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イベントとして認知はされても、課題は多く(前向き)|2024スプラウト壱岐商業高校⑤

2024年もこの日になりました。

壱岐商業高校と共同で行っている課題研究『起業体験プログラム』のクライマックスとも言える「壱岐エテマルシェ」を9月7日に開催しました。このイベントは2022年からスタート。高校が所在する旧勝本町地域を盛り上げよう,高校生に一歩踏み出す勇気としての「アントレプレナーシップ」を学び,地域との関わりを持つことで将来の選択肢の1つに島で暮らす,島でビジネスを創り出すことを長期的な目標として始められました。

以前もこのnoteに書き記しましたが,平成の大合併で壱岐島内にあった4つの町が1つに統合してできた壱岐市。その北端にあり,旧3町とは異なって本土(九州)との航路を持たない勝本地域は,古い歴史を持ちながらも急激な人口減少(10年で25%程度)が進んでいます。そうした背景もあり,ここでマルシェを仕掛けるという取り組みを3年,4回目の出店の機会となりました。

お久しぶりの高速船。ヴィーナスⅡで壱岐へ。

この前日まで天草・苓北にいたこともあり,肉体的には結構ボロボロ。苓北に一緒に行った学生のうち4名は空港から直接港へ行き,昨晩のうちに壱岐へ移動していました。こうして前乗りの9名,同行の2名,合計11名の学生と私で壱岐エテマルシェの実施サポートに向かうことになりました。

フェリー到着後,諸々手続きをして勝本の会場に到着したのは10時頃。すでに準備が進められていました。今回の会場は,昨年までの公民館前駐車場(勝本朝市入口)から移転して,勝本漁業協同組合(勝本漁協)さんのご厚意で同漁協が使用する荷捌き所となりました。

朝のミーティング。

到着してすぐに朝のミーティングが始まり,お客様を出迎える準備が整えられます。高校生も担当の先生方,課題研究の授業を受けている10名の生徒の他にも助っ人が参戦。約30名のスタッフが出揃いました。

そして,11時。いや,30分前から会場内を歩き回られているご婦人たちの圧力を感じて10:50に『壱岐エテマルシェ』が始まりました(笑)。

これまでの壱岐商業高校とのプロジェクトの経緯は以下のマガジンを御覧ください。

壱岐エテマルシェの商品とイベント

さて,今回の『壱岐エテマルシェ』の出店にご協力を頂いたみなさんをご紹介します。

出店にご協力くださったみなさん

・パンプラスさん
第1回のマルシェから毎回ご参加頂いています。このマルシェの実施には以前から高校との連携を図りたいと熱望されていたオーナーのお力添えがなければ成り立ちませんでした。今回もパンプラス本店の石窯で焼いたできたてパンを販売。私の娘氏もここの塩パンが大好きで,毎回おみやげに買って帰ります。

パンプラスさんは最初からの参戦。今回も商品完売に近い状況。

・チリトリ自由食堂さん
2022年冬に開催した『壱岐イヴェールマルシェ』から3回連続での出店。壱岐では知らない人がいないと言っても過言ではない芦辺地域でゲストハウスと宿泊者・住民が交流する飲食店を経営。ランチのカレーが名物で多くの観光客が来店。今回は暑いこともあり,多数のドリンクも販売。多くの方がカレーと合わせてドリンクを堪能されていました。人気のお店の営業を休んで出店くださり,それを聞きつけた観光客らしきお客様も多々来店されていたのが印象的。

チリトリ自由食堂さんはガチ目のラインナップ。

・松本さん(ひでさん)のじゃがいも[長崎黄金]詰め放題
今回初参戦,島内で減農薬野菜栽培に取り組まれている松本さんが丹精込めて育てたじゃがいもの詰め放題。長崎県が開発,普及に取り組んでいる品種「長崎黄金」は小さくてコロコロしたじゃがいも。私も300円で詰め放題をしました。用意されていたコンテナはあっという間に無くなり,多くの人が楽しまれていたことが印象的でした。

じゃがいも詰め放題も登場。

・高校生の企画
今回の出店にはこの授業に取り組んでいる生徒からのアイデアもありました。子どもたちに楽しんでもらうために,ストラックアウトと射的を用意。300円で楽しむことができ,いずれも景品をもらえる仕掛け。

