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2021年 読書感想「人形たちの白昼夢」

 まちライブラリーでは比較的新しい本も寄贈されていたりして(有難い)新着コーナーで見つけたのが、千早茜著『人形たちの白昼夢』です。
それぞれ世界観も登場人物も全く異なる12のストーリーで構成されているのですが、各話に潜む共通のキーワードとして「人形」と「青いリボン」が登場します。

 山に棲む異形の生き物と通じ合い、周囲の村人に畏れ崇められる存在となった少女と、彼らの関係性に理解を示さない強欲な外部からの闖入者。崩れ果てた村に残った少女に訪れたのは意外な結末でした。(アイズ)

幻想的で毒のあるストーリーが多いですが、胸が温かくなるストーリーや詩のようなちょっと不思議なショートショートも挟まれていて、飽きずに読み進められました。あと、個人的な感想としては、コミカライズして画で見ても面白そうな、キャッチーな世界観が魅力的だなぁと思いました。



 ところでこの本には、人間の手によって暗殺用に創られた「自動機械人形(オート・ドール)」なるものが登場します。なんだかオタク心がくすぐられる気がするのは、私だけでしょうか。自律し、人を殺めるといった作業をこなす「自動機械人形」は技術が発展した現代社会でリアルに存在しませんが(いや、いても困るし、もしかしたら技術的には可能であるけれど倫理的にNGになだけなのかもしれない)、著者はどんなイメージを持って「自動機械人形」を物語に描いたのか、少し気になります。
 で、この本を読みながら『暗殺用の自動機械人形(オート・ドール)』と聞いてふと思い浮かんだ漫画があったのですが、タイトルも作者も思い出すことができずにいました。掲載されていた雑誌もとっくの昔に捨ててしまっていました。しかも読み切りの漫画だったというのもあって出版社サイトの連載漫画一覧にも見当たらず、「うわー、気になる…ッ、でもこんな状況でどう探せばいいんだ!?」と思っていたのです。が、そんな矢先、絵柄が似た作者の漫画を友人に貰ったのをふと思い出したのです。

(檜山大輔先生の「魔女に与える鉄槌」という漫画)

「これだ…檜山大輔さんだ…!」と早速検索してWikipediaを見ると…

「あ、あった…!!『グナイゼナウ』だ…!!」
Wikipediaには『グナイゼナウ』がデビュー作だった、程度の記述しかなく、関連の記事もリンクも無かったので、再びGoogleでキーワード検索。すると画像検索結果から以下のリンクにたどり着くことができました。

Wikipediaさまさま、Googleさまさまです。昔の作品なんかは特に画像も残ってなかったりして検索しても出ていないこともあるので、喜びもひとしおでした。
 話を戻すと、『グナイゼナウ』は捨てられていた少女を老夫婦が引き取って一緒に生活するんですが、その少女の正体こそ、戦闘用に創られた「自動機械人形」なんです。そしてその少女が夫婦の亡き娘に似ていたり…となかなかエモく、面白い読み切りだったのです。おそらく何年か前の月刊少年ガンガンだったと記憶しているのですが、今は手元に無いことが悔やまれます。(他の読み切りも面白かった)どこかの単行本とかに収録されていないんでしょうか…。

 脱線した話の方が長くなってしまいましたが、ちょっとブラックで不思議な物語を読みたい方は、『人形たちの白昼夢』はサクサク読めておすすめです。

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