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【cinema】レ・ミゼラブル

元々超メジャー映画を見ない私ですが、普段映画を見ない方や、メジャー中心に見る方にも、とにかく、しのごの言わずに見てくれ…!と思う映画に出合うことがあります。滅多にそんな機会はなく、でも今回この映画を見て、心底そう思いました。ヴィクトル・ユゴーの「レ・ミゼラブル」ではありません。あの話の現代版でもございません。

舞台はパリ郊外のモンフェルメイユ。ここはどこだと思うばかりの団地群の連なる移民だらけのいわゆる貧困地区です。実際、モンフェルメイユとは、ユゴーの話の中でも、コゼットがテナルディエ家の売春窟で虐げられている彼の地だそうで、まぁいわゆる今も昔も「行ったらアカン危ない所」です。

時は2018年、フランスがサッカーワールドカップで優勝し、人々が出自、宗教等関係なくフランス万歳と歓喜乱舞したシーンから始まります。

しかし、モンフェルメイユ。同じ移民でもアフリカ系、イスラム教徒、はたまたロマの人々、それぞれが常に一触即発の状態で、暮らしている。彼らを取り締まるのがBACという警察部隊です。そして、またこの警察官達がタチが悪い。私は最初どこのチンピラかと思いました。署に移動するまで警察官だとわからなかったし、彼らの言動は正義の域はとうに超えていて、見ていて反吐が出そうになります。

互いの利害関係を探り合いながら、ギリギリのところで「何事もなく」済んできたその地区で、アフリカ系移民のイッサという少年がロマのサーカス団のライオンの子を盗んだところから事態は一変します。

もう、この映画の面白さは見てもらわないとわからない!この圧倒的なパワーを感じてほしいです。ラストまでの疾走感、ズドンと腹にくる感じは見てもらわないと。眠たくなんか一切ならないし、難解なシーンもセリフも全くないので、騙されたと思って、映画館へGO!

互いによかれと思って発した言葉や行動が、取り返しのつかない事態を引き起こす。自分たちにとっての「正」は他人にとっては必ずしもそうではない。大人たちの思惑は、根深い憎悪や不信感によって、瞬時に崩されてしまうのです。自分たちを守ってくれていたものは、実は取るに足らない大人たちにとって都合のよいエゴでしかなかったと気づいた時、文字どおり、それは爆発し…。

こんな説明じみた感想は蛇足すぎて、もどかしい。ホンマに騙されたと思って見て!見て不満ある人は言ってきて!と言いたいです。

この映画の監督ラジ・リは、モンフェルメイユ出身で、自らが体験してきたことを基に本作を作ったそうです。

エンタメ系とは無縁の、しかし教訓めいた感じはなく、ただひたすら私たちは茫然と画面を見つめるしかない。「パラサイト 半地下の家族」は多くの映画祭で賞を総ナメにしたけど、私はパワーで言うなら絶対にこっちに軍配が上がると思います。こういう怒りややり切れなさを笑い抜きで、描ききるのも映画の真骨頂なんじゃないかなぁと。

友よ、よく覚えておけ、悪い草も悪い人間もいない。育てる者が悪いだけだ。

この言葉を噛みしめて、見終えた次第です。

因みにこれまで見た中で、多くの方に見てもらい、この映画すごいなと思ってもらえそうなのは、「アルゴ」と「手紙は憶えている」です。他にも思い出したら、また紹介します!

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