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【短編連作】ことシリーズ

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短編連作集です。連載小説ではありません。
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2024年11月の記事一覧

ことシリーズ連作の続き、六年後設定で今書いてます。過去エピソード含めて、勿論新しいテーマ織り込んで。完結編になりますが、時間かかりそう。半年後、一年後スパンでお待ちを。待ってない? ああそれでええです。完結はしますんで。いつものように、それだけ読んでも大丈夫なように書きます。

【短編小説】花乃の中学が荒れていたこと 連作14

【短編小説】花乃の中学が荒れていたこと 連作14

 後輩たちが門出の花道の準備をしている間、式を終えた卒業生は教室で待機する。普通はここで担任から餞別(はなむけ)の言葉があるのだろうけど、洋子先生は教卓の椅子に座りこんだまま、虚ろな目をしているだけだった。噂では四月に転勤するらしい。この学校で六年勤めたのだから定期異動は当たり前だが、これで中学校を辞めるという噂もあった。どちらにしても学校を去ることは確からしい。確か二十八歳。転職なら早い方がいい

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【短編小説】和馬の母親のこと・その2 連作13

【短編小説】和馬の母親のこと・その2 連作13

「江田さん。ちゃんとお酒抜けちょる?」
「抜けちょる抜けちょる。ええか」
はあーと津矢子に吐きかける。
「いや、やめて。ニンニク食うた? 違う意味で臭いわ」
顔を背けて、手で払う。
「な。抜けちょろう」
と、おどけ顔。
津矢子はキーと今日の集配票を渡す。
「枕崎かい」
ちらと見て呟いてから、事務所の机で受け取りのサインをする。下を向いて書きながら、言う。
「辞めるんだって?」
「あ、うん」
「勝の

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【短編小説】団子平田屋が経営不振に陥ること 連作12

【短編小説】団子平田屋が経営不振に陥ること 連作12

 団子屋も、もちろん飲食業である。そして団子屋は、人気商売である。
 団子屋が団子屋として成り立つ為には、まず団子が旨くなくてはならない。次にお手頃価格でなくてはならない。最後に店の対応が気持ち良いものでなくてはならない。
以上三点は、団子屋に限らず、飲食業の基本である。
 が、団子平田屋の売り上げ不振の原因はそこには、ない。
 平田屋の団子は旨いのだ。団子屋の団子が旨いのは当たり前で、団子屋で団

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【短編小説】和馬の母親のこと・その1 連作11

【短編小説】和馬の母親のこと・その1 連作11

 津矢子が就職したのは、運送会社の事務だった。長距離トラックのシフトを組むのが、その主な仕事だった。集荷場から小売りの配送所へ。部品工場から組み立て工場へ。地方から大量消費地へ。配送センターから配送センターへ。荷を積んで送り届け、そこでまた荷を積んで送り届ける。長い距離の方が儲かるのでドライバーはその方を喜んだ。殆ど休みなし、車中泊でトラックを走らせるのが当たり前の時代だった。荷下ろし荷積みは、本

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【短編小説】金曜日のこと 連作10

【短編小説】金曜日のこと 連作10

 異常な可愛がり方だと思った。
 金曜日の放課後、学校で親を呼んでの、アタシと和馬の和解の会が開かれた。教室で揉めて、アタシが怪我をしたのだ。
 その席で、アタシの両親やアタシ自身に、和馬のお母さんは度が過ぎるくらいに頭を下げて、涙を流して、でも和馬に頭は下げさせなかった。一度も和馬に反省を促す言葉もかけなかったし、まるでこっちが怪我の話題を出す前に、謝って全て終わりにしようという作戦のようにさえ

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