加えて,今回は洋服店が出店できなかったため,代わりに高校生や先生方が集めた商品でフリーマーケットを開催。

どの企画も多くのお客様にご来店頂き,楽しんで頂けたようです。

わかりにくいですが,右がストラックアウト,左が射的の会場。

・モルック
今,徐々にブームになりつつある競技「モルック」。このゲームは「フィンランドのカレリア地方の伝統的なキイッカ(kyykkä)というゲームを元にLahden Paikka社(当時 Tuoterengas社)によって1996に開発されたスポーツ」(引用元はこちら)だそうで,老若男女が楽しめるそうです。ルールも「モルックを投げて倒れたスキットルの内容によって得点を加算していき、先に50点ピッタリになるまで得点した方が勝ち!」(引用元同上)とのことで,私が前を通りかかったときにはご婦人がストライクを出されていた。

今回はモルックが登場。ちょうどご婦人がストライクを出したところ。

・さつまいもラボ(専門ゼミ3年生によるプロジェクト)

また,今回はゼミのプロジェクトとして各地で出店に挑戦している「さつまいもラボ」が登場。芋を濾して餡にして餃子の皮で巻いて挙げた「いも餃子」。これが5つ入りで400円というまあまあな価格ながら,美味しいと評判を呼ぶ。結果,たびたび欠品を発生させ,仕込みに走らざるを得ない状況に。飲食で仕込みをやりながらでは売上をなかなか伸ばせないのが難点。

このプロジェクトは天草・苓北の農家さんにご協力を頂き,苗を植え,加工,調理,販売のプロセスに挑戦しているが,加工,調理がボトルネックになってしまい,高コストになるので,以後今後どのようにして商売を展開していくかに関心がある。9月22日の人吉,10月27日の苓北でも出店予定で,各地をめぐりながら顧客の声を聞き続ける。

ゼミのプロジェクト「さつまいもラボ」の企画商品

イベント企画にご協力頂いたみなさん

続いてイベント企画の紹介。

・壱岐商業高校荒海太鼓部
体育会にいくつかの強豪部がある同校の中で,文化系で最も活発で全国の舞台にも立っているのが「荒海太鼓部」。かつては長崎県高等学校総合文化祭. 「第18回郷土芸能発表大会」における金賞を受賞した経験もあるのだそう。当日は11時の演奏開始前の練習の音をご婦人たちが聞きつけ,オープンが早まった。今年は周辺を壁や天井に囲われた場所であったので,いつも以上に迫力を感じる演奏でした。

壱岐商業高校が誇る荒波太鼓部の演奏

・壱岐商業高校吹奏楽部(写真なし)
この日はとても暑かったこともあり,午後の少しの時間暑さしのぎで休憩をしていたら演奏を聞きそびれてしまった。そのため写真はありません。少人数のユニットですが,軽快なジャズを毎年演奏して下さいます。

・Aloha Lokahi Hula Studioのみなさん(フラダンス)
そして,最後は地元のフラダンススクールAloha Lokahi Hula Studioのみなさんによる演舞。子どもからご婦人まで定番曲,日本の曲に合わせてゆったりと踊られていました。当日はさまざまな行事もあったようでスクールの全員でというわけにはいかなかったそうですが,お昼の暑い時間,風も通りにくい状況の中で最後まで踊ってくださいました。

イベント最後の出し物とはフラダンススクールの皆様。

わたしたちも商品販売にチャレンジ!

そして,急遽火曜日に参戦が決まったのが,本プログラム1期生で壱岐商業高校OBのTくんと私によるドリンクショップ。天気予報で晴れ,かつ暑くなることが予想されていたため,ドリンクのニーズがあるのではないかと販売。加えて,Tくんが現在大分の大学に通っていることから「おみやげ買ってきました。おひとついかがですか?」をコンセプトに,①JAで製造されているつぶらな◯◯シリーズのドリンクを各種揃える,②みどり牛乳が地元菓子メーカーとタイアップして販売しているサブレ,③つぶらなシリーズではないお茶,コーラ,コーヒーを販売することに。さらに,大分・日田に暮らすゼミOBに依頼して④進撃の巨人グッズを販売することにした。

