阿久悠 最後のヒット曲 / 時代おくれ
阿久悠(あく ゆう)は1970年代にめっちゃ売れた作詞家。
歌謡曲からアニソンまで5000曲以上の歌詞を書いてるが、
有名なのは沢田研二、ピンクレディーあたりだろうか。
え…沢田研二を…知ら……ない?
続けます。
俺はウイキペディアおじさんなのでウイキペディアに書いてることを書くのですが、
「歴代 作詞家 オリコン・シングル総売上ランキング」が載ってたのだけど、
1位 - 秋元康…10,022.6万枚
2位 - 阿久悠…6,834.0万枚
3位 - 松本隆…4,985.4万枚
4位 - 小室哲哉…4,229.7万枚
5位 - つんく♂…3,796.1万枚
だそうで、1位の人はまあ、こういう「枚数」みたいなランキングだと…同じ人が同じCDを何枚も買…
(要らんことは言わない訓練)
1977年、オリコンのシングルチャート首位を「阿久悠が歌詞を書いた曲が半年間独占。半年間ずっと阿久悠の歌が首位」
という作詞家としては未だに破られていない記録も持っているそうです。(沢田研二「勝手にしやがれ」からピンクレディー「ウォンテッド」まで阿久悠ソングが半年間1位)
70年代に作詞家として一番売れて、作詞家は「言葉を生業とする職業」なので、流行歌の歌詞を通じて1つの時代を作ったと思うんですよ。
そんな阿久悠も80年代に入ると失速します。
阿久悠の才能が枯れ果てた
わけではなく、
時代が変わった
からです。
具体的には中島みゆきや松任谷由実、山下達郎や桑田佳祐など「自分で作詞作曲して自分で歌う人」が中心になってきたし、
若い世代の職業作詞家、松本隆や秋元康が出てきたからです。
時代を作った人が時代遅れになってしまった。
80年代に入って売れなくなった作詞家・阿久悠は
「じゃあもう俺はこの辺で…」
と、1986年に1つの歌詞を残しています。
阿久悠は当時49歳。
河島英五が歌った「時代おくれ」という曲です。(作曲は森田公一)
河島英五って誰?…と思うはずなので、えっと、
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「飲んで飲んで飲まれて飲んでの歌」を歌ってた人、です。
この曲は飲み会などで主にオッサンなどが必ず歌うので、聴いたことが…
…ない?
はい。
「酒と泪と男と女」は河島英五が作詞作曲をしてるので、
長い間、河島英五の「時代おくれ」も河島英五が作詞作曲したと思い込んでたのだけど、
なんと、作詞は阿久悠。
それも最後の阿久悠。
ということを亀梨和也が阿久悠を演じたドラマ(2017年 24時間テレビ内のドラマ)で知りました。
最近、時代の変わり方がえげつないじゃないですか。
いや、変わるべきなんですよ。
悪い膿は出し切ってリセットすべき。
それは良いことなのですが、
「えげつない速さで変わっている」と54歳の俺は感じてて、その理由としては2つ、
1. 加齢により、時間の体感速度がめっちゃ速くなってる(20代までの1ヶ月が54歳の1年くらい速い)。
2. 日本のほとんどの人にスマホが行き渡ったため、一般人の意見も反映されている。
なのだと思うけど、とにかくすんごい速さで時代が変わっている。
俺から見えている世界、フジテレビのあれこれだけでも。
これに「俺から見えてない世界(ユーチューバーとかインフルエンサーとか、最新のAIとか)」も加えると、
マジで何が何だか分からん。
でも、一応、生きてはいるので
「知らん!」と世の流れを拒否もしない。
ただ、一歩も二歩も引いて見ておく。意見はしない。
という感じでしょうか。
その感じを、歌っているのです。
阿久悠最後のヒット曲、「時代おくれ」は。
この曲が、染みて染みて…
歌詞の一部を書き出します。
妬まぬように焦らぬように
飾った世界に流されず
好きな誰かを思い続ける
時代おくれの男になりたい
歌詞に「男」「女」が入るのは昭和の流行歌のデフォルトなので、「主語がデカい」と拒否せず、
男を「ひと」くらいに置き換えてください。
あと、二番の歌詞を書き出すと
不器用だけれど しらけずに
純粋だけど 野暮じゃなく
上手なお酒を飲みながら
1年一度酔っ払う
昔の友には優しくて
変わらぬ友と信じこみ
あれこれ仕事も あるくせに
自分のことは後にする
アァ…イイねぇ…
イイねェ……
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「目立たぬように はしゃがぬように
似合わぬことは 無理をせず」
ここが染みるねェ……
この曲の発表は1986年。
バブル景気と共に「トレンド」という言葉が生まれて皆で流行を追っていた頃。
この「時代おくれ」は全く売れず。
そして昭和が終わり平成になった1991年。
この曲をNHKの音楽番組で河島英五が歌ったところ、レコード会社に
「あの、時代おくれって曲のCDが売ってないじゃないか」等の問い合わせが殺到したため、シングルCDとして再発売してヒット。
その年の紅白で河島英五がこの曲を歌っています。
5年経って、バブルが崩壊して、
後から気付いたのかもしれません。
阿久悠の置き手紙に。
曲としてもとてもイイですね。
河島英五の声もイイ。
「飲んで飲んで飲まれて飲んでの歌」の、1975年頃の映像もあったので貼っておきます。
イイ声です。
この曲の「男」「女」を「ひと」と置き換えるのはムリだし、置き換える必要も、本来は無いのではないでしょうか……