見出し画像

三角形の合同と正弦定理・余弦定理

中学2年で習う、三角形の合同条件を覚えていますか?
三角形の合同条件は、

  • 3組の辺の長さがそれぞれ等しい

  • 2組の辺とその間の角がそれぞれ等しい

  • 1組の辺とその両端の角がそれぞれ等しい

となります。
一字一句、間違えず覚えろ!と言われたかと思います。
では、なぜこれらの条件を満たすと、2つの三角形が合同になるかわかりますか?
また高校1年で習う、正弦定理・余弦定理を覚えていますか?
これらは重要な定理なので、必ず覚えましょう
正弦定理は、
$${\dfrac{a}{\sin A}=\dfrac{b}{\sin B}=\dfrac{c}{\sin C}=2R}$$
となり余弦定理は、辺に関する式が、
$${ b^{2}=c^{2}+a^{2}-2 ca \cos B}$$
となり角度に関する式が、
$${ \cos A=\dfrac{b^{2}+c^{2}-a^{2}}{2 b c}}$$
となります。
正弦定理・余弦定理については、別の記事に書いています。
以下では、正弦定理・余弦定理は覚えているものとして書いています。
もし覚えていない等ありましたら、別に書いた正弦定理の記事余弦定理の記事を読んでみてください。
なぜ、三角形の合同条件の話をした後に、正弦定理・余弦定理の話を始めたのか。
それは三角形の合同条件と、正弦定理・余弦定理には関連性があるからです
また三角形の合同条件を満たすとき、2つの三角形が合同になることを、正弦定理・余弦定理を使って証明できます。
証明ができることからも、関連性があることがわかると思います。
高校生にとっては、中学2年で習った三角形の合同条件は、忘れてしまっているかもしれません。
しかし、高校1年で習う図形問題の分野などで知っていた方が良いですし、大学受験で使う可能性もあります。
これらから、三角形の合同条件を覚え直すためにも読んでいただければと思います。
正弦定理・余弦定理と関連付けると覚えやすくなると思います。

まずは確認のため、三角形が合同になるとは、どのようなことをあらわすかについて書きます。
また、三角形の合同条件は中2で学ぶ内容なので、正弦定理・余弦定理を使わないで、中学生向けに納得してもらえると思う理由を解説します。
次に三角形の合同条件を、正弦定理・余弦定理を使って証明した後、これらに関連性があることの解説をします。

三角形の合同条件

まずは、三角形が合同とはどういうことかの復習をしましょう。
図を、

とします。
この図で$${ \triangle{ABC} \equiv  \triangle{DEF} }$$としています。
これら2つの三角形が合同であるということは、対応する全ての辺の長さ・角度が等しいということです。
つまり、
$${AB=DE,BC=EF,CA=FD}$$
$${\angle A= \angle D, \angle B=\angle E,\angle C=\angle F}$$
が成り立つことです。
このことを、正弦定理・余弦定理を使わないで、解説をします。
結論としては、三角形の合同条件を満たしている三角形は、1種類しか存在しないからです。
なぜ1種類だけとなるのか解説するために、小学生のときに解いた問題を復習しましょう。
小学生のときに定規、コンパス、分度器を使って三角形を書く問題があったと思います。
その問題は主に、

  • 全ての辺の長さを指定された三角形

  • 2本の辺の長さと、その間の角度が指定された三角形

  • 1本の辺の長さと、その両端の角度が指定された三角形

となっていたと思います。
これらの特徴は、1種類の三角形しか書けないことです。
テストでこのような問題が出て、誰かの答えと比べたとき、お互い正解していれば同じ三角形を書いていたと思います。
お互い正解で、違う三角形とはなりません
これら指定された辺の長さと角度は、三角形の合同条件と同じになっています
完全な証明ではないかもしれませんが、納得はしてもらえるかと思います。

正弦定理・余弦定理を使った証明

正弦定理は、
$${\dfrac{a}{\sin A}=\dfrac{b}{\sin B}=\dfrac{c}{\sin C}=2R}$$
となり余弦定理は、辺に関する式が、
$${ b^{2}=c^{2}+a^{2}-2 ca \cos B}$$
となり角度に関する式が、
$${ \cos A=\dfrac{b^{2}+c^{2}-a^{2}}{2 b c}}$$
となります。
これらを使って、三角形の合同条件を証明していきます。
証明の流れとして、三角形の合同条件により対応する辺や角度から、まだわかっていない部分が等しくなることを、正弦定理・余弦定理により示していきます。
また、すでに示した三角形の合同条件も使います。

