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そしてお別れの時がきた④

ひょんなことから(就職先がなかったというヒョン)
ウィーンに留学(逃亡)しようと決めたわたし。

渡欧半年にして母と、母の姉、弟の嫁とその娘の
4人が遊びにくることになった。
大学を卒業して3月の飛行機で来たわたし。
観光客には最高の8月に飛んできた母たち。
こう数えてみると…半年も経たない間に飛んできたんだ。
飛んで火に入る夏の虫。

色々思い出して来た。※20年前の話なので。
ヨーロッパも学校は9月からだから
入学してしまう前においで、ってことだった。
いわゆる"入試前"の大切な時期に。
覚えたてのウィーン語で観光案内をしていた。
身内相手に…

まだ何もわからない土地だったけど
共に地球の歩き方をみて回っていたけど
「おいしいものが売っているスーパー」だけには
自信があったので、最後の観光地に抜擢された。

Julius meinl ユリウス マインル。
店内は絨毯、エレベーターは透明
螺旋階段もあり高級そのもの。

そらぁね、日本よりは安いし(EUものを買うには)
買いたいのはわかる。でもカートをみれば
持って帰れんのか?くらい買い込むおばさんたち。
まぁいっか、ウィーンに貢献。
わたしも食べたかったお菓子いれとこ。
みたいな。
高い順にカゴに入れる。
母、秋子はというと…

「これは〇〇にお土産」
「これは〇〇のお土産の予備」
「これは〇〇さんが気に入らんかった時用」
「これは〇〇さんちのお供え用」
「これは〇〇さんちの食べてもらう用」
「そうや〇〇さんち子どもさん来てるかも!用」
だいたいお土産を買うべき人の30倍くらい買う。

「あんたらウィーンに観光に来て何しとん?」
と聞くと、すかさず振り返りひとこと。
「ひとつ言うとくけどな
お母さんウィーンに観光に来たんじゃないよ
ウィーンにお土産買いに来たんやで!」
この名言だけは20年の時を経て深く心に刻まれる。

それなら納得。そっか、お土産買いに来たのね。

すんなり納得した私は
なんだか自分のお菓子をカゴにいれたことを
少しだけ恥じた。気がした。

彼女が楽しかった旅行の話を聞いてもらう相手に
心ばかりの、旅行の思い出を好きなだけ買って
何が悪い。とおもえた。

大荷物!
きっとスーツケースに入らない
(そしたら置いてってね)くらいでよかった。

ヨーロッパならではのテラス席に
アコーディオンやギターを弾くチップ稼ぎのおっさん
自家製のワインやお肉がおいしいホイリゲで
夕飯を済ませて帰宅。
とうとうお別れの時が来た。

荷作りをして、またワインを開けて
荷作りをし直して、喉が渇いてビール
この賑やかなおばさんたちと過ごす
ウィーンの夜はこれできっと最後になる

母の姉と弟の嫁はお小遣いをくれた。
異国でがんばる?つもりの姪っ子に
100ATS(オーストリアシリング)が5枚入っていた。
だいたい5万円。 

そんなことせんでえーわーと母は言う。
「素直に受け取らなあかん気持ちもあるんや」
と娘は言う。
叔父たちからのミッションだったには違いない。
かわいい姪っ子にお小遣いを。

「楽しい旅をさせてもらいましたから」
と、事あるごとに丁寧言葉になる叔母たち。
よけー怖いわ。
2週間近くいて、大笑いしない日はなかった。
まぁウィーンじゃなくてもですが、我が家系。

翌朝、空港いきの電車に乗る。
この時はもうバスより電車がお得だと
私くらいにはウィーンの歩き方を把握していた
おばさんたち。
※行きのバスでの市内は①参照

(記事の貼り付け方がわからない)

空港についたら涙ぐむ叔母→母の姉。
私の大好きなよく笑う叔母が泣いていた
ことに私は少し笑った。
そして泣けて来た。

母、秋子はずっと笑っていた。
お父さんに何から話そかな〜と
次なる楽しみをもう見つけたらしい。
おかーさんが泣いてよ!とおもう。
でもそしたらきっと私は号泣していた。

しゃべらない従姉妹のマイコはまだしゃべらない。
※美人いとこの番外編参照※
その母(叔父嫁)は、免税店の案内を見ている。
血のつながりがここで出た!笑

ほんとにありがとう、を何万回言ってくれただろう
まだ友達もまばらなウィーンで
あなたたちが来てくれて私は心から楽しかったし
本当にお別れが辛かった。家族なのに。

なかなか出国看板をくぐらない。
時間ギリギリになって、歩きはじめる。
ずーっと涙目で手を振っている
わたしは涙をこらえて手を振っている
早く向こう行ってくれないと、泣けないと。

世界一のこの12日間をたのしくしたい!と
私はものすごくウィーンについて勉強した。
し、言葉もものすごく上達した。心配かけられまいと。
その後には入試が控えていると。
そして世界一の12日間がおわって
出国して行ったのを見届けると
滝のように涙が溢れかえってきた。
淋しくて仕方なかった。ここからひとり。

わんわん泣きながら電車で帰って家に着くと
おかーさんがこの旅中に買ってくれた家具や
お菓子や、洋服やベッドカバーがあった。
すごく欲しいとプレゼンして買ってもらった数々は
どれも要らなくなってた。
昨日カゴに入れた恋焦がれた高級菓子も
何のなぐさめにもならなかった。

あーおかあさぁぁああん。あきこぉぉおお〜。
飛んでしまった彼女の心はもうお父さん。

ふと見たら封筒がある。
お金がたくさん入っている。
おかーさんは、なにも言わずに娘にたくさんのお金を
(笑えるのは日本円ということ)
両替してでも使わなきゃいけないときのために。
また泣いた。

のに、無事着きました〜!のメールとともに。
今お父さんの運転で関空から帰っています。
の文面とともに。

忘れた封筒は私のなので
持って帰ってくるか、送金してね。って♡
さらに泣いた。
泣いて、笑って、元気が出た。

来てくれてありがとう♡

思い出ついでに大好きなユリウスの店内をすこし。

お肉コーナーはヨーロッパ各地から!
とくにオーストリアやドイツはたっくさん!

野菜だって新鮮なのが山もり!

パンがおいしいウィーンはジャムも豊富!

レッドカーペットのいざない。

これは楽しめないわけないわ。

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