死に方 (映画「カリートの道」感想)

兄がガンで死んで、俺もガンになって、親が介護の世話になったりして、死を他人事として捉える事ができなくなった。

人は死ぬのだけど、「これ、死ぬな?」と感じてから絶命するまでの時間は短いほど良いはずだ。

有名人の訃報は「身体が悪くなってから何年くらい苦しんだか、激痛状態になってから絶命するまで何時間か、何日間か。数カ月に及ぶ場合もあるのか」などと自然に考えている。

「死に方のサンプル」として読んでる。

ここ数年で読んだやつで一番「いいなあ」と思ったのは大杉漣さんの死に方ですね。
「昨日まで普通に喋ってたのに翌朝、亡くなっていた」
最高じゃないですか。苦しんだの、長くて数時間ですよ。

「不謹慎」ですかね?誰かの訃報を読んで、そういうことを考えるのは。
でも、誰にでも訪れる、避けられないことですよ。

30代まででしたね。いや、44歳までか。死を他人事と捉えていたのは。兄の死に際を見てから他人事とは思えなくなった。

映画では人が死にますね。
特にハリウッド映画に多い銃殺、苦しむの数秒〜数分だろうからめっちゃ優しい殺し方だと思う。

「ジョン・ウィック」系の1人が無双して大人数を次々と殺していくやつも、「殺される側」として見てることがある。
ジョン・ウィックは殺しのプロらしい。でも、あんな1分間に数10人を殺すペースで撃ってるけど、
「ちゃんと殺したか?確実に絶命させたか?絶命してないとしたら後遺症がかなり残って、余生が可哀想だぞ?半身不随で生き残ったとして、それを世話する家族とか大変だぞ?」
みたいなことを考える。

ハリウッド映画って基本的に「死ねなくて、後遺症が残って、カタワとして悲惨な余生を送ってる人」を描かないよね。


去年、20代の頃に見て「そうでもないなあ」と思った「カリートの道」を再見した。アレ「スカーフェイス」と比べてしまうでしょ?

でも50歳過ぎて再見して「なんてイイ映画なんだ…」と思った。

「カリートの道」、「めっちゃカッコイイ人(アル・パチーノ)がひたすらカッコ悪いことをやる」映画なんですよ。

アル・パチーノが出所して「レンタカー屋をやる」と言い始めた時点でカッコ悪さが炸裂。元麻薬王がレンタカー屋?うまく行くわけないでしょ。
でも、顔も仕草もカッコイイんよね。アル・パチーノだから。

アル・パチーノが老いてダメ人間になってるから、ダメ人間の元にはダメ人間しか集まらない。
その象徴がショーン・ペンですね。
使ったらいかんカネを「使っちゃった!テヘッ!」と笑って誤魔化すテヘペロ仕草、アレが「カリートの道」の象徴ですよ。

序盤でアル・パチーノの昔の仲間がやって来る。

おそらく誰かから司令を受けてアル・パチーノを殺しに来た人。
過去の抗争かなんかで銃で撃たれたけど死ねず、半身不随で車椅子生活。排泄もできずオムツを履いてる。

殺し屋が、オムツ履いてんの。
ハリウッド映画、こういうの少ないよね。

こんなの、若い頃に見たら「辛気臭えなあ」と思うはず。
でも俺は大腸ガンの手術を受けて腸を20cm切り取られた関係で、手術前のようにウンコできない身体になった。毎日、ウンコに2〜3時間はかけてるし、外出する時は紙オムツを履いてる。おそらく死ぬまで、元の身体には戻れない。

他人事ではなくなったよね。

遊ぶどころか歩行もできない。セックスもできない。この後、この人はアル・パチーノに言うんですよ。
「殺してくれ」と。アル・パチーノに頼む。

めっちゃ分かるし、染みる。

その後もアル・パチーノは何やってもダメ。最後はナメてた若い人に殺される。

でもね。デ・パルマは優しいんですよ。
「You Are So Beautiful」が流れるし。アレはアル・パチーノが惚れた女が美しいんじゃなくて、アル・パチーノの死に様が美しい。
俺はそう感じた。
アル・パチーノが絶命するまで数秒だったと思うし。
デ・パルマ、優しいよ。
終盤のエスカレーターなどを使った銃撃戦、アレ、要らないと思った。この映画には。
でもあの銃撃戦はデ・パルマの観客へのサービスだろうね。
そこもデ・パルマ、優しいなあと思った。

ハードボイルドだ、男のプライドだ、ブロマンスだ、
そういうのって「カッコイイ」じゃん。
そういうカッコイイ世界にのめり込むのも分かる。俺もずっとそうだったし。
でも俺はもう、紙オムツ履くし、普通にウンコできない身体になっちゃったから。

上辺だけのカッコイイ映画に乗れなくなった。

ただ、そういう映画は若くて元気な人が楽しめばいいと思うから否定はしないよ。


今日、母親に介護の関係で用事があって電話した。
そこで初めて、母のおばあちゃん、俺の祖祖母にあたる人がどういう死に方をしたのか、その話を聞いた。

祖祖母は87歳まで畑仕事をしてたらしい。その休憩中、仲間のオバチャンから「まんじゅう食べる?」と聞かれて「うん」と答えてまんじゅうを手にした。祖祖母の仲間が「お茶を持ってくるね」と席を外し戻ってくると、
祖祖母はまんじゅうを握ったまま、亡くなっていた。畑の中で。

めっちゃイイ死に方やん。
苦しんだとして数分でしょ。

そんな死に方ができたらなあ。87歳まで生きなくていいけど。


…と、ここまで書いて、「その話、ホントか?」と思う。

祖祖母ということは、あの、極悪非道だった祖母の母親だぞ?祖祖母の話は今日、初めて聞いたが、祖祖母も極悪非道だったのでは?

極悪非道な人間が、そんなイイ死に方できる?

解答
・その人の人間性と、死に方には医学的な関係は有りません。

論破。

ポックリ、イイなあ。
(2245文字)

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