4スタンス理論の学び方①
人体の動作特性を4タイプに分類する4スタンス理論(骨理学)。
初学者のなかでも熱心に勉強する人ほど陥りやすいワナがあります。
それはタイプ別の知識をおぼえることが大切だとカン違いしてしまうことです。これは4スタンス理論の「学び方を知らない」から起こります。
たとえば算数を知らないまま数学の勉強ができるでしょうか。
基本問題を解けないのに応用問題が解けるようになるでしょうか。
どんなにいい理論体系も(むしろ効果が大きい理論体系こそ)学び方を間違えるとうまくいきません。
どんなふうに勉強すると効率的に4スタンス理論を身に付けられるのでしょうか。4スタンス理論の初学者がハマる3つのパターンを書いてみます。
今回はパターン1を解説します。
パターン1:5ポイント理論を飛ばしてしまう
圧倒的にいちばん大きな問題です。
骨理学には基礎と応用があります。
基礎は5ポイント理論
(全員に当てはまる共通事項)、
応用は4スタンス理論
(タイプ別に分かれる個性)です。
両方をまとめて「4スタンス理論」と呼ぶこともおおいですが実際には分かれています。
ネットやテレビでは4スタンスのタイプ別がすごくキャッチーに出てきます。しかしタイプ別メソッドや具体的なノウハウばかりに注目してはいけません。基礎・基本(5ポイント理論)が身につかないからです。
5ポイント理論を知らないと次のような問題が起こります。
順番に解説します。
問題点1:一生懸命がんばってもできない
じつは4スタンスのタイプ別のうごきには前提となる条件があります。
それは、本来の身体(軸が整ってクセや作りこみがない)の状態ときにタイプが自然に現れる、という点です。
身体の軸やバランスが崩れたままだと、いくらがんばっても本来のタイプのうごきは出ません。
軸を整えて、身体の変なクセや作りこみを取り去るのが5ポイント理論の役割です。5ポイント理論で軸を整えると、自然と4スタンスのタイプ別のうごきが出てきます。
軸がないのにタイプ別ばかり試すのは「小手先」なのでほとんど役に立ちません。
ちなみに5ポイント理論とは一言でいえば「正しく立つ・しゃがむをしてから動作する」ことです。
5ポイント理論はこちらの記事をごらんください。
問題点2:再現性を高められない
たくさん演奏会や試合にでると「思っていたよりうまくいった」経験はありませんか?しかし、その成功を再現する(=別の場所でもう一度成功させる)ことはできますか?
ゾーンやフローと呼ばれる状態ではすごく自然でラクに身体がうごきますが、そのときにどうやって動いていたか、あまり思い出せないと思います。
なぜならタイプ本来のうごきが自然に出ていたからです。
成功を再現するときに必要なのはタイプごとの枝葉末節のうごき方ではありません。根幹となる骨格全体の軸を整える(5ポイント理論をまもる)ことです。
5ポイント理論をまもるための手段として「ルーティン」が知られています。
一流選手が自分のルーティンを持つのは(骨理学を知らなくても)正しく立ち整えることの大切さを身体知として気付いているからです。
私は生徒のルーティンをデザインする依頼をよく受けますが、5ポイント理論をもとにその人の個性を反映した整え方を伝えています。
結果の再現性に必要なのは動きの再現性ではなく準備の再現性です。
問題点3:変なクセがついて成長がむしろ遅くなる
軸がないままでタイプ別をやると、表面的なカタチをマネするだけになります。
これは本来の動きではないので、新たなクセや作りこみを足すことになります。骨格全体の連動性や協応がない小手先のうごきだからです。
クセや作りこみがなくなったときに最後に残るのが4スタンス理論のタイプ別動作です。あくまで足し算ではなく引き算と考えてください。
問題点4:タイプを間違って判断してしまう
先に厳しいことを言います。
無資格者が自己診断したり他人をタイプ診断すると正答率は20%程度(マスター級トレーナーで元世界チャンプのパワーリフターである三土手大介氏談)と言います。
タイプは4つしかないので、確率的には当てずっぽうでも25%は当たるはずです。
なのに無資格者の診断は当てずっぽうより正答率が悪いというのです。
たしかに私の受講者でも同様に自己診断の正答率は20~30%程度だと感じます。
これは問題点1とリンクしています。
軸が整う前やバランスが崩れているときは、本来のうごきが出なくなります。
ネットや書籍の診断方法では被験者に力を入れてもらったり動いてもらう必要があるので、軸が崩れているとタイプ違いの動きになり、むしろ正答率が下がってしまいます。
リポーズエクササイズで5ポイントを整えてから診断すると少しは当たりやすくなります。書籍にはこの前提も載っているのですが、読み飛ばしてしまう人も多いようです。
ちなみにマスター級以上の公認トレーナーは動きで診断しません。
寝転んで力を抜いてもらい、骨格全体を整えてから骨を押したり引いたりしてタイプ診断します。専門的な技術が必要なのでちゃんとタイプを知りたい方はお近くの公認トレーナーか廣戸道場をおすすめします。
問題点5:人を育てることができない
5ポイント理論を飛ばして4スタンスのタイプ別に進んでもあまり効果が出ないのは指導でも同じです。
4スタンス理論を知った指導者がやりがちなのは、生徒にタイプ別のうごきをさせようとすることです。
4スタンスは自分本来の個性を自由に発揮するための理論です。
なのに「A1タイプだからこうしなさい」などと強制すると、生徒は「しなければならない」という考え方になります。
これでは個性を活かすどころか従来の押し付け指導と変わりません。
そもそもタイプは無意識に出るものなので意識している時点で効果も小さいです。
また、Aタイプは手首が可動ポイントだから「手首を動かせ」はよくある間違った指導です。この言い方はむしろBタイプのうごきになるのでケガにつながります。
リポーズなどの軸を整えるエクササイズをちゃんとやるだけで個性が見えてきます。まずは5ポイント理論から指導に取り入れましょう。
まとめ
今回は4スタンス理論を学ぶ人がおちいりがちな「5ポイント理論をとばしてしまう」問題について紹介しました。
なにごとも基礎・基本の上に応用がのっかります。
最初の導入としてタイプ別は非常におもしろいですし、きちんとした公認トレーナーに習うとタイプ別は大きな効果が出てしまうのですが、自分で学ぶのであれば基本に立ち返って5ポイント理論を極める方が有用です。
次回は5ポイント理論を学んだ先にある落とし穴について紹介します。