【昭和歌謡名曲集18】プカプカ 西岡恭蔵
西岡恭蔵が作ってデュランⅡが歌った。西岡恭蔵も歌った。憂歌団も歌った。高田渡も泉谷しげるもなぎら健壱も桑田佳祐も福山雅治も吉川晃司も原田芳雄も歌った。男の歌うたいなら歌いたい曲である。あ、女も桃井かおりとか歌った。
🎵俺のあん娘は煙草が好きでいつもプカプカプカ〜
で始まる歌は、とても魅力的なイイ女を描く。どんな男でもやられちゃう女性である。
タバコをやめなと言うと、幸せってヤツがわかるまでやめないわ、と答える。
下手くそなスイングをやめなと言うと、あんたが私の歌をわかってくれるまでやめないよ、と答える。
男をやめなと言うと、あんたが私の男らと飲み明かせるようになったらね、と答える。
トランプ占いやめなと言うと、やめないよ、二人の死ぬ時がわかるまで、と答える。
心配して問いかける男への答えが、全部イカしてるのである。これはやられる。
この歌にはモデルがいる。安田南という。日本の女性ジャスシンガーの草分けである。西岡が黒テントでベースを弾いてた時、タバコを咥えたカッコイイ女性と知り合った。それが南である。南はその前に俳優座の養成所にいて、古谷一行、太地喜和子が同期であった。よく失踪する人で、もう亡くなったらしいが、いつかはわからない。片岡義夫とラジオもやっていた。
女性ジャスシンガーといえば、阿川泰子しか知らない私は、その経歴に恐れ入るばかりである。ジャス。演劇。ラジオ。飽きたら、誰に言うことなくバイバイである。で、みんな安田南が大好きなのである。
高橋三千綱に「こんな女と暮らしてみたい」という本があるが、たぶんみんな安田南に惚れていた。磁力が違う。でも、誰も御せなかったんだろう。安田南は自由なのである。
で、安田の唄を聞いてみた。
うむ。確かに惚れるな。
で、私の人生で安田南みたいな女性がいなかったか考えてみる。
「辞めちゃえば。あんたぐらい食わしてやるよ」
「なによ、それぐらい。見えなくなったら、手を引いてやろうか」
「また別にやりたいことができたのよ」
「私が死んじゃったら、葬式にいっぱい男がくるから仲良くしてね」
誰かは言わないが、いた。