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【昭和歌謡名曲集19】きょうだい心中 山崎ハコ

元は民謡だったようである。最初に知ったのは、中上健次の「枯木灘」。路地の盆踊りで老婆が歌うというシチュエーションだった。歌詞が圧倒的で、小説の内容ともリンクして、なんとしても実際の歌が聞きたいと思った。
ある日、深夜放送を聞いていると、山崎ハコの歌声が流れた。驚いた。「きょうだい心中」、あの歌だ。歌詞の一部は「枯木灘」とは違うが、重なる部分が殆どで、震えた。
民謡をフォーク系の人が歌うのは、赤い鳥の「五木の子守唄」が有名で、これはこれで大変よろしいが、山崎ハコの「きょうだい心中」は、また別格に素晴らしい。
兄が妹に惚れて、一夜を頼む。妹は、驚きそれはできぬと抗うが、兄は頼むと重ねて譲らない。妹は実は私には男がいる、男を殺してくれたならと答える。兄は男を殺すがそれは男に扮した妹であった。それを知って兄もまた死ぬ。
山崎ハコの情念の塊のような歌声に、これが言霊かと、歌の世界に全部もっていかれる。まごうことなき、名曲中の名曲である。

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