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決済サービスやクレカ事業が順調なメルペイ。その強みとは?

メルカリといえば、フリマアプリを中心としたマーケットプレイス事業で有名ですが、近年は決済サービスや与信サービス、クレジットカードの提供といったFinTech領域にも参入し、順調に売上を伸ばし続けているようです。競合企業も多い中で、どのようにして事業拡大しているのでしょうか?今回はメルカリの100%子会社としてFinTech領域に取り組むメルペイの決算資料から、同社の動向を決算が読めるようになるノートさんに解説していただきました。


今回は、2024年8月13日に発表されたメルカリの2024年6月期 第4四半期(2024年4月〜6月、以降省略)決算について、解説・深掘りしていきます。

メルカリは、2018年の上場以来収益を伸ばしており、一時はYoY(Year over Year:前年比)+50%以上と大きく成長していました。

今回のメルカリの決算では、連結売上収益の伸び率が初めて一桁台となりましたが、その一方でFinTech領域の売上収益はYoY+32%、中でもCredit領域はYoY+60%と大きく成長しています。

また、2022年11月8日からサービス提供開始したメルカードの発行枚数は、今回の決算時点で340万枚にまで伸びています。2年弱でこの数はユーザー母体を抱えているメルカリの強さを感じます。

今回の記事では、前半に直近のメルカリの連結業績とFinTech領域の業績を解説し、記事の後半では、FinTech領域の中でもCreditサービスの債権残高や貸倒率等のような指標を見ながら、サービスのポテンシャルを考察していきます。

■売上成長率はついに一桁台、前四半期比ではマイナスに


(出典: 「株式会社メルカリ FY2024.06 決算説明資料」 P13より)

上図は、メルカリの四半期ごとの売上収益およびコア営業利益( IFRS(国際会計基準)営業利益からその他の収益/その他の費用等を控除した利益)の推移です。

2024年6月期 第4四半期の連結売上収益は、465億円(YoY+5%)でした。QoQ(Quarter-over-Quarter:前四半期比)でマイナスに転じているのも注目です。

メルカリは2018年の上場以来、売上が伸び続け、一時は前年比50%以上の成長を見せましたが、2024年6月期の第2四半期から前年比一桁%まで成長が鈍化しています。

また、同期間の連結コア営業利益は、54億円(YoY-9%)と、営業利益についても伸び悩みとなっています。

このようにメルカリ全体としては売上収益の成長が鈍化していますが、一方で大きく伸びている事業もあります。

次は、現在のメルカリで大きく成長しているFinTech領域を見ていきます。

■メルカリの売上を牽引するFinTech領域

(出典: 「株式会社メルカリ FY2024.06 決算説明資料」 P20より)

上図は、FinTech領域の業績推移です。本記事では、Marketplace・Fintech間の決済業務委託に関わる手数料を控除した業績(水色の棒グラフの業績)を見ていきます。

2024年6月期 第4四半期の売上収益は、85億円(YoY+39%)と高い成長率を誇っています。また同期間の営業利益は、▲24億円(前年同期は▲37億円)となっています。

(出典: 「株式会社メルカリ FY2024.06 決算説明資料」P21より)

中でも、Credit領域の成長は著しく、YoY+60%の高い成長率を見せており、メルカリのFinTech事業の中でも最大の売上を占めるまでになっています。

詳細は後述しますが、メルカリは、FinTech領域において、後払い決済サービスの「メルペイスマート払い」と少額融資サービスの「メルペイスマートマネー」に加えて、2022年11月からクレジットカード事業にも参入しています。

参考:株式会社メルペイ、クレジットカード事業参入に関するお知らせ

■1,800億円超えのCreditサービス

(出典: 「株式会社メルカリ FY2024.06 決算説明資料」 P21より)

上図は、メルペイの提供しているサービスの債権残高です。

メルペイと言えば、スマホQRコード決済サービスを思い浮かべる方も多いと思いますが、メルペイは次のようなCredit(与信)サービスも提供しています。

■メルペイの提供している与信サービス
・後払い決済サービス「メルペイスマート払い
・少額融資サービス「メルペイスマートマネー
・クレジットカードサービス「メルカード

これらのサービスの債権残高は、2024年6月期 第2四半期に1,872億円(YoY+58.9%)と大きく成長していることから、多くの個人ユーザーが利用していることが分かります。

メルペイのCredit事業は、メルペイが外部から調達したお金を個人ユーザーに貸し、その金額に金利を加えた債権残高を回収することで、収益をあげるビジネスモデルです。

消費者金融のように分かりやすくお金を借りるメルペイスマートマネーの他に、後払いや定額払い(リボ払い)によって、支払いタイミングを後ろ倒しする=その期間お金を貸し付けているという形で、ユーザーとしては「お金を借りる」という認識のないまま利用している人もいるかもしれません。

(出典: 「株式会社メルカリ FY2024.06 決算説明資料」 P65より)

FinTech領域では、2022年11月にサービス提供を開始した「メルカード」も急成長しています。冒頭で記載したように、サービス開始から2年弱で発行枚数は340万に達しています。

メルカードは、メルペイが発行している年会費無料のクレジットカードです。メルカリ・メルペイの利用状況等も含めて審査され、本人確認済みであれば最短1分で申請可能という利便性に加え、メルカリ内での購入はポイント還元率が高くなる等、メルカリの利用者にとってメリットが大きいクレジットカードです。

■債権回収率99.2%はすごいのか?