最初に、
3組の辺の長さがそれぞれ等しい
という条件の証明をします。
図を、

とします。
3組の辺の長さがそれぞれ等しいので、
$${ BC=EF=a,CA=FD=b}$$
$${AB=DE=c}$$
としています。
このとき、$${ \triangle ABC}$$に余弦定理の角度に関する式、
$${ \cos A=\dfrac{b^{2}+c^{2}-a^{2}}{2 b c}}$$
を使って$${ \cos A}$$の値を求めると、
$${ \cos A=\dfrac{b^{2}+c^{2}-a^{2}}{2 b c}}$$
となります。
$${ \triangle DEF}$$に余弦定理の角度に関する式を使って$${ \cos D}$$の値を求めると、
$${ \cos D=\dfrac{b^{2}+c^{2}-a^{2}}{2 b c}}$$
となります。
これらの式の右辺は同じになっているので、
$${ \cos A=\cos D}$$
となります。
また$${ \angle A,\angle D}$$は三角形の1つの角なので、
$${0 \degree <\angle A<180 \degree,0 \degree <\angle D<180 \degree}$$
となります。
これらから$${\angle A=\angle D}$$となります。
同様にして、$${\angle B=\angle E, \angle C=\angle F}$$となります。
これで、2つの三角形の対応する全ての辺の長さ・角度が等しいことがわかりました
よって、3組の辺の長さがそれぞれ等しい$${ (BC=EF,CA=FD,AB=DE)}$$とき、$${\angle A=\angle D,\angle B=\angle E,\angle C=\angle F}$$となるので、$${ \triangle{ABC} \equiv  \triangle{DEF} }$$となります。

次に、
2組の辺とその間の角がそれぞれ等しい
という条件の証明をします。
図を、

とします。
2組の辺とその間の角がそれぞれ等しいので、
$${ BC=EF=a,AB=DE=c}$$
$${\angle B= \angle E=\beta}$$
としています。
このとき$${ \triangle ABC}$$に、余弦定理の辺に関する式、
$${ b^{2}=c^{2}+a^{2}-2 ca \cos B}$$
を使って$${ CA^2}$$の値を求めると、
$${ CA^{2}=c^{2}+a^{2}-2 ca \cos \beta}$$
となります。
$${ \triangle DEF}$$に、余弦定理の辺に関する式を使って$${ FD^2}$$の値を求めると、
$${ FD^{2}=c^{2}+a^{2}-2 ca \cos \beta}$$
となります。
これらの式の右辺は同じになっているので、
$${ CA^2=FD^2}$$
となります。
また$${ CA,FD}$$は三角形の辺の長さなので、
$${CA>0, FD>0}$$
となります。
これらから$${ CA= FD}$$となります。
よって、2組の辺とその間の角がそれぞれ等しい$${ (BC=EF,AB=DE,\angle B= \angle E)}$$とき、$${ AB=DE,BC=EF,CA= FD}$$となり、3組の辺の長さがそれぞれ等しいので、$${ \triangle{ABC} \equiv  \triangle{DEF} }$$となります。

最後に、
1組の辺とその両端の角がそれぞれ等しい
という条件の証明をします。
図を、

とします。
1組の辺とその両端の角がそれぞれ等しいので、
$${ BC=EF=a}$$
$${\angle B= \angle E=\beta,\angle C=\angle F=\gamma}$$
としています。
また三角形の内角の和は$${ 180 \degree}$$なので、
$${ \angle A+\angle B+\angle C=180 \degree}$$
$${\angle D+\angle E+\angle F=180 \degree }$$
より、
$${ \angle A=180 \degree -(\angle B+\angle C)}$$
$${\angle D=180 \degree -(\angle E+\angle F)}$$
となり、
$${ \angle A=180 \degree -(\beta+\gamma)}$$
$${\angle D=180 \degree -(\beta+\gamma)}$$
となります。
これらの式の右辺は同じになっているので、
$${ \angle A=\angle D}$$
となります。
つまり、1組の辺とその両端の角がそれぞれ等しいという三角形の合同条件を満たすとき、3組全ての角度が等しくなるので、図では、
$${ \angle A=\angle D=\alpha}$$
としています。
正弦定理の式、
$${\dfrac{a}{\sin A}=\dfrac{b}{\sin B}=\dfrac{c}{\sin C}=2R}$$
より、
$${\dfrac{c}{\sin C}=\dfrac{a}{\sin A}}$$
となります。
この式の両辺に$${ \sin C}$$をかけると、
$${c=\dfrac{\sin C}{\sin A} a}$$
となります。
$${ \triangle ABC}$$に、この正弦定理を変形した式を使って$${ AB}$$の値を求めると、
$${AB=\dfrac{\sin \gamma}{\sin \alpha} a}$$
となります。
$${ \triangle DEF}$$に、正弦定理を変形した式を使って$${ DE}$$の値を求めると、
$${DE=\dfrac{\sin \gamma}{\sin \alpha} a}$$
となります。
これらの式の右辺は同じになっているので、
$${ AB= DE}$$
となります。
よって、1組の辺とその両端の角がそれぞれ等しい$${( BC=EF,\angle B= \angle E,\angle C=\angle F)}$$とき、
$${AB= DE ,BC=EF,\angle A=\angle D}$$となり、2組の辺とその間の角がそれぞれ等しいので、$${ \triangle{ABC} \equiv  \triangle{DEF} }$$となります。

