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涙の味

泣きながら食べる食事。
その味を
大多数の人が知っている事なのだろうか?

私は、いただきます!と
物を口に入れたら
悔しくて、悲しくて、
涙の出やすい子供だった。

あの何とも言えない
涙の味がキライだった。。


時は過ぎ、最後に食べたのはもう
随分と昔になるが、
今回は、

成人して最後の
涙の味について綴らせて頂きます。



行きつけのパブで朝まで
遊び惚けていた頃の事

マスターは少し年上で、
若くて無口でお酒を飲まない人だ

私は仕事を終えては独りそのパブへ


行けばもう見知った顔
適当に相席で飲み交わすパーティー

そんな中、チンピラも居て、
少し興味深い話しを聞いたんだ

「大阪から入れ墨彫り師が来る」
私も話しに乗っかって足首に入れる事にした

予定の日、台風で飛行機が動かず延期になった
そしていつものようにパブで飲んだ

マスターが帰りに店の外までついて来て
「明日16時に会えないかな?
 お腹空かして来てね。」
とか言ってきた

珍しい事もあるものだ
ろくに話しもした事ないのに。。


待ち合わせ場所に行くとマスターはふいに
「よくわからんけど最近、悪い連中と仲良くしてるね。
  今日は俺の友達がやってる居酒屋に招待するよ。」


営業前の居酒屋に入って大将に相槌をしてから
奥の間に上がるように指示された

そこにはテーブルいっぱいの御馳走が置いてあった

マスターは座敷に上がる様子が無いので
どうして?と言おうとしたら

「ここの料理は手作りにこだわってて美味しいんだ
  今、自分がどういう事をしようとしているか
  親の顔思い出してよく噛んでよく考えろよ。」
それだけ言い残して会計して出て行った

困惑しながらも、せっかくの料理
いただきます!と食べた
感動ものの美味しさだった
そして
幾度目かに口に入れた時に涙の味がした

目からは涙が溢れていた。。
それからは感動の味は分からなくなり
それでも食べ続けたんだ

謝罪と感謝と幸福の味がした




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