セルフレジやタブレット付きのショッピングカートは日本に浸透するの?未来の店舗の可能性
「レジレス店舗」や「無人店舗」の可能性を探った前回。今回は買い物体験を高めるための一つの方法として、ショッピングカートを活用したソリューションの動向も追いながら、未来の店舗はどうなるのか?その可能性や期待を、投資メンバー(鳥井・小澤・吉村)の意見も聞きながら考えてみたいと思います。
Amazon Go以上のポテンシャル?Amazon Dash Cartの凄さ
前回、米AmazonのAmazon Goを取り上げましたが、今回も米Amazonの事例からスタートします。2020年、同社はレジ決済不要のショッピングカート「Amazon Dash Cart」をローンチしました。
Amazonのアカウントを専用アプリに登録し、カートのスキャナーにアプリの二次元バーコードをかざすと、アカウントが認識されます。その後、マイバッグをカートにセットし、バーコードスキャナーでスキャンしながら買い物。そのまま専用レーンを抜けてマイバッグごと持ち帰れば、あとで電子レシートがアカウントに届く仕組みです。
Amazon GoとAmazon Dash Cartのサービス構造は似ていますが、前者がカメラやセンサーなど様々なインフラ整備が必要なのに対し、後者はカート程度の導入でサービス開始できるので、今後Amazon Goのようにサービス化した際、Amazon Dash Cartのほうが世の中に浸透するポテンシャルがあると考える有識者もいます。
米大手スーパーチェーンのKrogerも、AI搭載のショッピングカートを開発するスタートアップ企業Caperと協業してスマートカートの実証実験を実施。ユーザーがカートに入れた商品を自動的にスキャンし、ユーザーはカゴに商品を入れるだけの自然な動作で買い物を楽しむことができます。
このように、海外ではセルフレジ機能付きのショッピングカートが色々と登場しているのです。
次世代型のショッピングカートも、ユーザー体験の向上がポイント
東芝テックでは、既にカート型セルフレジ「ピピットカート」を発売し、ご採用いただいている小売店様も徐々に増えています。ただ、セルフレジが付いたショッピングカートは無人店舗よりも導入ハードルが低そうなんですが、国内で浸透しているかというと、意外と無人店舗ほどは進んでいない印象です。
また、スーパーマーケットやアパレルショップでセルフレジ機能がないタブレット付きショッピングカートを使ったことがあるというメンバーに感想を聞いてみると、「まだまだ販促情報はタブレットを通して見るより、店内POPの方が見やすい印象です。特にカートを押しながら手元の画面を見るのは、歩きスマホと同様に周囲のお客様にぶつからないように立ち止まるなどの注意が必要です」とのこと。
一方で、来店客にカゴを持たせるだけで客単価が上がるという説もありますので、店舗にとってはいかにカートを持ってもらうかが重要になるかもしれません。例えば、いろんなデザインのカートや子どもが乗れるカートを用意するのも一手でしょう。その他のショッピングカートについては、以前ご紹介した「店舗のICT活用研究所」郡司昇代表のセミナーレポートもぜひご覧ください。
これまでにない目新しいショッピングカートを置くことで、結果的に客単価アップにつながるという一定の効果はありそうです。ただし、ユーザーに長く使い続けてもらうには、前編でも述べたユーザー体験の向上につなげられるかどうか、つまり消費者が何を求めているかを理解することが重要なポイントになるでしょう。
メンバーからは、「セルフレジやタブレットが付いたショッピングカートを導入することでユーザー体験をどれだけ高められるのか?客数や客単価にどう影響するのか?その投資対効果は適切なのか?など、課題はまだ多くあります。でも、個人的には近所のスーパーをハシゴするぐらい買い物が好きなので、スーパーのショッピング体験が楽しくなるようなサービスがあるとすごく嬉しいなって思います」という意見もありました。
テクノロジーを社会実装するための発想や、小売への提案力が必要
さて、前編からここまで、無人店舗と次世代型のショッピングカートの可能性について色々と考えてみました。最後にメンバーのみんなに、未来の店舗のあり方や可能性を考える上で注目しているポイントを聞いてみたところ、以下のコメントがありました。
「今後もし無人店舗が普及することになれば、限られた棚の面積でいかに効率的に売れる商品を並べられるかが求められるようになると思います。その点、サプライチェーンの技術や需要予測などが周辺技術としてはニーズが出てくるかもしれませんね」
「イノベーションや社会変革はテクノロジーそのものではなく、テクノロジーをどう使うかのほうがより重要ではないでしょうか。そう考えると、テクノロジーを社会実装するための発想や、小売への分かりやすい提案力を備えたスタートアップがマーケットを勝ち取る可能性があると思います」
「ここまで述べてきたように、一番大切なのはユーザーファーストのマインドを持つことです。お店の形やビジネスモデルを考えることから始めるのではなく、小売店の立場で、何なら小売店の方々と一緒に、自分たちのターゲットユーザーはどんな買い物体験があったら喜ぶかを考えるところからスタートすると、面白いサービスが生まれそうですね」
これらの意見をまとめると、「技術そのものだけでなく、その技術の使い方に注目してほしい」というメッセージが見えてくるのではないでしょうか。無人店舗や次世代型のショッピングカート(セルフレジ付き/タブレット付き)は、既存のスーパーやコンビニに導入するパターンが一つの方向性として確立されつつありますが、もう一つの方向性として、ユーザー体験やコンセプトそのものを刷新する新しい店舗のカタチにも、大きなポテンシャルが秘められているのかもしれません。今後、製品開発モデルから顧客開発モデルへの転換がますます求められるようになるでしょう。
小売の常識を塗り替えるような革新的なサービスの登場に期待しつつ、私たち東芝テックも新しい店舗サービスのアイデアを、小売やスタートアップの皆さんと一緒に考えていきたいと思います。
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