メルカリのCreditサービスのような与信サービスで重要となる指標が「債権回収率(貸倒率)」です。

先述した「債権残高・回収率(「株式会社メルカリ FY2024.06 決算説明資料」 P21より)」の図を見ると、メルカリでは回収率が99.2%という数字になっています。ほとんどの債権回収に成功していることになります。

では、メルカリ以外の企業の回収率は、どのようになっているのでしょうか?ここでは、回収率の対になる指標となる「貸倒率」を見ていきましょう。

上図は、与信サービスを運営している企業の貸倒率です。

各社で与信の審査基準が異なるため、貸倒率が異なっていますが、消費者金融のアイフルは他企業よりも高い基準であることが分かります。

メルペイは、おおよそ他の与信サービスと同等程度の貸倒率となっています。メルペイが最短1分で与信審査を完了しているというスピード感も合わせて考えると、ここまで貸倒率を低い水準まで改善できているのは素晴らしいと言えるでしょう。

ちなみに、半年前に遡ってみると、以下のようなデータになっています。

多くの企業の貸倒率が先ほどの図と比べて高くなっているのに対して、メルペイは安定的に低い水準を維持できていることが分かります。

貸倒率を低い水準に維持できている要因として、フリマアプリの「メルカリ」や決済サービスの「メルペイ」の利用実績といった他にはない貴重なデータを元に、AIによる与信審査を積極的に活用している点が挙げられます。

エポスカード(クレジットカード)との比較でいうと、クレジットカードが店舗やオンラインショップ単位でのデータにとどまるのに対して、メルペイではメルカリ上の商品一つ一つの売買履歴まで把握できるため、より詳細にユーザー属性を掴むことが可能です。こういった特性をうまく活用しているとも言えるでしょう。

加えて、企業への勤続年数が少ない等の理由で、今までは与信サービスの提供が難しかったユーザー層でも金融サービスを提供できる可能性を広げている点は、金融サービスをより多くの人に届けるという意義も持ち合わせています。

ちなみに、エポスカードや楽天カードの貸倒率は、エポスカードは2021年3月期には2.1%、2022年3月期には1.8%、楽天カードも同期間は、1.5%前後と高い水準を推移していました。

これらのクレジットカードの貸倒率が高い水準である時期であった背景としては、新型コロナウイルスの流行のため、一時的に失業率も上昇したことから、貸倒率も上がっていたと考えられます。

このように社会的情勢に応じても貸倒率は大きく変動するため、引き続きウォッチしていきたいところです。

■債権残高も引けを取らない水準に

上図は各社の与信サービスの債権残高をまとめたものです。

楽天カードは、楽天経済圏が非常に大きく、2023年12月時点で3,000万枚のクレジットカード発行枚数を誇っているため、債権残高が3.3兆円と頭一つ抜けています。

参考:楽天カード、カード発行枚数が3,000万枚を突破

その一方で、メルペイの債権残高は、メジャーなクレジットカードとも同じ桁の規模感にまで短期間で成長してきている点に注目です。

現在は、1,872億円まで成長しており、ライフカードの1,733億円を超えてきています。成長率がYoY+60%であることやメルカードの普及を考えると、今後数年間でより巨大なCreditサービスへと成長していくポテンシャルがあると言えるでしょう。

■まとめ

今回は、直近のメルカリの連結業績とFinTech領域の業績を解説し、FinTech領域の中でもCreditサービスの債権残高や貸倒率等のような指標を見ながら、サービスのポテンシャルを考察をしました。

要点をまとめると以下になります。

  • メルカリの2024年6月期 第4四半期の連結売上収益は、465億円(YoY+5%)。上場以来売上収益を伸ばしていたが、売上収益の年間成長率は一桁、前四半期比でマイナスに転じている。

  • 一方で、同期間のメルカリのFinTech領域の売上収益は、85億円(YoY+39%)と大きく伸びている。中でもCredit領域はYoY+60%と高い成長率となっている。

  • メルペイの債権残高は1,800億円超えとメジャーなクレジットカードとも同じ桁の規模感にまで短期間で成長してきており、かつ債権回収率99.2%と優秀な数字となっている。

今後の更なる成長が期待されるメルカリのFinTech領域のビジネスに、引き続き注目していきたいと思います。

(文:「決算が読めるようになるノート」)

与信事業やクレジットカード事業を展開するメルペイの成長要因について詳しく解説していただきました。メルカリが保有しているファーストパーティデータなどを有効活用することで、与信審査の精度を高めていることはもちろん、最短1分で申請できるという手軽さや、これまで与信サービスの利用が難しかったユーザー層にもサービス提供の可能性を広げている点など、ユーザーのニーズに応える工夫によって事業を拡大していることがうかがえます。
また、メルカリの連結売上収益の伸びが鈍化する中、FinTech領域の売上は全体に占める割合は少ないものの、利用者数や収益力を順調に伸ばしており、既存プレイヤーにも引けを取らない規模感まで成長できている点は、ポートフォリオ戦略としても参考になるのではないでしょうか。すでに楽天やAmazonなど巨大な経済圏を持つプレイヤーも参入している領域で、どのように差別化や競争力を生み出していくのか、今後の動向に注目です。また、ほかにも強力な経済圏やファーストパーティデータを持つ企業が新たにキャッシュレッシュ決済やクレジットカード事業を展開する可能性もあるため、そのあたりの動きもウォッチしていきたいと思います。