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「雑草」って何だろう?
今回は農学部応用生物科学科の岩上先生にインタビューしました。
とても気さくな先生で、ご自身の人生経験や、研究に対する思いについて、オープンに語っていただきました!ぜひご覧ください。
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お名前:岩上哲史先生
所属学科:農学部応用生物科学科
研究室:生物制御化学研究室
趣味:研究かな?
雑草って何だろう?
ー先生が研究の道に進んだきっかけはありますか?
実は、あまり積極的に選んだわけではないんです。会社員になると社会の歯車に組み込まれてしまう、というようなイメージを当時の自分は持っていて、選ぶことはできませんでした。サッカーが好きだったんですけど、選手になるほど才能がなかったし、Mr.Childrenも好きだったんですけど、ミスチルになれるはずもなく(笑)。となると、最後に残ったのは研究しかなかったんですね。研究は自由があって楽しいとは思いましたが、研究者としてやっていく自信は全くなく、迷った末での選択でした。
ーそうだったんですね。では、先生の研究への原動力は何ですか?
今目の前にある謎が面白いし、その謎が解けたら面白いなっていうのが自分を動かしている気がしますね。僕が今すごく面白いと感じているのは、「雑草って何だろう?」っていうところです。
ーと言いますと?
雑草って、人間が引き起こした攪乱環境に適応できる植物の事を言うんです。人間が農耕を始めたことによってできた環境の中で、雑草は少しずつ自分を変えてきた。その結果、今の雑草があるんですね。だから、雑草が人間との関わり合いの中で、どうやって自分自身を変えながら農耕地に適応してきたのかを知りたいと思っています。
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誰もやっていない研究をしたい!
ーなぜ研究テーマに雑草を選んだのですか?
僕はメインストリーム、いわゆる王道が嫌でした。みんながやっているような研究はやりたくなかったんです。それより研究人口が少なくて、分からないことが多い分野のほうが、自由に色々なことができていいんじゃないかと思ったんですね。
ーそれで雑草というテーマが視野に入ってきたというわけですね。
はい。研究人口が少ない分野をテーマにしようと思った時点で、雑草がターゲットに入ってきたんです。僕は研究者がたくさんいて、既に分かっていることがたくさんある中でというよりは、未知のことが多くて、そこを自分で切り開いていく方が楽しいと思ったんです。
ーそうだったんですね。では、岩上先生が思う研究の面白さとは何ですか?
自由というか、何をやってもいいというところが研究の良さだと思っています。世の中に分からないことって無限にあるじゃないですか。その中で、自分が、これが面白そう、これをやったら何かすごいことが分かるかもしれないと思うことを、選んで、解き明かしていくんですよね。特に大学での研究は、自分の内発的な動機に基づいて好きなことができるので、僕にとってはそこがすごく魅力的です。
ー研究のモチベーションは何ですか?
新しい発見をすることで、誰かを喜ばせたいとか、驚かせたいという気持ちですね。あとは、発見を周りの人とシェアして、次はこんな疑問が出てくるな、これは他の分野にも応用できるんじゃないか、という議論をするのがすごく楽しくて、それも小さいモチベーションです。
僕は、研究をやることで、世界を新しい見方で見たいんです。何か新しい発見があると、その発見をベースに、些細なことだったりしますが、これまでとは違った視点で物事をとらえることが出来るんです。これは大きなモチベーションになっている気がします。
結果が出てきて楽しいっていうのも当然あります。でも、むしろ実験を始める前に、「それまでの知見とか自分の結果を総合すると、こんなことが言えてしまうんじゃないか」とか、「それを示すにはどんな戦略で攻めればいいか」とか、そういうことを考えている時間がすごく楽しいです。研究を始める前の妄想の時間が、実験をしてデータを得られた時よりも、楽しかったりしますね。
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回り道をしてもいい
─最後に、先生から高校生へのメッセージをお願いします。
好きなものを見つけてそれに熱中してください、というメッセージはよくあると思います。でも、高校生だった頃の僕は、それが見つからなくて、しんどかった。そうやって言われることがプレッシャーでした。
だからそういう人向けに、僕は言いたいと思っていて。自分に自信がないとか、やりたいことが分からないとか、そういう悩みを持っている人も少なからずいるはずだと思っています。でも、迷ったり、不安だったり、そういう気持ちはその人を作っていく上で重要な要素だと思うんですね。そういう中で出会った、楽しいこととか、嬉しいこととか、自分の心が動いたこととか、そういうことを大事にして生きていってもらえるといいなと思います。
ー迷っている時間も無駄ではないということですね。
そうですね。例えば僕は、大学を卒業するまでに、他の人よりも時間がかかってしまったんです。それって一見回り道みたいに見えるじゃないですか。でも、回り道をしないと、そこに何があるかは分からないんですよ。寄り道をすることで出会えること、分かることもあると思います。日本には既定路線を進むことが安心とされる雰囲気もありますが、たとえ寄り道になったとしても、自分らしい生き方をすることも大切だと思います。いろんな生き方があることを忘れないでほしいです。
文章・インタビュアー:農学部応用生物科学科1年 ねこ
インタビュー日時: 2024年11月6日