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#小説
The Time Lag 0:05
地図に載っていない新境地は、ちっぽけな存在を迷わせた。
自己防衛のため他人から向けられた善意を無下にしたという結果は
益々、今後あの娘とどのようにして向き合えばいいのかという
問題の答えを黒く塗りつぶした。
元来空欄だった場所に色が入っただけで大差ないという考えを壁に投げては、
それは考えとして全く本質的ではないという論理と、
仮にも他人に誂えてもらったものに対する態度として
あまり
The Time Lag 0:04
そんな閉塞感に苛まれるこの身を知ってか知らずか、
あの娘は其れまでと変わらない様子だった。
正直煩わしかった。
「周りの声を気にしている自分が間違いなのか」
「君にその気はないのか」
という事ばかり思考回路を巡り続けた。
当然心に邪念が過ればパフォーマンスも落ち、
自分の手から益々「勝ち」がこぼれ落ちるようになった。
慣れとは恐ろしいもので、勝てなくなることに対する悔しさは
最初
The Time Lag 0:03
自分の気持に折り合いをつけなければいけない。
頭では分かっていた。
それでも実際に行動に移せるかというのは、別次元の問題だと
気付いたのはそれから少し経っての事だった。
まず、目に見えて生じる変化を表出しないように
取り繕う術を考えた。
しかし、これは失敗に終わった。
相手から今までどおり投げかけられる視線と言葉、
それがあんな夢を見てしまった今、挑発という起爆剤ではなく
顔と頭
The Time Lag 0:02
あの娘は、刺激になっていた。
きっかけは学期末テストだった。
3ヶ月の学びの集大成を飾るこの場所で、今まで数年間負けなしだった事を
誇りに思っていた。
向かうところ敵なし、そんな誇りは鼻を伸ばすには十分だった。
クラスという狭いムラで先頭を走り続ける事は、屁とも思わなかった。
努力が成果になるから、簡単な理屈だ。
もっと言えば努力している間も楽しい。
出来ないことが出来るようになり
The Time Lag 0:01
事の訪れはたった一晩に見た夢だった。
明晰夢を見る技術なんか微塵もない。
それどころか明晰夢という言葉すら字引に載っていない。
今見ているのは夢なのか。
寝付いた筈なのになぜこんなに意識がはっきりとしているのか。
そんな気持ちとは裏腹に、夢の最中に引っかかった思いは、
結局意識の覚醒とともに少しずつ日常に沈む。
溶けて消えていくと思っていた。
なのに覚えている。ショックなほど鮮明に