迷える23才。何くそとこの人生生きてやる!な映画。
「マッド・メアリー」アイルランド🇮🇪
やっとEUフィルムデーズの作品について書くことができるようになりました。気づけば例年のごとく30本くらいレビューためてて、もう思い出すのも一苦労…。
このEUフィルムデーズは、日本であまり公開されることのないEU諸国の映画が集まった素敵なイベントで、何でこの催しを知ったか今では定かではないのですが、ここ数年は毎年行くようにしていて、とても楽しみなイベントのうちの一つです。
冒頭、刑務所から出所するメアリーの姿が映し出させれるところから始まる。地元の最寄駅に迎えにきた母親を彼女は軽くなじる。メアリーには「親友」のシャーリーンがいる。シャーリーンはもうすぐ結婚式を控えていて、メアリーもブライズメイドとして招待されるが、同伴者が見つからない。
この「親友」ってのが曲者だ。メアリーは、何でも言い合える「ダチ」だと思っていた。でも、そうじゃなかった。シャーリーンは、見映えや体裁ばかりを気にする、そこらへんの女と一緒になってしまっていた。いや、きっと昔からそうだったけど、メアリーは気づかずにいたのだ。
キレやすく、すぐに暴力を振るってしまうメアリー。彼女の辞書に「可愛げ」という文字はない。ずーっとそうやって生きてきて、愛想や処世術なんて知ったこっちゃない。だから、結婚相談所的なところ(どの国にもあるんだね…)で、何人もの男性を紹介されてもぜーんぜんピンとこない。てかメアリー、23才なのに、何なの、その貫禄…。取り繕ったり、嘘をつくことのできない彼女は空回りばかりしてきて、やっと自分らしくいられる人が見つかった。でも……その人は女性だった。
何の変哲も無いアイルランドの田舎町が舞台で、清々しさや明るさは一切ないこの映画。だけど様々なテーマが複雑に絡んでて、尺としては82分と短くも濃厚なストーリーに仕上がっていると感じた。
友情物語かつ同性愛がテーマでもある。シングルマザー(祖母と母の女性しかいない)家庭で育ったメアリーは、決して愛情を注がれていない訳ではないのに感情を抑えられない。家庭内は荒んだ感じはしないのに、なんでこんな子に育ったの、メアリー。ブチギレメアリーは見ていて居た堪れない。自分の友達がこんなだったら、ちょっと庇える自信はないな…。でも彼女の不器用さもわかるし、本当はいい子なのに…と同情してしまうんだよね。
てか、シャーリーン、アンタ、そんなんでいいのかよ。友達ってそんなもんなの? 自分のダンナを「イケてない」のに選んで、ブライズメイドもチヤホヤしてくれる子ばかりで囲んで。挙げ句の果てには、式で読み上げるメアリーの手紙の内容にまで口を出して、訛りも直せだと。自分は何様だよ…!
既視感ありまくりの「女子」の友情物語は、見ていて、ただただ気まずい。メアリーのシャーリーン大好きオーラもすごいけど、もう気づきなよ、彼女は「友達」なんかじゃないって!
また、メアリーとジェスの恋愛についても色々あって。二人ともものすごく戸惑っている。同性を愛したことなんてなかったから。でも二人とも自分が自分らしくいられる場所を見つけた。それを笑う人たちなんて、放っておけばいい!!
罵詈雑言や怒りを抑えることのできずにいたメアリーが、ほんの少しだけ柔らかくなれる時、それがジェスと一緒の時間だった。
迷える23才。でもまだまだ人生これから。彼女はジェスと出会って、初めて他人と向き合い、何より自分と向き合えたのかなと思う。いかに自分が独り善がりに生きてきたのかと気づけたんじゃないかな。
感想書きながら、メアリー同様、鼻息荒く、「!」を多用してしまいました。女子ならめっちゃ理解るストーリーです!
いや、ホントいい映画だったなー。こういう映画に出合えるからやめられない。
余談ですが、メアリーが行く結婚相談所に客として来ていた35才の女性の貫禄がまたスゴくて、私、向こう行ったら若く見えるよね、とか自分に言い聞かせてしまった(笑)
原題:A DATE FOR MAD MARY
2018年56本目。京都文化博物館にて。
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