『スプラウト』の店舗は大分のドリンク,つぶらなシリーズを150本仕入れて勝負。

店舗はざっとこんな感じ。150本仕入れたつぶらなシリーズは地元JAでも購入できる代物だが,「この味は見たことない」「いつも飲んでるわ」という声とともに多くの方にご購入頂いた。また,3本セット,5本セットを積極的に販売。若干安くしたこと,まとめ買いでおみやげ需要を狙ったのもあって,125本販売することができた。その他の商品も多くのお客さまが受けれてくださったのもあって,まあまあな売上を達成することができた。

 壱岐の観光地,辰の島の船のりばも近いため,観光客らしき方々も来てくださいました。

また,出店のために大分から大学生が壱岐に戻ってきたが,今回の売上(利益)で彼に交通費を出すこともできたし,次回出店をしようかと思案している。さつまいぼラボと同じように,10月,11月の出店機会でお店出すのもありだな(笑)。実際に検討してみよう。

ふりかえり

そして,フラダンスの見学者が帰られてお客様がいなくなられたところで閉店。こうして『壱岐エテマルシェ2024』は無事に終了することができた。しかし,私だけは17:10の高速船で福岡に戻らねばならなかったので,16時過ぎには会場をあとにして郷ノ浦港に戻ることにした。

おじさんの帽子の向きがおかしい(笑)

なので,残念ながら彼らだけで行われたふりかえりには参加することができなかった。

個人的な感想としては,同日に島内のもう1つの高校である壱岐高校の文化祭と重なってしまい,壱岐高校の生徒を呼び込むことができなかったことを非常に残念に思っている。ただ,行事実施日は部活動や定期試験,表彰など多様な用事があることで,一部のチームで掲げられていたターゲット=高校生はなかなか厳しかった。最も多かったのは,いわゆる「おばあちゃん」と呼ばれるご婦人たちで,家が近いからかイベント後に出てきて,商品を物色して帰宅されたのではないか。時間帯によっては本当にごった返していた。

その結果,高校生にコミットしてもらっていた予算を今回も達成することができなかった。スプラウトでは「アントレプレナーシップ」を学ぶことも大事で,起業家の行動様式としてEffectuationと Causationという考え方には着目しているとは先日も書いた。とかく最新理論としてはEffectuationに注目しがちだが,実際には場面によって双方のチャンネルをうまく切り替えて使っているということがわかっている(当たり前や)。すなわち,組織(集団)になれば組織目的としての経営理念が重要になるとともに,それをブレイクダウンするために計画=予算を策定して形式化する必要がある。

こうした自分たちが設定した計画をいかにして実現するかを教えるのは重要なことだが,それを高校生が主体的に考え,予算を割り付け,根拠を持って予算を提示するというのは難しい。それでもこの講義ではその重要性を訴え,ひとよし球磨起業体験プログラムでは参加している高校生が夜な夜なミーティングを重ね,9月22日の当日に向けて準備を進めている。そして,高校生が頑張っているのを見て,ようやく大学生=ゼミ生にもその意味が理解できるようになってきたように感じられる。

イベントとしては3年間で4回のマルシェ開催ということで,周辺住民のみなさんにもご期待頂けるイベントに成長した手応えは得られた。一方で,目標売上の未達はふりかえりで追求するべきポイントがたくさん詰まっており,「なぜ売れなかったのか」「売れるためにはどうすれば良かったのか」など,ふりかって議論するべきポイントは多々ある。もうこれを次年度に引き継ぐしか授業としてはないので,あとは彼・彼女たちがどこまでやるかだろうし,どこまでやりたいかによって来年度以降の目標設定が変わるかもしれない。

いずれにせよ,こうしたイベントが認知され,地域の人に愛されるイベントになっていくことは微笑ましい。一方で,売上を上げ,付加価値を増やし,多くの人を幸せにするというミッションを達成するにはまだ遠い。細かく見ればポジティブな面もある一方で,ネガティブな結果になった結果は突き詰めて結果を最大化することができないだろうか。

明日(9/10)は再び壱岐に向かう。それも,ふりかえりのため。こうした議論を高校生が自分ごととして考えられるようになった成功なのだが,あともう少し時間があればイベントに主体的に取り組む意義を理解できたのではないかと考えている。

Causationのように一発で答えを素早く出すのではなく,Effectuationのように不確実な未来に対して一歩踏み出す勇気を持ちつつ,そのモヤモヤを大切にできる人材を育ててみたいと持っている。それがこの世の中をより良くする手段であり,彼・彼女たちの人生が豊かになれば言うことはない。だからこそ,明日のふりかえりは真剣にやりたいな。

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