高瀬隼子「お小遣いの成果」

心に残る話でした。

小学校の頃、友達とお小遣いの話になる。
 あゆみは普通に毎月もらっている。
 実玖ちゃん家はお金持ちで、その都度都度にお母さんに欲しいものを買ってもらえる。あゆみは、羨ましいけど自由はないな、と思う。
 園葉ちゃんのお小遣いは成果主義で、月の成果(テストの点とか表彰とか)をおばあちゃんに報告して、それに見合う金額も申告する。あゆみは変わってると思うが、人ん家のことなんで、それ以上考えないようにする。
 その日はあゆみの一押しのラノベの最新刊が出る日だった。だけど友達から今月のファション紙を買ってもらえないか頼まれる。いつも見せてもらってるんで断れない。それでラノベは買えなくなった。
 気分転換に外に出て、園葉のおばあちゃんと会う。あゆみは何気なく、集会で園葉が褒められた話をする。迷子を助けたのだ。おばあちゃんは喜んで、あゆみにお小遣いをあげよう、と言う。

 子供は自分で稼げない。当然、お小遣いは親から支給される。子供はだんだん大きくなって自分の世界を作り始める。お小遣いは、子供にとって、その世界で生きていく必須のものだろう。
 欲しいものを自分で考えてお金をやりくりする。それは大人への第一歩だ。
 なんでも買ってもらえて、友達にも大盤振る舞いする実玖は、恵まれてるが自由がない。そうだ。金じゃない、自由だ。私もそう思う。
 じゃあ大人の成果主義みたいにお小遣いが支給される園葉は? お金は大事だが、お金のために、善行を積むわけではない。多分、だから園葉は迷子の件をおばあちゃんに言わなかった。
 そして図らずもあゆみは、園葉の隠していた善行を、成果としておばあちゃんに報告し、お金をもらうチャンスを得る。それは、園葉の成果を横取りすることだ。

お金。自由。成果。代償。幸福。物欲。人間関係。

お金を通して、いろんなことが提起される一編である。勿論、作者のご高説なんてない。考えるのは読者だからだ。


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