三角形の合同条件と正弦定理・余弦定理の関連性

三角形の合同条件の証明に、正弦定理・余弦定理を使いました。
次に、三角形の合同条件が成り立っている2つの三角形の、片方のみを考えてみましょう
このときを考えると、関連性があることがわかります。

まずは、
3組の辺の長さがそれぞれ等しい
という三角形の合同条件が成り立つときを考えてみましょう。
このとき、2つの三角形が合同になっているので、対応する全ての辺の長さ・角度が等しくなります
つまり、3組の辺の長さがそれぞれ等しいとき、3組の角度は等しくなると言えます
ここで、合同な2つの三角形のうちの片方のみを見ると、3辺の長さが決まると、1つの角度が決まると考えることができます。
また余弦定理の角度に関する式、
$${ \cos A=\dfrac{b^{2}+c^{2}-a^{2}}{2 b c}}$$
を考えてみましょう。
この式は、1つの角度を3辺の長さから求められることを表しています。
これらから三角形の合同条件、
3組の辺の長さがそれぞれ等しい
と余弦定理の角度に関する式、
$${ \cos A=\dfrac{b^{2}+c^{2}-a^{2}}{2 b c}}$$
は、同じことを示していると考えることができます。
よって、これらには関連性があるとわかります。

次に、
2組の辺とその間の角がそれぞれ等しい
という三角形の合同条件が成り立つときを考えてみましょう。
同様に考えていきます。
このとき、合同な2つの三角形のうちの片方のみを見ると、2辺の長さとその間の角度が決まると、残りの辺の長さが決まると考えることができます。
また余弦定理の辺に関する式、
$${ b^{2}=c^{2}+a^{2}-2 ca \cos B}$$
を考えてみましょう。
この式は、1つの辺の長さを残りの2辺の長さとその間の角度から求められることを表しています。
これらから三角形の合同条件、
2組の辺とその間の角がそれぞれ等しい
と余弦定理の辺に関する式、
$${ b^{2}=c^{2}+a^{2}-2 ca \cos B}$$
同じことを示していると考えることができます。
よって、これらには関連性があるとわかります。

最後に、
1組の辺とその両端の角がそれぞれ等しい
という三角形の合同条件が成り立つときを考えてみましょう。
このとき、合同な2つの三角形のうちの片方のみを見ると、まず2つの角度が決まっているので、残りの角度も決まります
つまり、全ての角度が決まっています
また、1つの辺の長さと2つの角度が決まると、1つの辺の長さが決まると考えることができます。
これらから、1辺の長さとその両端の角度が決まると、他の1辺の長さが決まると考えることができます。
また正弦定理の式、
$${\dfrac{a}{\sin A}=\dfrac{b}{\sin B}=\dfrac{c}{\sin C}=2R}$$
から得られる、
$${c=\dfrac{\sin C}{\sin A} a}$$
を考えてみましょう。
この式は、1つの辺の長さを他の1辺の長さと2つの角度から求められることを表しています。
2つの角度が決まると、全ての角度が決まることに注意すると、1つの辺の長さを他の1辺の長さとその両端の角度から求められることを表しています。
これらから三角形の合同条件、
1組の辺とその両端の角がそれぞれ等しい
と正弦定理の式から得られる、
$${c=\dfrac{\sin C}{\sin A} a}$$
同じことを示していると考えることができます。
よって、これらには関連性があるとわかります。

以上から、正弦定理・余弦定理と三角形の合同条件には関連性があると言えます。

まとめ

今回は、三角形の合同条件と正弦定理・余弦定理の関連性について書きました。
重要なのは、証明を覚えることではなく、また関連性があることを覚えるでもありません
三角形の合同条件を、正弦定理・余弦定理と関連していることを利用して

  • 三角形の合同条件

  • 正弦定理

  • 余弦定理

を、まとめて覚えることです。

特に数学の苦手な高校生は、三角形の合同条件を忘れているかもしれません
この機会に、まとめて覚えましょう
数学だけではないと思いますが、公式や定理は1つ1つを覚えることも重要ですが、関連するものはまとめて覚えたほうが良いでしょう
しかし、数学が苦手な人だと、関連付けることが難しいと思いますので、少しでも覚える助けになるように、関連しているものを思い浮かぶ限り書いていこうと思います。

これを見て参考になったかたは、使ってみてください。

いいなと思ったら応援しよう!