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人と動物が共存できる未来を目指して
今回は農学部生物生産学科の新村毅先生にインタビューしました。
研究の魅力から人と動物の共生についてまで盛り沢山な内容になっています。ぜひご覧ください!
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お名前:新村毅先生
所属学科:農学部生物生産学科
研究室:畜産学研究室
研究テーマ選び
―先生は動物福祉について研究されていますが、そもそも動物福祉とは何ですか。
動物福祉は国語的に言うと動物の幸せのことです。
動物の立場に立って動物の状態を理解して、彼らが本当に幸せなのか、幸せじゃないのかっていうのを判断していく。
そして、動物の状態をより良くしていくって感じですかね。
―なぜ動物福祉について研究しようと思ったのですか。
子供の時から動物が好きで、動物のために何かできるような仕事をしたかったからです。
大学に入る前に動物を使った研究を動物に返すことができる研究テーマを調べていたら動物福祉に行き当たったんです。
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動物と会話
―今の研究に至った経緯や、なぜ研究の道を選んだのか教えていただけますか。
大学で入りたかった研究室に入れて、動物福祉に関する研究をニワトリで始めたんだけど、それがすごく面白かったんですよね。
今やっていることと似てるんですけど、まずニワトリの飼い方を自分で考えて、環境を作る。その時ってお金がなかったから自分でごみ箱とかから色んなもの引っ張ってきて自作しました。
色々と飼い方を変えて、そこにニワトリを入れてニワトリの反応からその環境が良いのか悪いのかを判断していくのがすごく楽しかったんです。悪そうな環境があれば改善して、動物の行動が変わって良い環境になるみたいな。
それが動物と会話しているかのように感じたんだよね。
―動物と会話、ですか。
動物のことを理解して、より良い環境を提供すればたしかに彼らがハッピーになる。そういうあたかも動物と会話している様な研究っていうのが、すごく楽しかったんです。
それで研究にのめり込みましたね。
その時って狂ったように研究して鶏舎に泊まり込んだりもしていました。(笑)
ゲームとかいろんな遊びをしてきたけど、それよりも研究の方が圧倒的に面白くて、絶対に研究者になるんだっていう所に行きついたっていう感じですね。
―鶏舎に泊まり込む……。相当研究にのめり込んでいたんですね。
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現在の研究
―現在の先生の研究内容について教えていただけますでしょうか。
うちの研究室が目指している研究のビジョンとしては、一言でいうとワンウェルフェア(One Welfare) という言葉に尽きます。
―ワンウェルフェアとは何ですか?
まずメインとなるのは動物の健康を確保することです。私たちの研究で、動物が健康になることで、畜産物の質が良くなり、それを食べる人の健康も良くなっていくことが分かっています。
また、畜産における動物への負荷が減ると、地球への負荷も減るということも分かっているので、それらを総合して動物の健康と人の健康、地球の健康を同時に満たすような研究を目指しています。
それがワンウェルフェアであり、私たちの研究ビジョンでもあります。
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―具体的にはどのようなことをやられていますか。
人と動物の関係性を過去から現在、未来まで想像していくことです。
―もう少し詳しくお聞きしてもいいですか。
まず過去に関しては、元々攻撃的だった野生動物がいつ人に近づいて家畜になったのか、それがいつどのように起こったのかをゲノム解析を行うことで解明しようとしています。
次に現在に関しては、動物福祉が実際にどういった付加価値を畜産物にもたらすのか、ということを解析しています。
未来は、動物の行動をロボットとかで再現、代替していくなど、人と動物の新しい関係を作れるといいよねっていうことをしています。
これらの過去、現在、未来の三つの柱でワンウェルフェアを実現していくことを研究としてやっています。
―ゲノム解析からロボット開発まですごく幅広い研究ですね。
そうなんですよ。だから説明が難しいんですよね。(笑)
とにかく動物福祉をやっているっていうことになるはずです。
研究を通した将来の展望
―研究における今後の展望や実現したい未来像を教えてください。
最終的にはありきたりな言葉だけど、地球で生きている生き物がお互いにより良く共生できるといいよなっていう所ですね。
その中の一つの答えがワンウェルフェアかなって思っています。それはもちろん植物とか土とか色んな要素があると思うけど、自分はその中でも特に動物でワンウェルフェアっていうのを考えながら、地球上で人だけでなくて動物全体が共生できるような未来が実現できれば自分は死んでもいいですね。
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高校生へのメッセージ
―最後に高校生へのメッセージをお願いします。
自分の好きな言葉で ”Be You” 「自分らしくあれ」っていう言葉をいつも若い人には言っています。
何か煌びやかな人とかになりたいって思うのもいい。だけどそれよりも、どういう時に自分の胸が熱くなるのかとか、自分がやりたいものって何だろう、自分は何者なんだろうっていうのを自分に問いかけて欲しい。
それで気づく情熱に従って夢を描いて、その夢を実現するために並々ならぬ情熱で邁進していって欲しいっていう思いが強いです。
そのために、まず自分は何者かって言うのを是非自分に問いかけて、大きな夢を持ってほしいということを伝えたいですね。
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文章:まえかわ
インタビュー日時:2021年08月05日
インタビュアー:竹中夏史
記事再編集日時:2023年07月11日
※インタビューは感染症に配慮して行っております。