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海をあげる/上間陽子 感想

ー「この海をひとりで抱えることはもうできない。だからあなたに海をあげる。」

著者である上間先生は東京、沖縄で未成年少女の支援・調査を行いその後性暴力や若年出産をテーマに研究・調査をされている方である。
本書はそんな上間先生が自身が沖縄で生活する中で接する様々な問題を書いたエッセイである。

本書の中では沖縄の基地問題がメインで取り上げられている。一般的な書籍や記事では問題そのものに焦点が当てられ、そこに怒りや悲しみが向けられている。しかしこのエッセイで書かれるエピソードの数々からは基地と生活がどれほどつながったものであるかが非常にリアルに感じられる。

そして、本書を通じて私が感じたのは「静けさ」だ。表紙デザインと同じく青い色がどこまでも広がっている、まるで底のない海のような、青い炎のような静けさ。
でも、そこには確かに怒りや悲しみがある。怒りと聞いてイメージする色は赤だが、赤い炎より青い炎の方が温度が高いらしい。静かに見えるからといって何も問題は無くならないし、怒りが解決するわけでもない。
沖縄と聞くと綺麗なビーチやリゾートを想像するけれど、その景色の中の青い海を見るたびにこのエッセイとそこに潜んだ怒りの感情が思い浮かんでくるようになりそうだ。

渡された海を自分ごととして考えられるか、考えているのかを今一度自分に問い直したいと思う。

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