから今日はこれでおしまい。
と、涙を拭いた。
2人で、いつものハムエッグ朝食を食べた。
息子はスマホを覗き込みながら食べる。これもいつもの事。
片方の耳にはワイヤレスイヤホンが入っている。
片方を外しているのは、私の声を聞くためだ。
以前の息子はイヤホンが外せなかった。外部の音から自分を守っていたのだと思う。
「今日は醤油とマヨだな」
と言いながらハムエッグにかけ、2人で何気ない会話をして笑う。
ゆっくり支度をし
家を出る時間が近づいて来た。
息子はソワソワしている。
その様子を見た旦那が
「そりゃそうだよな。」と言った。
荷物を見直す。
あれ?マンガ本が増えてる。
息子なりに、落ち着くグッズを選んでいた。
クッション
ぬいぐるみ
ウルトラマン
車に乗り込み
「しゅっぱーつ!」と元気に言ってみた。
運転手の旦那も「しゅっぱーつ!」と言った。
息子は「出発だなぁ」とふっと笑った。
車中の会話は
何一つ覚えていない。
寂しさを紛らわす為の会話だったから。
途中パーキングで早めのランチをした。
いつものように
頼んだものを「食べる?」と、お互い回して食べた。
2時間位で寮に着いた。
入寮する生徒と家族で玄関が賑わっている。
寮長さんや先輩寮生さんがお手伝いをしてくれている。
着いたらサッサと荷物を下ろし、寮母さんへご挨拶。
入寮に関して簡単な説明を聞き、
私が部屋のチェック(どこにキズがあるかなど)をした後に荷物を部屋に入れる。
その間息子は、先輩から場所の説明であちこち歩いている。
チェックシートを渡し、荷物を部屋に入れ、カーテンをつける。
その後息子が部屋に来た。
「お!なかなかいいね。壁紙とか広さとかさ」
と、嬉しそうだった。
うん。大丈夫だ。
と、安心した。
荷物を取り出し、ゴミをまとめ
「じゃ帰るね。」と言いながら
息子をぎゅーっとハグをした。
息子は手で私をトントンとした。
言葉はないけど「ありがと」が聞こえて来た。
大きくなったなぁ。
「いつでも帰って来て良いからな」
と、旦那が笑いながら言った。
息子が安心した顔で笑った。
私と旦那で
「じゃあね。」と言う。
「うん。じゃあ」
と、言う息子の声を聞いて
旦那と部屋を出た。
「大丈夫だね」と言いながら車に乗った。
寮母さんがいてくれる。
息子が笑っている。
大きな声で挨拶していた。
それだけで安心できた。
帰りの車中は
2人共、無言だった。
子どもの旅立ちは
とても嬉しい事。
でも、少しの間は…
寂しい気持ちの自分も受け止めて行こうと思う。
📦
読んで下さりありがとうございます
🍀
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?